「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」 機関誌
第37号:特集のねらい
◆「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」へ向けて
「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」。農林水産省をはじめ関係各省庁が検討して策定し、この2月に総理へ報告した工程表のタイトルです。国を挙げて、本腰をいれて「国産バイオ燃料の生産拡大」に取り組むことになりました。
すでに、日本有数の畑作地帯・十勝では、規格外小麦やビート糖蜜を原料に燃料用バイオエタノールを製造、走行試験を繰り返して近い将来の実用化を目指しています。また静岡県では県のトラック協会が、5年前から菜の花(菜種)からバイオディーゼル燃料(BDF)を製造して走行試験を繰り返し、菜種BDF100%でも「問題なし」の結論を得ています。
どちらも技術的には「OK」なのですが、コストが問題。実際、業界からは「現時点においては量的な確保が困難でかつコストが高いため、当面は海外からの輸入を軸に考えていかざるを得ない状況。90%以上を輸入に依存する可能性が高い」との声があります。こうした現実をどう克服するかが課題です。
BDF先進国といわれるドイツは、10年前には「BDFを使うのは理想主義のエコロジスト」と言われていたといいます。それが激変したのは、免税措置、改造せずにBDFを使える車の存在、BDFを販売するガソリンスタンドの密度増加。そのうえでの大掛かりな一般消費者や農業者への普及キャンペーン。国を挙げてのこうした後押しがあったのです。また、バイオエタノールの生産を急激に伸ばしているアメリカでは、原料のトウモロコシへの補助金、製造企業への法人税等の減免、ガソリン税に相当する部分への減免措置と多くの州におけるバイオ燃料の混合義務化など総合的な政策がとられています。
わが国でも、国産バイオ燃料の生産と利用の拡大のためには、国を挙げての積極的な政策誘導が必要です。同時に、遊休農地の活用、菜種などの資源作物の復活、規格外農産物、稲わらや籾殻、間伐財の活用など、生産者・消費者・産業界・地方自治体などが「全国津々浦々に存在するバイオマスを発見・活用」の気運を盛り上げることも重要な課題です。
バイオマスをはじめとした自然エネルギーの拡大を、わが国でどう進めるか、先行的取組みでは何が問題になっているのか、ホンネの意見も集めた特集号をお届けします。
〈主な内容〉
○国産バイオ燃料の実現で 農林水産業の新たな領域を開拓
――全国津々浦々に存在するバイオマスの資源調査から
農林水産省大臣官房環境政策課総括補佐 川合豊彦 /4
○農村からクリーンなエネルギーを
――自然・資源が豊かな農村はエネルギー資源の宝庫
NPO法人クリーンエネルギー・フォーラム 専務理事 前田典秀 /14
○自然エネルギー先進国の取組みに学ぶ
<ドイツのBDF>九州バイオフォーラム 吉田愛梨 /22
<北欧の自然エネルギー>環境エネルギー政策研究所所長 飯田哲也 /28
○バイオマスエネルギーの地域自給戦略
――森林資源や休耕田の有効利用、アジアも視野に
東京大学総長 小宮山 宏 東京大学大学院農学生命科学研究科教授 横山 伸 /34
実践者からの提案・要望
・軽油に代わるバイオ燃料に、菜の花の出番を
静岡県トラック協会環境対策委員長 西村 登 /40
・規格外小麦から燃料用エタノールを製造 2009年度からの実施を目指す
財団法人十勝圏振興機構・専務理事 藤村敏則 /46
エネルギー利用・供給関係者からの発言 /52
・石油連盟広報グループ/(社)日本自動車工業会・環境統括部/電気事業連合会
農家からの要望 有機農業実践者 /62
○酪農・林業からのバイオマスと風力等自然力を活用 エネルギー自給率80%を誇る
――岩手県葛巻町の「天・地・人のめぐみ」を活かす取組み /66
○糞尿対策+エコ発電で農家も地球も喜ぶ町づくり しかし採算面で四苦八苦
――京都府南丹市八木バイオエコロジーセンターの取組み /74
○あらゆるバイオマスを発酵させて発電 発酵残渣は液肥・堆肥化して地域の農家へ提供
――大分県日田市のバイオマス活用による循環型社会構築への取組み /82
○期待の「廃食用油からつくるバイオ燃料」の現状と課題
――福島県いわき市の「食用油リサイクル事業」の取組み /90
●原稿を募集しています
「過疎地に人を増やすには」、「都市近郊農業をどうするか」など、ご意見などお寄せ下さい。
ご寄稿は、「ご意見記入フォーマット」への入力か、1000字を超える場合にはEメールか郵送で下記へお送り下さい。
●定期購読者募集中です
農業・農村の役割を多角的に考えようという「行動」をご支援いただくため、定期購読者を募集しています。希望号よりの誌代(1年分〈年4回〉2400円)を前納いただいた方には送料サービスで、発行のつど直送いたします。
†お申し込みは下記へ。
(事務局) 農文協提携事業センター 「行動」機関誌係
〒107-8668 東京都港区赤坂7−6−1
TEL 03-3585-1144 FAX 03-3585-6466
Email kurita@mail.ruralnet.or.jp
トップに戻る