「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」機関誌
第42号:特集のねらい
◆子どもも地域も変わる、元気になる
この春「子ども農山漁村交流プロジェクト」がスタートしました。総務省・文部科学省・農林水産省が連携し、全国の小学校が毎年、一学年単位で、農山漁村に子どもを送り出し、一週間程度の宿泊体験活動を行なうものです。
このプロジェクトで重視されているのが、少人数に分かれての農家等での民泊。次代を担う子どもたちが、農山漁村での農作業・宿泊体験等を通じて、農山漁村の“ありのまま”を知り、働き・手伝う意欲に目覚め、思いやりの心を育むなど、力強く成長してもらうことを目的としています。実際、農家等での民泊を体験した子どもたちは、おじいさんやおばあさんなど農家とのコミュニケーションから、“食や命の尊さ”などを感じるようになったり、仲間への思いやりの心が生まれている様子が、この号で紹介した先行事例の取組みからうかがえます。
こうした子どもたちの変化に、受入れ側の農山漁村の人たち、とりわけ高齢者が励まされ、大いに元気づけられています。農山漁村はどこも高齢化が進んでいますが、「彼らが持つ技術は世界最高水準を誇り、世界各国から学ばれるに値する」(川勝氏)。お年寄りはみんなインストラクターとして張り切っています。
こうした地域のなかから、今後、子ども農山漁村交流プロジェクトを全国に広めるための“先導役”として、農林水産省から選定された「受入モデル地域」が北海道から沖縄まで五〇地域(<先導型受入モデル地域>が一四地域と<体制整備型受入地域>が三六地域)。このプロジェクトの成否は農家等での民泊をどう実現するかでしょう。
今回、「先導型受入モデル地域」に選ばれた地域で見逃がせないのは、都道府県と市町村の支援です。農家等民泊を実現するには、消防法、旅館業法、食品衛生法等をクリアする必要がありますが、都道府県等の条例を改正したり、受入れ要綱・ガイドラインを制定することで「普通の暮らしのできる農家なら、改装しなくとも民泊が認められる」ようにしているのです。
この特集では、四泊五日以上を原則とする長期宿泊体験の受け皿として、農家等での民泊をどのようにして実現するかを重視しました。今後、子どもたちを受け入れるための話し合いの素材として、本号をお届けします。
〈主な内容〉
○子ども農山漁村交流プロジェクトの意義
――「一校一村」「一学一山」「一社一森」運動を
静岡文化芸術大学学長 川勝平太(子ども農山漁村交流プロジェクト推進協議会会長) /4
○「ふるさと子ども夢学校」は、子どもと農山漁村に変化を求めている
――(財)福島県観光物産交流協会 教育旅行アドヴァイザー 小椋唯一 /12
○子どもたちや教師との接し方のコツ
――飯田市等南信州地域における、農家泊の実際から
長野県・地域再生診療所所長 井上弘司(元飯田市農政課課長) /19
○地域の実情に応じた独自の取組を
――地方単独事業を積極的に支援
総務省大臣官房総務課 併任 自治行政局地域自立応援課 中井孝一 /26
○生きる力を育む長期宿泊体験学習の場「自然学校」
――推進上の課題と充実に向けた取組 兵庫県教育委員会義務教育課 /32
<先導型受入モデル地域>
○農協が中心になることで農家民宿に広がり
――群馬県・片品村農業協同組合農業観光部の取組み /38
○小さな離島の未来への挑戦!
――「島のそのまんま」の体験が子どもを変え、離島の住民を元気にする
長崎県小値賀町「NPO法人おぢかアイランドツーリズム協会」広報担当 浦西れいな /46
○町の応援で手軽な農業体験民宿を増やす
――町を挙げてのグリーン・ツーリズム事業の取組み
北海道長沼町町長 板谷利雄 /54
○コーディネーター組織を整備 広い地域の農家等民宿や体験活動と学校を結ぶ
――お年寄りが大活躍、新潟県上越市&十日町市「越後田舎体験推進協議会」の取組み /60
<体制整備型受入モデル地域>
○課題の農(民)泊の充実に向け、農家と相談&準備中
――従来の観光、グリーンツーリズムの経験を活かす秋田県「仙北市農山村体験推進協議会」の取組み /72
○小さな湯治宿と農家が連携 ともに元気が出る受入れを目指す
――山口県長門市「俵山グリーンツーリズム推進協議会」の取組み /80
○本物の体験プログラムから 地域ぐるみの民泊事業へ発展させる
――和歌山県白浜町「大好き日置川の会」の取組み /87
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