「21世紀の日本と農業・農村を考えるための行動」機関誌
第45号:特集のねらい
◆子どもたちの成長に先生も保護者も納得
「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、この四月から二年目に入りました。総務省・文部科学省・農林水産省が連携し、五年後に全国の小学校が毎年、一学年単位で、農山漁村に子どもを送り出し、一週間程度の宿泊体験活動を行なおうという国家的一大プロジェクト。初年度の昨年は、「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」として選定された一七八校が、「受入モデル地域」等を訪れ、農家等宿泊体験活動を実施。期待にたがわず、宿泊体験を経験した子どもたちは友達や親を思いやり、学力の土台となる“生きる力”の面で大きく成長したことが、本号で紹介した事例でうかがわれます。
実施したどこの小学校の先生も、送り出すときには「大丈夫?」と不安だった保護者も、「帰ってきたときの子どもたちの顔が“生き生き”とし、ひとまわり大きくなった」姿をみて、長期宿泊体験の効果を実感。
子どもたちの心を大きく揺さぶり、教育効果も高いと先生方が異口同音に言う農家での民泊を、どう継続するかが課題。例えば小学校側が望む、稲などの収穫期は、受入れ農家が忙しいが、それを配慮して今年度は“稲刈りが始まる前”に実施することにした小学校も。農家は「自家用畑の新鮮な野菜を食べさせてあげられる」と大歓迎です。また、農家泊での子どもたちの健康・安全問題も避けては通れない問題。事前に小学校側から情報提供、お互いに協力して子どもも農家も楽しい充実した農家民泊ができている様子が、昨年、実施した小学校の先生方からも受入れ農家からも聞こえてきます。
最大の課題は、やはりお金の問題。小学校では、どうすれば少額のお金で効果のある農家泊活動が維持・継続できるか、学校ぐるみで検討しています。その際、同一県内、同一市内の宿泊体験活動も選択肢の一つかもしれません。合併したまちとむらでの宿泊交流なら移動距離・時間が少ない。なにより、お金がかからず保護者の負担が少なくてすむ。本号で紹介した同一市内の事例では、子どもたちは生まれ育った地域に誇りを持てるようになっています。
今後、農家等宿泊体験活動をどう定着させるか、この「ふるさと子ども夢物語」をどう魅力のあるものにしていくか。そのための情報交流素材として本特集号をお届けします。
〈主な内容〉
" <1>:宿泊体験活動で得た成果、継続への課題
◎「子ども農山漁村交流プロジェクト」を活用、市として長期宿泊体験活動に本腰を入れる
――横浜市教育委員会と"モデル校"4小学校の南信州宿泊体験活動の取組み
・「宿泊体験モデル校」を設置 長期宿泊体験活動を推進する
横浜市教育委員会小中学校教育課 /4
・4泊5日の宿泊体験で子どもたちは目を見張る成長
――横浜市"モデル校"4小学校の取組み /11
○農家泊を核に、米粉活用やネギ栽培で自分のまちの魅力を発見
――新潟県胎内市、まちなかの小学校が市内の中山間地域等で宿泊体験学習 /20
○自ら考え、準備し、やりきったことで成長した子どもたち
――広島県福山市立川口東小学校の隣町・神石高原町での宿泊体験活動 /28
○少人数に分けた長期・農家等民泊体験活動は教育効果が高い
――千葉市の「農山村留学推進事業」8年の経験から /37
◎確かに手間はかかるが、小学生は素直でいい
――長野県南信州の受入れ当事者の本音座談会 /44
○地域全体のバックアップで確保される安全と安心
――福島県「南会津農村生活体験推進協議会」の取組みから
まちむら交流きこう ふるさと子ども交流アドバイザー 小椋唯一 /60
○公共宿泊施設がなく、農家民泊の経験者もいない地区で小学生の受け入れを実現
――区長自らが民宿を開業し、「子どもプロジェクト」を推進した奈良県十津川村神納川地区の取組み /68
○知りたい情報を入手できる、小学校と受入地域を結ぶコーディネートシステム
――小学校側の課題解決と児童への教育的効果のPRも
(財)都市農山漁村交流活性化機構 ふるさと子ども夢学校推進部 花垣紀之 /76
文部科学省初等中等教育局児童生徒課/総務省自治行政局地域自立応援課/農林水産省農村振興局農村政策課/環境省自然環境局総務課自然ふれあい推進室
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