農文協について

農家に学び 地域とともに80年

1940(昭和15年)、戦時下に発足した農文協が敗戦の混乱のなかで事実上崩壊したとき、残された職員が自力をもって再建し、ここから農文協の自主自立の農村文化運動がスタートしました。それ以来、「農家に学び、地域とともに」生きることを根幹にすえて活動を進め、おかげさまで2020年3月、創立80周年を迎えました。

2010年代は、TPPと東日本大震災・原発事故で幕を開けた激動の10年でした。この間、規制改革会議や安倍官邸農政のもと、家族農業軽視と農協攻撃が強まり、一方では、昭和一桁世代のリタイアが進み、また気候変動による農業、農村の被害も頻発しました。

こうした激動と「困りごと」が増えるなかで、農家は直売所や集落営農、「多面的機能支払」の活動組織などを基点に自給力・自治力を発揮し、地域おこし協力隊など田園回帰の流れも生かして農家とむらを守ってきました。

これまでの10年を「激動期」とすれば、スタートした2020年代を「転換期」にしたいと思います。貧困、食料問題、気候変動などの人類史的課題は、農家・農業・農村を土台とする地域コミュニティの創造があってこそ打開できること、それは単に危機対応ではなく共同性を本質とする人間的な生き方を回復・創造する過程であることを、世界が、地域が、民衆が確信していく10年に。

世界の潮流も大きく変わってきました。国連は「小農・家族農業」とこれを支える地域にこそ、貧困や環境問題を解決する力があるとして「家族農業の10年」(2019〜2028年)を定め、「誰も置き去りにしない」を理念とする「持続可能な開発目標」(SDGs 2016〜2030年)もスタートしています。

日本でも地域コミュニティをめぐる動きが活発になっています。「○○町協議会」などの地域運営組織も増え続け、これとJAが連携して農家も地域もJAも元気になる取り組みが合併農協の支店で始まっています。農家・農村と関わることで自らの暮らしに安全・安心と生きがいを求めるJA准組合員や生協組合員、都市民もたくさんいます。田園回帰の若者たちも増えています。国土交通省によると、特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ「関係人口」は、三大都市圏で2割強の1,080万人に及んでいます。

移住とともに関係人口を増やして「新しい農型社会」を。そんな夢と希望を胸に、元気に歩み続けたいと思います。

2020年3月
農山漁村文化協会(農文協) 役職員一同