『農村文化運動』 159号 2001年1月

地域自給をめざす東アジアの環境保全型稲作

―第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会の記録―


[目次]

はじめに

第I部 東アジアの環境保全型稲作の基本課題

1 東アジア農業の先人に学ぶ

農事組合法人おきたま産直センター 平田 啓一

2 環境保全型農業の東アジアにおける意味

農林中金総合研究所 蔦谷 栄一

 

第II部 東アジアの環境保全型稲作の現状と今後の方向

1 東アジア農民が生み出した環境保全型稲作技術の到達点と今後の課題

NPO法人・民間稲作研究所 稲葉 光圀

2 韓国の親環境農業がめざすもの
  ―農業近代化の矛盾を乗り越えるために―

韓国放送大学 権 光植

3 中国の有機農業を取り巻く経済・制度的環境およびその将来展望
   ―稲作を中心にして―

中国農業部農村経済中心 劉 光明

 

第III部 環境保全型稲作技術でイネが変わり、地域が変わる

[日本]

1 多収をめざす稲作から環境を生かす稲作への転換

山形県川西町自然農法栽培グループ 高橋 健次
資料「山形県置賜地区の有機無農薬栽培の取組みと技術的課題」

2 環境保全型農業を農家のまなざしで捉え直す

NPO法人・農と自然の研究所 宇根 豊

3 イネの力をとき放つ稲作とは

滋賀県立短期大学・滋賀県立大学 橋川 潮

[韓国]

1 アイガモ稲作で活気づく地域農業

遠三農協 金 俊基

[中国]

1 稲作技術の転換で農家経営改善と地域資源の循環的利用が見えてきた

延邊農業學研究院 朴 成仁

2 疎植と自給発酵肥料で冷害と高温にも強いイネつくり

図們市農業技術管理センター 金 吉洙

■ 「第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会」プログラム

 


はじめに

 本号は、日韓中の農業関係者が集う「第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会」における報告を特集した。

 日韓中の東アジア三ヵ国は、モンスーン地帯における水田農業・移植稲作技術・米が主食という共通の農業基盤と食文化を歴史的に形成し、稲作によって稠密な人口を支えてきた。この三ヵ国で農業近代化によって伝統的な稲作技術が軽んじられ、化学肥料・農薬が多投された結果、水田の地力が消耗し生態系が破壊されるという事態が生じてきた。

 しかし一方では、環境保全型の稲作を模索し、確立する技術運動も進展してきた。この技術運動の広がりと深まりの先に、東アジアの農業者が連帯する新たな共通の基盤が展望できる。

 第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会は、この共通基盤と連帯を確認する共同宣言を採択して閉会した。共同宣言を以下に掲載する。

文化部

〈共同宣言〉

 日本・韓国・中国三ヵ国の環境保全型稲作生産農家、学者・研究者、関係者等は、二〇〇〇年十一月二四日〜二六日の三日間にわたり、日本山形県東置賜郡川西町のサンマリーナ玉庭において、第2回環境保全型稲作技術交流会を開催した。 

 交流会初日は、現地見学会とその実践報告会を実施し、二日目二五日には各国における環境保全型農業への取り組みの現状と農政を含むこれをめぐる情勢、環境保全型稲作技術確立のための研究・実践の現状と課題等について報告を行ない、第三日目の二六日にはこれら報告にもとづいての総括討論を行なった。

 これらを踏まえて本交流会への参加者は以下の事項について確認すると同時に、共同声明としてこれを採択するものである。

一、除草剤、化学農薬、化学物質に依存する慣行栽培による稲作は、環境汚染等多くの深刻な問題を抱えていることを認識し、各国の条件に即した環境保全型稲作の普及、実践に努力する。

二、日韓中の三国間には多様ながらも共通した環境保全型稲作の生産技術があることを確認し、今後も持続的に研究・開発を行ない、技術の向上・確立に努力する。

三、WTO体制が進行するなか、地域自給を尊重するとともに各国農業の実情についての理解を深め、さらにはそれぞれの食文化、農村文化を積極的に評価していくことが必要である。

四、農産物の輸入増大、米生産過剰等から農業生産は苦しい経営を余儀なくされており、直接支払いをはじめとする政策支援がますます重要かつ不可欠な情勢にある。

五、アジアに適合した環境保全型稲作の生産技術の確立と基準作りに共に努力する。このため今後とも日韓中をはじめとするアジア各国による持続的な交流を継続していくこととする。

六、次期交流会は中国において開催する。

二〇〇〇年十一月二六日
第2回環境保全型稲作技術交流会
参加者一同


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