『農村文化運動』 181号 2006年7月

農協共販を抜本的に見直す
――「農家手取り最優先」「JAの販売事業の確立」をめざして


[目次]

はじめに

I JAの生産販売戦略の総路線
  JA-IT研究会代表委員・東京大学名誉教授 今村奈良臣

一、JAの生命線――営農指導と販売事業

二、営農指導と販売戦略の理論―― p-Six

三、地域農業再生への10項目提案――そのさらなる展開を

四、営農改革と販売革新の先進事例に学ぶ

カコミ 「JA版 農業電子図書館」最新情報

II 系統農協の米穀事業の現状と活性化への課題
 ──共計、委託販売方式下での全農の販売力低下と単協の米営農・経済事業の新たな動き
  JA-IT研究会副代表・高崎経済大学教授 吉田俊幸

一、農協の米に関する営農・経済事業の「失われた10年」

二、マーケティングを起点とした単協米事業の新たな取組みと活性化の方向

III 野菜・果樹などの農協共販の課題と再生の道
  JA-IT研究会副代表委員・(株)アイエー・フーズ取締役統括常務 黒澤賢治

一、直販的マーケティングで共販の商品をつくる

二、産地特性を明確にしたプレゼンテーションで商談を有利に

三、販売戦略にあわせて生産部会の変革を

四、流通の合理化と徹底したコスト管理で産地マージンを増やす

五、JA間連携で全国的な共販を目指す

六、JA本来の機能は、営農経済事業にある


はじめに

 農家手取りの増大、JAの経済事業改革の核心は、JAの販売事業の確立にある。

 JA―IT研究会(事務局・農文協)では、毎年数回開かれる「公開研究会」のほかに、有志14JAからなる専門研究会をもち、JAの戦略的課題として販売事業の確立について研究を重ねてきた。農産物価格の低迷、農家手取りの減少、JAの経営悪化という困難のなかで、本来的業務である営農販売中心のJAに自己変革するために、現在の市場流通依存から脱却し、JA自らがマーケティングを行なって販売事業を自立的なものにすることをめざして、このテーマを深めてきたのだった。

 そこで本号では、JA―IT研究会副代表の吉田俊幸氏、黒澤賢治氏に、JAの米や野菜・果樹等の販売力強化の方向について書き下ろしていただき、併せて従来の枠組みからの脱却が求められている全農との関係の再構築についても論じていただいた。

 また今村奈良臣代表には、総論として、JAの販売事業確立の意味を、水田農業ビジョンの実現という今日の農業の基本問題にまで広げて、明らかにしていただいた。

 ところで本号は、2005年12月23日、JAビル・特別会議室で開かれた専門研究会の座談会「農協共販の課題と再生の道」での議論(その一端は本誌80頁参照)をふまえて書かれている。上述のように、JA―IT研究会ではJAの販売力の強化と販売事業の確立を戦略的課題として実践的に研究してきたが、2005年、JA全中でJAの経済事業の改革方針をまとめ、JA全農でも農産物販売についての改革方針をまとめたことから、そのとりまとめの作業の中心となったJA全中経済事業改革推進部の責任者やJA全農の役職員にもご参加をいただいて座談会を開催し、率直な意見交換を行なったのだった。

 座談会では、全国連の改革の基本的な方向についておおよその合意をみたが、本号では座談会での議論も引用して検討を加え、JAが生産者の立場に立って販売事業を確立するために何が必要かをさらに踏み込んで考察している。座談会の全記録は、JA―IT研究会から発行する予定である。多少お頒けすることも可能なので、本号と併せてお読みいただきたい。

農文協文化部


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