『農村文化運動』 188号 2008年4月

ローカリゼーションの胎動
─食と農・エネルギー・金融・教育・医療─


[目次]

はじめに

『ラダック 懐かしい未来』とローカリゼーション

まえがき

I ローカリゼーションの理論と実践と運動:試論として

(1)経済グローバル化に対するローカリゼーションの動きが世界中で始まった/(2)日本でもさまざまなローカリゼーションの胎動が/(3)経済グローバル化による危機──貧困・格差化・地球環境の悪化・地域の多様性の破壊/(4)地域経済の自立性を高め、経済を地域化する/(5)人間の再生と持続可能な社会づくりの鍵である「コミュニティ」の再構築/(6)創造の母体としての伝統智の見なおし/(7)懐かしい未来へ/(8)ローカリゼーションに向かう運動のネットワークを考える

II シンポジウム
まだ間に合う グローバリゼーションからローカリゼーションへ
〜方向転換のための具体的方法〜

基調講演
命の多様性を育むローカリゼーション〜グローバル経済を超えて

報告1 グローバリゼーションに呑み込まれないためのお金の使い方

報告2 廃校の跡地から始まった地域の変革

報告3 NPO法人「えがおつなげて」の活動

パネルディスカッション
ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ/田中優/小林和彦/曽根原久司

ワークショップでの基調講演 
今日から始めるローカリゼーション 〜足元から世界を変える

III ローカリゼーションという新たな方向性

距離の短縮/エネルギー問題の解決策/食と農/輸送/金融と交易規制/教育/健康/メディア/民主主義とコミュニティ/地域通貨/富の創造/未来への希望


はじめに

 昨年は米の過剰を背景に全農から米の仮渡し金が大幅に低く提示され、いよいよ低米価時代の到来かと衝撃が走った。その後政府が備蓄米三四万tの買入れを行なったため米価暴落は避けられたが、今年どうなるかは予想がつかない。米以外の作物も、大量の農産物輸入により価格が下落、低迷。中山間地では、過疎化・高齢化・田畑の荒廃などのいっそうの深刻化が心配される。

 しかし、このような厳しい事態にもかかわらず進められている日豪経済連携協定の交渉が締結されれば、高関税が僅かに残されている乳製品や米に与えるマイナス影響は計り知れず、しかも一度結ばれた二国間協定の低い関税等の条件は、その後の他の二国間協定などの前提にされるというから、問題は深刻である。

 私たちは戦後、自由貿易を進展させ経済成長と貿易拡大を進めることが生活水準が向上させ、貧困をなくす道だと信じこまされてきた。しかし事実は逆で、成長のための成長、貿易のための貿易を進める経済グローバル化は、世界各地に禍をもたらしているのではないか。

 そこで本号では、経済グローバル化に対して、食と農を中心にローカリゼーションの運動を展開し、エネルギーや金融、教育、医療などまで地域化を進めていこうとしている懐かしい未来ネットワークの考え方や取組みを紹介していただき、世界のあちこちで胎動が始まったローカリゼーションの運動の理論的・運動的支柱であるヘレナ・ノーバーク=ホッジさんの原稿も、同ネットワークのご厚意で発表させていただくことになった。

 ヘレナさんは、インドのラダックで近代化の弊害を目の当たりにし、経済グローバル化に対抗して、多様で個性豊かな自然とコミュニティを取り戻すローカリゼーションの道を提起している。食や農をめぐる問題と、格差社会化や環境問題、心身の健康の問題など農業以外の問題を根源で統一的にとらえて、問題の解決に向かっていければと思う。

農文協文化部


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