『農村文化運動』 192号 2009年4月

都市が〈村の暮らし〉に学ぶ時代
――世界経済危機と「ローカリゼーション」への転換


[目次]

特集 都市が〈村の暮らし〉に学ぶ時代
――世界経済危機と「ローカリゼーション」への転換
懐かしい未来ネットワーク編

はじめに

序 懐かしい未来ネットワーク代表 鎌田陽司

I グローバルからローカルへ

ISEC代表 ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ

1 グローバリゼーションをめぐる10-の神話
2 ローカリゼーションの政策と実践

II 「食と農」の取組みで都市にコミュニティを創り、地域の文化を創りだす

ジャーナリスト・出版社コモンズ代表 大江正章

1 大泉 風のがっこう
2 今治市の食と農による地域づくり
3 元気な地域の共通点と、豊かさの新たな指標

III 実践報告 「地域のチカラ」を育む

報告1 「市民皆農」を旗印に「耕す市民」を育てる
〈日本第二の大都市〉横浜市の取組み
横浜市環境創造局北部農政事務所農業振興担当係長 森 能文

報告2 農家女性の視点から「地域の力」を発揮する方法を考える
吉備国際大学社会学部准教授 靍理恵子

IV 緊急提言 景気回復よりも、セーフティ・ネットの充実と
ローカリゼーションへのシフトを!

懐かしい未来ネットワーク運営委員 加藤久人

1 経済グローバル化は日本人を豊かにしたか
2 景気対策より、セーフティ・ネットの緊急整備を
3 急変の混乱を避けつつ、他者とともに生きる定常型社会へ移行

――「ローカリゼーション」の道

農文協のあとがき――農家の「自給論」とローカリゼーション


はじめに

 世界金融危機から世界同時不況へ。日本も深刻な影響を被っているが、膨大な投機マネーによる金が金を生み出すようなカジノ経済も異常なら、財政赤字や貿易赤字も意に介さずモノを大量に消費しまくるアメリカへの輸出に依存して金もうけを追求してきた、外需依存の実体経済もまた異常ではないだろうか。

 貧困層対象のサブプライムローンや債権の証券化という金融派生商品開発の手法は私たちを驚かせたが、これら非常識的な商品は、実体経済の限界を超えて効率よく金をもうけようという思惑から生まれてきた。実体経済もカジノ経済も、暮らしに必要なものの生産や消費から乖離し、無限の金もうけに動機づけられている点で共通なのである。

 そこで今、求められているのは、自然も人間も貨幣そのものまでも商品化し、経済成長のためには食料の安全保障も顧みずに自由貿易化を進めるような経済のシステムを根本的に転換し、新しい地域の暮らしを、農を土台に、創造的に創っていくことではないか。

 それはおそらく世界共通の課題である。そこで本号では、本誌一八八号に登場していただいた懐かしい未来ネットワークの協力を再び得て、脱グローバリゼーションと地域づくりについて特集をした。

 第1章でISECのヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんは、現代のグローバル経済の仕組みを構造的に把握をして克服方向を見定めることが重要だとしつつ、コミュニティ的な分かち合いの関係を地域に作っていくことや、自然や命との深いつながりをいま一度取り戻すことが人の幸福に大事だとし、その運動を食と農から始めることを提起している。

 そして第2〜3章では、日本の食と農による地域づくりを、新しい価値観で地域に力をつけていくローカリゼーションの観点から紹介。一八八号では中山間地での取組みを取り上げたが、本号では、農家の指導による非農家の農的生活など、都市民に生の充実をもたらしつつ自らの経営も存続させていくような都市農業の取組みに重点を置いている。

 また緊急提言は、危機的状況の克服とローカル化推進についての懐かしい未来ネットワークの提言、農文協のあとがきは、農家の自給の思想や創造性、日本の農村の独自性をふまえることの重要性の提起である。合わせてお読みください。

(社)農山漁村文化協会


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