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鈴木 宣弘



氏名:
鈴木 宣弘
ふりがな:
すずき のぶひろ
肩書き:
東京大学大学院農学国際専攻 教授
出身都道府県:
三重県
生年(西暦):
1958
現住所:
東京都
主な経歴:
1982 東京大学農学部卒業
1982 農林水産省入省
1998 九州大学農学部農政経済学科助教授
2004 九州大学大学院農学研究院教授
2006 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
米国コーネル大学客員准教授(平成10年6月〜8月〜平成15年7月〜8月)
米国コーネル大学客員教授(平成16年7月〜8月〜平成19年7月〜8月)

上記肩書き以外の「主な役職」:
一般社団法人JC総研所長

■お話のジャンル・領域

<食文化>

食料問題

食料自給率、食料安全保障

<農>

農業政策、貿易自由化、WTO・FTA、酪農、コメ

■メッセージ

 我が国の農産物市場が閉鎖的だというのは間違いである。実は、日本ほどグローバル化した食料市場はないといってもよい。我々の体のエネルギーの60%もが海外の食料に依存していることが何よりの証拠だ。関税が高かったら、こんなに輸入食料が溢れるわけがない。
 わずかに残された高関税のコメや乳製品等の農産物は、日本国民にとっての一番の基幹食料であり、土地条件に大きく依存する作目であるため、土地に乏しい我が国が、外国と同じ土俵で競争することが困難なため、関税を必要としているのである。
 しかし、日本とオーストラリアとの2国間の自由貿易協定の交渉では、このような重要品目についても関税撤廃が強く迫られる可能性がある。一方、WTO(世界貿易機関)による多国間の関税削減交渉でも、大幅な関税削減を求められる可能性も出てきている。
 しかも、国内では、日本の将来方向に大きな影響力をもつ経済財政諮問会議等において、貿易自由化を含め、規制緩和さえすればすべてがうまくいくという人々が、さらに声を大きくしてきている。
 規制緩和さえすれば、すべてがうまくいくというのは幻想である。農産物貿易も、自由化して競争にさらされれば、強い農業が育ち、食料自給率も向上するというのは、あまりに楽観的である。日本の農家一戸当たり耕地面積が1.8haなのに対して豪州のそれは3,385haで、実に約2,000倍である。この現実を無視した議論は理解に苦しむ。
 このような努力で埋められない格差を考慮せずに、貿易自由化を進めていけば、日本の食料生産は競争力が備わる前に壊滅的な打撃を受け、自給率は限りなくゼロに近づいていくであろう。
 しかし、かりにそれでも大丈夫だというのが、規制緩和を支持する方々の次なる主張である。自由貿易協定で仲良くなれば、日本で食料を生産しなくても、オーストラリアが日本人の食料を守ってくれるというのである。これは甘すぎる。食料の輸出規制条項を削除したとしても、食料は自国を優先するのが当然であるから、不測の事態における日本への優先的な供給を約束したとしても、実質的な効力を持たないであろう。EU(欧州連合)も、あれだけの域内統合を進めながらも、まず各国での一定の自給率の維持を重視している点を見逃してはならない。ブッシュ大統領も、食料自給は国家安全保障の問題だとの強い認識を示し、日本を皮肉っているかのように、「食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」と演説している。
 いま、我が国では、医療と農業が、規制緩和を推進する人々の「標的」となっており、医療についても、農村部の医療の「担い手」不足の深刻化等、医療の崩壊現象が日本社会に重大な問題を提起し始めている。医療と農業には、人々の健康と生命に直結する公益性の高さに共通性があり、そうした財の供給が滞るリスクをないがしろにしてよいのであろうか。農業が衰退し、医者もいなくなれば、地域社会は崩壊するが、要するに、無理をして、そのような所に住まずに、みんな都市部に集まれば、それこそ効率はいい、ということなのだろうか。
 食料貿易の自由化も、一部の輸出産業の短期的利益や安い食料で消費者が得る利益(狭義の経済効率)だけで判断するのではなく、土地賦存条件の格差は埋められないという認識を踏まえ、極端な食料自給率の低下による国家安全保障の問題、地域社会の崩壊、窒素過剰による国土環境や人々の健康への悪影響等、長期的に失うものの大きさを総合的に勘案して、持続可能な将来の日本国の姿を構想しつつ、バランスのとれた適切な水準を見いだすべきである。一部の人々の短期的な利益のために、拙速な流れを許せば、日本の将来に取り返しのつかない禍根を残すことになりかねない。いまこそ、国民的な議論を尽くすべきときである。

■主な著書・雑誌記事等

  • 『「岩盤規制」の大義』 農文協
  • 『農業経済学 第4版』 岩波書店
  • 『我が国の水田農業を考える 下巻』 筑波書房
  • 『再生可能エネルギー 農村における生産・活用の可能性をさぐる』 筑波書房
  • 『食の戦争』2013年 文藝春秋
  • 『TPPで暮らしはどうなる?』2013年 岩波書店
  • 『ここが間違っている!日本の農業問題』2013年 家の光協会
  • 『よくわかるTPP 48のまちがい』2012年 農文協
  • 『震災復興とTPPを語る 再生のための対案』2011年 筑波書房
  • 『日本の食卓を守る食料安全保障政策』2011年 雄山社
  • 『TPPと日本の国益』2011年 全国農業会議所
  • 『新たな食料・農業・農村基本計画の検討経緯と具体化に向けて』2010年 大成出版社
  • 『新しい農業政策の方向性』2010年 全国農業会議所
  • 『食料を読む』2010年 日本経済新聞出版社
  • 『食の未来に向けて』2010年 筑波書房
  • 『現代の食料・農業問題』2008年 創森社
  • 『農が拓く東アジア共同体』2007年 日本経済評論社
  • 『日豪EPAと日本の食料』2007年 筑波書房
  • 『食べ方で地球が変わる―フードマイレージと食・農・環境』2007年 創森社
  • 『農のミッション−WTOを超えて』2006年 全国農業会議所
  • 『食料の海外依存と環境負荷と循環農業』2005年 筑波書房
  • 『FTAと食料−評価の論理と分析枠組』2005年 筑波書房
  • 『FTAと日本の食料・農業』2004年 筑波書房
  • 『WTOとアメリカ農業』2003年 筑波書房
  • 『寡占的フードシステムへの計量的接近』2002年 農林統計協会
  • 『市場開放下の生乳流通』1995年 農林統計協会

  • お問い合わせはこちら:農文協(食と農の応援団事務局)