![]() 竹熊宜孝
(たけくまよしたか) 菊池養生園名誉園長 |
いのちいと愛おし―医・食・農、そして教育の視点から―今日、成人病という言葉が使われなくなって、生活習慣病というようになった。その理由の一つは、「成人病が子供にあるということはどうか」ということらしい。生活習慣病という言葉はまことに便利なもので、交通事故だって、今日問題になっているシックハウス病だって、うつ病だって生活習慣病といえなくもない。命名した関係者の本音は食習慣病だったのでは。 ところで、長寿県沖縄の男性の長寿率が低下し、県が非常事態宣言を出したという新聞記事を見て、「やっぱりそうだったか」と私の予感が的中した思いである。私は、1962年頃から、ある疾患の調査のため、年に数回、沖縄に行き、1966年から1年半、沖縄中部病院に勤務したことがある。沖縄の食文化が急速にアメリカナイズされだした頃である。家族も同行していたのだが、沖縄食になじめず、連日、コーラ飲料やアイスクリーム、チョコレート、ケーキ、そして肉食中心の生活であった。安くておいしいアメリカ食文化にカルチャーショックを受けた。そのツケがまわって、私と長男は肥満になり、娘はリウマチ熱になった。家内と子供たちはむし歯で悩んだ。 その後、沖縄は日本に復帰し、文部省の指導のもとに、学校給食が実施されることになるのだが、アメリカでマクガバンレポートが公表され、「アメリカは食原病で亡びる。日本、そして沖縄の長寿に学べ」という提言がなされた。そのことをNHKのテレビコラム(「視点・論点」)で私は取り上げたことがある。しかし私は一抹の不安を感じていた。沖縄は、いずれ長寿県ではなくなるのではと。男性は安い外国タバコと洋酒を加える形で、アメリカの食原病の実験が沖縄で開始されていたのではと予感した。そのことを沖縄の栄養士会で話したことがある。「学校給食もアメリカの餌付けではないか。沖縄こそ、ゴーヤをはじめとする伝統食を重んじ、オジイ・オバアのような健康長寿の島を守ってほしい」と訴えた。 その後、東京で開催された「農村の健康会議」のシンポジストに選ばれ、佐久総合病院の若月俊一医師、国立栄養研究所の有本所長(故人)等が同席されていた。私の隣に座られた有本所長が、私に「日本人は餌付けされた。その手先となったのは私だ。それはアメリカの政策だった。それに乗せられて取り返しのつかない結果になった。あなたが提言していることを、声を大にして言ってほしい。もう私は退官し力がない。自分の教え子たちが、その政策にそって、世界に例のない一億総国際食実験をやっている。質・量ともに大変なことになるだろう」と言われた。 ついに、我が国こそが、アメリカの言う食原病の実験国になりつつある。 いのち愛おし。 |