![]() 竹熊宜孝
(たけくまよしたか) 公立菊池養生園名誉園長 |
「土からの食農教育」をめざして世をあげて「食育」のラッパが全国津々浦々まで鳴り響いている。やっぱり法律というのは凄いものだと思う。 食育基本法が制定され、文部科学省、農林水産省、厚生労働省が競って旗振りをされている。研究機関、大学も目の色が変わって来た。いろんな職種が連動して食育合唱を始めた。 私は30年ほど前から、「医・食・農はいのちの視点で」と言ってきた。特に前述した政府各省庁は一日も早く連携して行動を起さないと、全てが後手となって、そのツケが医・食・農にまわり、社会問題、特に医療へのツケ、子どもたちの肉体と精神、そして少子化現象にも連動する可能性を指摘してきた。今日、世界的に急速に問題になってきた環境問題にもブレーキが効かなくなる可能性があると、拙著『土からの医療』で訴えてきた。 有吉佐和子著『複合汚染』は空前のベストセラーになり、全国的に話題となった。彼女が亡くなったあとは、どのマスコミも口を閉ざした。アメリカで話題となったレイチェル・カーソン著『沈黙の春』は全世界で読まれ、その後に出たシーア・コルボーン著『奪われし未来』は評論家立花隆氏が必読の書として推薦し、マスコミの論説等でも取り上げられたが、その後は、環境ホルモンという言葉さえ死語になりつつある。 最近、映画化され本にもなっているアル・ゴア著『不都合な真実』は、まさに、「もう手遅れになるぞ」という警鐘というより、諦めとも言える真実ではないのか。 いま医療過誤、医療費高騰、医師不足がマスコミの話題だが、食と農は、もっと深いところで人類のいのちを脅かしている。BSEや鳥インフルエンザは人類を脅かす切実な問題として、政治、経済の重要課題となっているが、よくよく考えてみると、食や農を命と考えず、経済問題として学問が引っ張り、効率化を最優先した結果ではないのか。まだそれに気付かず、大騒ぎをしている。 自然の動物は、土と水を命として生きている。人間は、金と石油、そして原子力に手をつけ、戦争までする。それが、ゴア氏のいう不都合な真実である。 その視点に立って食育をやらなければ、食育もお祭り騒ぎになって、「不都合な真実」に向かうであろう。土にこだわってきたのは、土は命を生み出す基だからである。字をよく見てもらいたい。「土」に芽がなかったら「工」である。その工業化のツケが人間にまわっている。 食育でなく、食農教育を。あえて言うなら、三つ子の魂百までと言うが、3歳からの幼児教育に土からの食農教育をしてもらいたい。「朝食をしっかり摂りましょう」もいい、「弁当の日」もいい、地産地消も大賛成、身土不二は当然だ。しかし、日本人が土から離れた時に、「不都合な真実」は現実になろう。 |