熊本県清和村は、郷土芸能「清和文楽」をシンボルにしたむらづくりをすすめ、専用劇場の文楽館も建設。人口3,700人の村に、年間12万人もが訪れます。高齢者が元気に文楽を上演し、農家の女性たちが「お芝居弁当」に腕をふるい、子どもたちも次世代の担い手として育っています。「文楽の里」の知名度は村の特産であるトマトや宿泊施設にも及び、村外との交流活動が活発に行なわれています。

● 清和村 DATA●
 清和村は九州のど真ん中に位置し、標高500〜800mの地点に集落が点在する中山間地域の村。平成7年に小学校の統廃合が進み、現在、小学校は清和小(中部)、朝日小(北部)、小峰(おみね)小(南部)の3つ。それぞれ地域の伝統芸能に取り組んでいる。清和小は文楽、朝日小は神楽、小峰小は太鼓である。

● 人口
3,593人(平成12年4月現在)
● アクセス
・熊本交通センターからバスで1時間50分、
タクシーで1時間15分
● 問い合わせ先
・TEL:0967-82-2111(清和村役場)
0967-82-3001(清和文楽館)
http://www.coda.ne.jp/~seiwaobs
(清和文楽館)



●150年の歴史を持つ清和文楽
 清和村の文楽は嘉永年間(1848〜1854)に始まりました。清和村を訪れた淡路の人形芝居の一座から浄瑠璃好きな村人が人形を買い求め、技術を習ったのが始まりです。
 見よう見真似で人形遣いを覚え、次第に腕を上げていった村人は、村内の神社の奉納芝居に上演するだけでなく、村外の祭にも招かれるようになりました。遠くは長崎の五島列島まで出かけて行ったそうです。一座は農家で構成されていたので、収益に左右されることなく自分の楽しみとして上演し、時代をこえて存続してきました。子から孫へと代々継承されて、郷土芸能として今日にまで伝わっているのです。


●保存会が発足し、むらおこしのシンボルに
 文楽好きが中心となって、昭和29年に「肥後文楽人形保存会」(後の清和文楽人形保存会)を結成。昭和35年に県の「無形文化財」に指定されたのを契機に、文楽人形の修復をすすめ、文楽をむらおこしのシンボルとした「文楽の里」づくりが展開されます。
 平成4年に文楽専用の劇場「清和文楽館」を建設し、年間で260〜270回も上演されています。鑑賞客は年間約25,000人で、隣接する清和物産館「四季のふるさと」利用客を含めると13万〜14万人の人々が訪れます。文楽館を運営するのは財団法人「清和村文楽の里協会」で、現在常時20人の職員が働き、文楽後継者としても練習を重ねています。また清和文楽は、小中学校の授業にも取り入れられています。


●「文楽の里」を看板に村の商品づくりも
 公演は「清和文楽人形保存会」のメンバー18名の手で行なわれています。多くは60〜80歳の現役農家。農作業の合間に文楽館にかけつけ、終演後にふたたび畑に戻るハードな公演ですが、みなさん元気いっぱいです。
 文楽館では村の産品を食材にした「お芝居弁当」を売り出し、鑑賞客に好評。また、できる限り農薬に頼らないで栽培したトマトは、高冷地という条件を生かした本来の香りと甘みが自慢の「文楽の里のトマト」として認知され、売れ行きも好調です。また、村内を流れる緑川のほとりにある和風ロッジ「青葉の瀬」も、多くの宿泊客を集めています。文楽は清和村のイメージづくり、PRにも貢献しているのです。