菊池市鳳来地区は、大分との県境にある谷間の集落です。ここには菊池家ゆかりの聖護寺(しょうごじ)があり、地区住民の心の拠りどころとなってきました。お寺への奉仕から発した地域環境美化運動や、特産品づくりも活発です。法要のための手料理やこだわりの特産品で山の暮らしの豊かさを発信し、多くのファンも生まれました。ここには、嫁不足の心配もありません。

● 菊池市 DATA●
 菊池市は、熊本県の北東部に位置し、阿蘇外輪山に源を発する菊池川上流の扇状地に市街地と村落が点在する。気候は温暖多雨。阿蘇火山帯に属しているため、温泉にも恵まれている。豊かな水と土壌で育まれた菊池の米は、西日本を代表する米として有名。菊池一族とゆかりの深い聖護寺がある鳳来地区は、大分との県境に位置する山間の集落。

● 人口
27,754人(平成12年10月現在)
● アクセス
・JR豊肥本線肥後大津駅から菊池市街までバスで40分(1日に3、4便)、市街から鳳来地区まではバス便なし。タクシーで約10分。
・熊本空港から菊池市街までタクシーで30分
● 問い合わせ先
・TEL 0968-25-1111(菊池市商工観光課)
・TEL 0968-27-0167(鳳来区長・坂本博信)



●菊池氏ゆかりの古刹、聖護寺を支える
 集落から2kmほど北の山中にある風儀山聖護寺は、延元3(1338)年に大智禅師によって開山された古刹です。菊池氏ゆかりの禅寺で、一族とともに衰退し石塔片だけになっていましたが、昭和17年ごろ村上素道老師が再興しました。今では、海外からの参禅者も受け入れる国際禅道場となっています。
 南北朝時代、私利私欲に走ることなく、終始南朝方として戦い抜いた菊池一族。その精神は、聖護寺での禅によって培われたといいます。ですから住民は、聖護寺を誇りとし、その活動を支えています。昭和20年代に行なわれた本堂屋根の瓦葺き工事の時には、地元の小学生たちが瓦運びをしました。当時の道は、人がやっと歩けるだけの川沿いの急峻な坂道でした。「聖護寺あっての鳳来」、聖護寺は人々の心のよりどころになっています。


●聖護寺を中心にみんなが集まり、多彩な活動を
 春と秋の法要には、地区の婦人会全員が参拝者たちに手料理をふるまいます。お盆には僧侶が全家庭を参るなどの交流もあり、毎月15日には鳳来地区に托鉢僧が訪れる習慣も続いています。
 聖護寺との結びつき、そこでの奉仕活動は、地域のまとまりを強めました。「人築(にんぢく)」といわれる年6回の農道、林道、市道の草刈りと清掃は、住民の参加によって行なわれてきました。地区の清掃美化運動も活発で、婦人会では山村広場や体育館の清掃、周辺の花の手入れを行なっています。また毎週日曜日には、小学生が氏神さんの清掃にあたるのが習慣です。


●ダム建設を機に新たな展開
 集落の南約3kmにある竜門ダムの建設にともなって、市街からの道路も整備されました。平成10年にはダム湖畔に、周辺の住民で組織する振興会が「龍龍館」をオープン。館には特産物売場と、地元の食材を生かしたメニューが特徴のレストランがあり、シイタケなどの特産品をさまざまな形で提供しています。
 これらの試みを足がかりに、特産品を介した都市住民との交流も計画されています。構想の一つが聖護寺への道筋に門前市を設けて特産物の販売を、というもの。聖護寺の修行寺としての伝統を守りつつ、都市との交流の基点にしようとする計画です。