● 集落独自のむらづくりが、住民の知恵と努力の事例

 ―農林水産省農業工学研究所集落整備研究室(農工研)・筒井義冨室長

 与保呂の人々がむらづくりを進めるなかでむらの将来に大きな影響を及ぼす一つのできごとがありました。それは、農林水産省農業工学研究所集落整備研究室(農工研)の筒井義冨室長と山本徳司主任研究員との出会いです。
 圃場整備が開始された平成3年から2年間、研究室のスタッフによるむらづくり指導が行なわれました。住民たちはスタッフの指導の下に集落環境学習会、景観・環境に対する意識調査、環境点検ウォッチングと地図づくり、むらづくり学習会などを実施しました。
「農工研のスタッフはわしら住人をテストしてるのかい―と思うこともありました。でも、おかげで、与保呂という地域のよさを再認識することができましたね」と石束さん。これを契機に住人たちは与保呂のメリット・デメリットを再認識し、さらに本格的なむらづくりを目指すことにしました。
 この出会いが住民のむらづくりへの意欲を一気にかき立て、平成5年、いよいよ「与保呂楽しい村づくり推進委員会」が旗揚げされたのです。伝承部会、環境景観部会、イベント部会の3つが活動の中心になり、集落の文化遺産や伝統産業の発見と復活、花見会や稲の虫送りなど昔の行事を復活させるなど、さまざまな活動を展開することになったのです。