● 人も生き物も共生し合うことの大切さを忘れてはならない

 ―立梅用水土地改良区事務局長・高橋幸照さん

 「あじさい1万本運動」は、花の美しさだけを売り込むのではなく、農村の景観づくりの一環として始められました。「水路の周りで人々が自然に触れて親しめる環境ができれば、立梅用水に対する見方も変わるはずだと考えたのです」と高橋さん。平成11年末までに9,000本に達し、今では村の至るところであじさいが楽しめます。
 高橋さんは「ほてい倶楽部」の代表として、ビオトープ作りにも力を入れています。「土地改良工事の中心的役割を担っているのがこの自分であるということ。その工事によって、メダカやタガメが棲めなくなっているという事実。どこか割り切れない思いだった」と高橋さんは言います。
 まず取り組んだのは荒れた休耕田の復田作業でした。4月中旬、田んぼのしろかきをして昔のような田んぼに復元して水をはり、4月下旬、そこにメダカを50匹放し、ホテイアオイを200株植えました。水田機能を活用した生態系の保全活動です。その結果、8月上旬にはホテイアオイが水田一面に広がって紫色の美しい花を咲かせ、メダカの稚魚も水田の至るところに見られるようになりました。「休耕田に紫の花」と報道されると、連日多くの家族連れでにぎわうようになりました。
「何台もの車が農道に停められて、人々が水田に向かって歩く姿は不思議でした。それまでは、だれも足を踏み入れることのなかった荒地だったから」と高橋さん。
 その後、水田にはメダカだけでなくたくさんの水生昆虫が見られるようになりました。「いちばん大切なのは、人間が食料生産活動を行ない生活している空間の中で、人も生き物もうまく共生し合っていることだ。このことの大切さを人間は決して忘れてはならないと思う」と高橋さんは訴えています。
 こうした「ほてい倶楽部」の活動に対しては、平成12年4月「三重県環境功労賞」が贈られました。