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日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
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2008年3月号 No526
活用力を育てる授業
3月号表紙
  • 特集キーワード 森田和良
  • インタビュー 無藤隆氏に聞く/「習得・活用・探究」をどう考えるか
  • 先行学習で知識の活用を 鏑木良夫
  • 活用力を育てる 森田和良
  • 4年生との交流活動で,知識の活用を図る
    ─3年「チョウをそだてよう・こん虫博物館を開こう」の実践─
    金子智子・田中陽子
  • 物質に対する見方や考え方を活用する力を育てる理科学習
    ─3年「光」「電気」「磁石」の実践を通して─ 高橋隆子
  • 獲得してきた知を有効に活用する授業 丹治紀美子
  • 主題研究を読んで/活用力をはぐくむ指導法研究の充実を 塚田昭一
  • 理科学習を通して互いのよさを認め合う学級作り 堤亜里沙
  • 子どもに考えさせる授業づくり
    ─5学年「もののつり合い」の実践を通して─ 小松明彦

 学習指導要領の改訂に伴って,学習指導要領の理念を実現するための課題がいくつか提示された。その中には,「知識・技能を活用する学習指導を充実させる」ことが述べられている。このことは,今後の指導においても「思考力・判断力・表現力等の確かな学力を育む必要」を強く感じるからである。

 従来の理科学習では,自然の事物現象とのかかわりを通して,子どものもった問題から,変化が生じる原因を追究したり変化のきまりを見出したりして,対象への理解を深めるという授業展開が一般的である。このことは,多くの理科教科書の紙面が,ほとんどのこのパターンで構成されていることからもわかる。

 このタイプの授業では,結論がわからない問題を解決していくので,多様な条件を吟味しつつ追究する活動になり,解決への過程は試行錯誤的で時間も労力も多くかかる。したがって,学習内容の理解にたどり着くまでに多くの時間を割かざるを得ず,獲得した知識や技能をほかの状況下で活用する活動までにはなかなか至らなかった。

 ところが,最近の「読解力」の調査などからは,習得したはずの知識や技能が,学習した文脈とは異なる状況では,意外なほど使いこなせない,理解内容が有効に機能しないことが明らかになった。つまり,すでに学習した内容であっても「わかったつもり」「できるつもり」のことが,数多く存在するということが明らかになったのである。

 これは,学んで得た知識や技能を活用する機会が少なかったことはもちろんだが,学習者自身が,自分の理解を「わかったつもり」と気づいていないことが大きな原因の一つだと考える。「わかったつもり」かどうかを判断するためには,一度“入力”した知識を,自分の外に“出力”する必要がある。知識や技能を活用する場を設けるとともに,学習者自身が,自分の理解のあり方を見直し修正すことのできる活動を,これまでの学習活動に追加する必要性がある。

 次に問題となるのは,知識や技能を出力する場としてどのような「発展課題」を設定すれば,知識・技能の理解や定着も深まるのかということである。習得した知識や技能を,学習した文脈のまま当てはめて解答が出るレベルの課題では,それほど大きな効果は期待できない。一方,あまりにも条件が複雑すぎる難解な課題では,適用させる知識や技能を子ども自身が選択・判断できず,学んだ知識や技能の有効性を感じることができない。これも学習効果は薄い。

 課題を解決するために必要な知識や技能がある程度明確になり,さらに,それらを適用するのに必要な前提条件など,解決に至るまでに付随する知識なども意識して,取捨選択できる「判断力」も求められるような,応用レベルの「発展課題」が求められる。

 ほかにも活用力を育てるのに必要な条件は,いくつか考えられるだろう。
 本号では,「活用力を育てる理科授業」について,具体的な授業をもとに多方面からの議論を期待している。(担当/森田和良)


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2008年
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
2007年
12月号 研修・授業分析の生かし方
11月号 授業力を磨く
10月号 子どもの発達と問題解決
9月号 今,福島が熱い! 全国大会への道
8月号 授業が成り立つ問題が見えてくる
7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
1月号 児童に考えさせる実験結果のまとめ方
2006年
12月号 今,単元構成を考える
11月号 教えて考えさせる授業と問題解決
10月号 話し合いを深めるキーワードとは?
9月号 感性をみがく理科教育
8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
2月号 問題解決の力を育む
1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
2005年
12月号 子どもの見方や考え方をとらえる
11月号 見えない世界を楽しむ
10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
9月号 こだわりを育てる理科授業
8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
5月号 教師を理科好きにする“新しい校内研修”
5月増刊号 「真の学力」を育てる 理科の学習指導案集
4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
3月号 個の学びを生かした 練り上げのある授業
2月号 豊かな「挫折」がある授業
1月号 自然を豊かに感じ、確かな科学を築く
2004年
12月号 発展的な学習のアイデア
11月号 「問題解決」の原点
10月号 対話で変わる子どもの見方や考え方
9月号 わかる理科授業をめざして
8月号 21世紀型の教材研究
7月号 特集:子どものつくる「問題」、教師の考える「問題」
6月号 特集:みがけ! 感性
5月号 専門家の協力を得た授業
4月増刊号 小学校理科授業のレベルアップ読本
4月号 確かな学力を育てる理科授業
3月号 長期記憶に残る理科授業の工夫
2月号 「問題解決と学力」を問う
1月号 理科嫌いをなくす授業をめざして
2003年
12月号 予習と理科学習
11月号 「わくわく導入」のあり方
10月号 科学的思考を育てる「基礎・基本」
9月号 ポートフォリオを生かす
8月号 教師の指導力を問う
7月号 ものづくりで科学する力を
6月号 どうする? 発展的・補充的な学習
5月号 飼育・栽培の楽しみ
5月増刊号 楽しい理科の導入の工夫
4月号 ワンランク上の学力をつけたい
3月号 学習指導要領をみつめなおす
2月号 学力低下への緊急提言
1月号 理科から総合へ
2002年
12月号 海外の理科教育に学ぶ
11月号 絶対評価 私の実践
10月号 地域とつながる理科教育
9月号 わかる喜びをめざす理科の授業
8月号 教材化を図る教師の眼
7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
5月増刊号 理科に役立つ栽培植物
4月号 「豊かな心」にどこまで迫れるか
3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
1月号 子どもの仮説が生きる授業
2001年
12月号 IT革命と理科授業
11月号 子どもが協同しあう授業の創造
10月号 ものづくりをどう位置づけるか
9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

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