- インタビュー 長沼毅氏に聞く/生命の起源を求めて
- ことばを重視する理科授業 角屋重樹
- 「ことば」の学びとしての理科授業 遠西昭寿
- 素材・性質を理解させる「ことば」の力
─3学年「じしゃくにつけよう」の実践をとおして─ 岸俊之
- 主題研究を読んで 石川正光
- 「科学のことば」や「つなぎことば」「書きことば」
を重視する理科授業 木下博義
- 主題研究を読んで 清水堯
- ものが溶けることを粒子を使って表現する
─飽和食塩水にホウ酸を溶かす活動を通して─ 鈴木巧
- 主題研究を読んで 宮崎稔
2006年中央教育審議会の基本的方向性に関する報告の中で,「言葉と体験の重視」ということが述べられました。理科において「体験」は,昔から必要であると言われており,多くの実践がなされています。しかし,「ことば」となると,現場では,理科で重要だという認識があまりないのではないでしょうか。それなら,なぜ「言葉と体験の重視」が打ち出されたのでしょうか。
人がものを認識するためには「ことば」が必要であることは,ソシュールなどの言語学者が述べています。ソシュールは,人は,ものの性質や特徴を認識し,これに名前をつけるのではなく,まず「ことば」があり,「ことば」によって分節されたものが認識されると考えています。このように考えると,子どもに科学的な思考,科学的な認識を求めるためには,「ことば」が大切なキーワードとなることが必然的に理解できます。「ことば」なくして科学的理解もないことがわかります。では,理科の授業において,「ことば」をどのように捉えることが求められているのでしょうか。
さらに,「ことば」の重要性を,PISA調査においても見ることができます。2007年12月に「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA2006)の結果が公表され,「読解力」の得点がOECD平均程度まで低下している状況が明らかとなりました。PISA調査における読解力は,「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」だと定義されています。第1回PISA調査との比較から,日本の生徒たちは,情報の取り出し(テキストの内容の理解)はよくできるが,テキストを自分なりに解釈したり熟考・評価したりすること,自分の考えを筋道を立てて書くこと,難しい問題でも懸命に取り組み,自分なりの答えを示すことへの課題が多いと言われています。このような課題へも実践における「ことば」が深く関わっているように思えます。
以上のような背景から,特集テーマを「『ことば』を重視する理科の授業とは」に設定することで,理科の授業において「ことば」をどのように捉え,どのような取組みが可能なのか,また,「ことば」に視点を当てることによって,子どもたちにどのような力を育てることができるのか,誌上において理論的に整理し,具体的な実践レベルで方法を示すことができたら,全国の読者の方に日々の授業において参考にしていただけるのではないかと考えました。(担当/中田 晋介)
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