- 特集キーワード 松本邦宏
- インタビュー 中村日出夫氏に聞く/学ぶ喜びは,面白がって,自ら工夫し追究し続けること
- 子どもとともに授業をつくる 正岡義憲
- 子どもが自分の成長を実感する〜ChangeとYes we can〜 小田部忠仁
- 学ぶ喜びを育む話合い活動─考え方の交流を促す教師の姿勢─ 村上正義
- 「効果的な活用」が「学ぶ喜び」につながる 後藤裕史
- 仲間とともに学ぶ喜びのある理科授業について考える
─6学年「ものの燃え方」「土地のつくりと変化」の実践を通して─ 小谷内寿信
- 考える材料を得ながら自分の見方を明確にしていく学習
─5学年「もののとけ方」─ 片岡玲子
- 日常の生活に結びついた理科学習
─4学年「電池のはたらきを調べよう」─ 須賀伸吾
子どもにとって「理科を学ぶ」ということは,どのような価値をもっているのでしょうか?
最近,よく言われるように,子どもたちの意識調査では,理科は「好き」だけれど,「大切」だとは思わないという結果が出ているそうです。子どもにとっては,好きで楽しいものこそ,価値があるものなのではないでしょうか。しかし,この調査結果からは,子どもたちが理科の学びに価値を認めていないかのように感じられます。そして,そのことが,しばしば現在の理科教育の問題であると論じられているのです。
しかも,理科が「好き」とする割合は,小学校から中学校にかけて学年が上がるとともに,低下していくのです。このことは何を表わしているのでしょうか。
子どもが感じていた「理科の楽しさ」と,現実の理科の授業との間のギャップが広がっているということが考えられないでしょうか。実物に触れ,調べる理科の楽しさが,内容の暗記を迫られる教科に変わってしまっているのではないでしょうか。
しかし,本来学びとは,そのように目に見えるもののためだけに行われるものなのでしょうか。小学校の子どもたちには,もっと本質的な学びの喜びを味わってもらいたいものです。
理科においては,目の前に本物の自然があり,直接手に取ったり,働きかけたりすることができる。これは,子どもにとって大きな魅力です。当然,「楽しい」ものであるはずです。
しかし,もしかすると,多くの授業はそこで終わっていて,その先の喜びを子どもたちに十分に味わわせることに成功していないのではないでしょうか。
子どもが学びのなかで,新しい発見に瞳を輝かせ,そのことを,表現を通して仲間と共有し,認め合うことで自己有用感を高め,学んでよかったと思う。そんな,子どもの自己実現にあふれた授業。これこそが,小学校で私たちがめざしている学びの姿のはずです。そうした学びのなかで,子どもは,対象に対して全く新しい見方をするようになった自分をも発見することができるでしょう。これこそが,本当の「楽しさ」であり,「学ぶ喜び」ではないでしょうか。
本号では,「理科を学ぶ喜び」について改めて考え,学びのなかで仲間とともに成長する子どもの姿を追います。理科教育の究極の目標は「人間形成」であるという思いを,新たにしたいと思います。
(担当/松本邦宏)
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