月刊 現代農業 季刊 のらのら 隔月 保健室
  季刊地域 季刊 うかたま 季刊 生物科学

日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
バックナンバー購入
2010年3月号 No550
子どもの問いかけをどう組織化するか
3月号表紙
  • 特集キーワード 前川良平
  • インタビュー 小泉武栄氏に聞く/問いかけることから,すべてがはじまる
  • 学びを深める「対話」の進め方 堀公俊
  • 系統を重視し,見方や考え方を育てる磁気教材の指導はどうあるべきか 平松不二夫
  • 生活のなかの気づきを,「問い」に高める授業
    ─3学年「光でかざるよ 手作りツリー〜電気の通り道〜」 石原清史
  • 学習の順序性を考えた組織化の工夫
    ─4学年「もののかさと温度」の学習を通して─ 江渡俊晴
  • 子どもの問題意識と教師のねらいを一致させるために 向智広

 子どもが事象を見て,疑問や矛盾を感じ,予想したり仮説を立てたりしながら問題を解決していけるように学習を構成していくことが,教師に求められています。事象に対して問題をもつということは,学習の推進力となります。さらに,疑問をもたせるだけでなく,教師と子ども,あるいは子ども同士のやり取りのなかで,学習に直接結びつく疑問を重視し,「疑問(個人が抱く主観的なもの)」から「問題(疑問を学級で出し合った後に出てくるもの)」へと発展させていく必要があります。子どものなかで問題として意識化されることで,はじめて学習が自分のものとなると考えられます。こうして見通しをもつようになり,解決への手がかりを,自ら考えていくようになります。この一連の流れを組織化と呼ぶこととします。なお,子どもの問いかけ(疑問)を組織化するのは導入場面だけでなく,考察後の新たな問題につながる場面などでも必要になると考えられます。

 今回の学習指導要領の改訂の改善の具体的事項の中でも,「生活科の学習を踏まえ,身近な自然について児童が自ら問題を見いだし,見通しをもった観察・実験などを通して問題解決の能力を育てる……」とあります。

 しかし,以上のことを踏まえて,事象を見て子どもたち自らで学習問題を創り上げ,学習を進めることが理想であることを知っていても,実践するとなると頭を悩ませている先生方も多いのではないでしょうか。かく言う自分もその一人です。事象を見せても,当然ですが,その捉えは微視的・断片的であることが圧倒的に多いでしょう。能力や経験も異なっているために,自己の経験と結びつけて考えたり,思ったりすることが少しずつずれてきてしまいます(だからこそ組織化できるのであり,組織化する意味があります)。

 そこで今月号では,事象に対する子ども一人ひとりの疑問を,教師の側が意図する目的へとどのように話合いを進めていけばよいのかを考えていきます。ここで気をつけておきたいことは,疑問にも次元や順序性があるはずだという点です。つまり,易から難へ,また,子どもの意識がつながるように,教師は配慮すべきと言えそうです。組織化の方法の具体例としては,以下のような内容が考えられます。

(例)
・子どもがもった疑問を引き出しながら,対話を通して問題へ発展させていく工夫。
・学習の順序性を考えた組織化の工夫。(指導計画の工夫)
・能力や経験の差による疑問の違いを,順序よく組織化していく工夫。
・拡散した疑問から焦点化した疑問へと段階的に引き上げて問題につなげていく工夫。
・子どもが疑問を意識化できるようなノート指導の工夫。
・考察から新たに生まれた疑問の引き出し方と問題の共有の工夫。
・問題から次の問題へつなげる教師の手立ての工夫。
 など

 このような手立てをもとに,子ども一人ひとりの疑問を上手に生かしながら,より質の高い学習問題へと組織化できる指導のあり方を,読者のみなさんと考えていければ幸いです。
(担当/前川良平)


  

Back Number

2010年
2月号 理科と「言語活動」
1月号 学ぶ喜びのある授業
2009年
12月号 「理科離れ」の正体を探る
11月号 考察力を高める
10月号 実験結果のまとめと評価
9月号 活用できるものづくり教材
8月号 教師と子どもをつなぐ板書術
7月号 環境教育と理科
6月号 学ぶ価値を実感する授業
5月号 今こそ,自然観察力を育てたい
4月号 新学習指導要領をどう実践するか
3月号 科学史を授業に生かす
2月号 「生命」「地球」概念の授業
1月号 科学的思考力を育てる
2008年
12月号 実感を伴った理解
11月号 「伝え合う力」を育てる理科授業
10月号 習得・活用・探究学習と子どもの思考
9月号 活用力を高める「深化課題」の開発
8月号 人間力の向上
7月号 「エネルギー」「粒子」概念の授業を考える
6月号 「ことば」を重視する理科の授業とは
5月号 自然・科学・実感 はじまる新しい理科!
4月号 PISA型科学的リテラシー
3月号 活用力を育てる授業
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
2007年
12月号 研修・授業分析の生かし方
11月号 授業力を磨く
10月号 子どもの発達と問題解決
9月号 今,福島が熱い! 全国大会への道
8月号 授業が成り立つ問題が見えてくる
7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
1月号 児童に考えさせる実験結果のまとめ方
2006年
12月号 今,単元構成を考える
11月号 教えて考えさせる授業と問題解決
10月号 話し合いを深めるキーワードとは?
9月号 感性をみがく理科教育
8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
2月号 問題解決の力を育む
1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
2005年
12月号 子どもの見方や考え方をとらえる
11月号 見えない世界を楽しむ
10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
9月号 こだわりを育てる理科授業
8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
5月号 教師を理科好きにする“新しい校内研修”
5月増刊号 「真の学力」を育てる 理科の学習指導案集
4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
3月号 個の学びを生かした 練り上げのある授業
2月号 豊かな「挫折」がある授業
1月号 自然を豊かに感じ、確かな科学を築く
2004年
12月号 発展的な学習のアイデア
11月号 「問題解決」の原点
10月号 対話で変わる子どもの見方や考え方
9月号 わかる理科授業をめざして
8月号 21世紀型の教材研究
7月号 特集:子どものつくる「問題」、教師の考える「問題」
6月号 特集:みがけ! 感性
5月号 専門家の協力を得た授業
4月増刊号 小学校理科授業のレベルアップ読本
4月号 確かな学力を育てる理科授業
3月号 長期記憶に残る理科授業の工夫
2月号 「問題解決と学力」を問う
1月号 理科嫌いをなくす授業をめざして
2003年
12月号 予習と理科学習
11月号 「わくわく導入」のあり方
10月号 科学的思考を育てる「基礎・基本」
9月号 ポートフォリオを生かす
8月号 教師の指導力を問う
7月号 ものづくりで科学する力を
6月号 どうする? 発展的・補充的な学習
5月号 飼育・栽培の楽しみ
5月増刊号 楽しい理科の導入の工夫
4月号 ワンランク上の学力をつけたい
3月号 学習指導要領をみつめなおす
2月号 学力低下への緊急提言
1月号 理科から総合へ
2002年
12月号 海外の理科教育に学ぶ
11月号 絶対評価 私の実践
10月号 地域とつながる理科教育
9月号 わかる喜びをめざす理科の授業
8月号 教材化を図る教師の眼
7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
5月増刊号 理科に役立つ栽培植物
4月号 「豊かな心」にどこまで迫れるか
3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
1月号 子どもの仮説が生きる授業
2001年
12月号 IT革命と理科授業
11月号 子どもが協同しあう授業の創造
10月号 ものづくりをどう位置づけるか
9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

|| 農文協のトップへ || このページのトップへ ||