- 特集キーワード 前川良平
- インタビュー 小泉武栄氏に聞く/問いかけることから,すべてがはじまる
- 学びを深める「対話」の進め方 堀公俊
- 系統を重視し,見方や考え方を育てる磁気教材の指導はどうあるべきか 平松不二夫
- 生活のなかの気づきを,「問い」に高める授業
─3学年「光でかざるよ 手作りツリー〜電気の通り道〜」 石原清史
- 学習の順序性を考えた組織化の工夫
─4学年「もののかさと温度」の学習を通して─ 江渡俊晴
- 子どもの問題意識と教師のねらいを一致させるために 向智広
子どもが事象を見て,疑問や矛盾を感じ,予想したり仮説を立てたりしながら問題を解決していけるように学習を構成していくことが,教師に求められています。事象に対して問題をもつということは,学習の推進力となります。さらに,疑問をもたせるだけでなく,教師と子ども,あるいは子ども同士のやり取りのなかで,学習に直接結びつく疑問を重視し,「疑問(個人が抱く主観的なもの)」から「問題(疑問を学級で出し合った後に出てくるもの)」へと発展させていく必要があります。子どものなかで問題として意識化されることで,はじめて学習が自分のものとなると考えられます。こうして見通しをもつようになり,解決への手がかりを,自ら考えていくようになります。この一連の流れを組織化と呼ぶこととします。なお,子どもの問いかけ(疑問)を組織化するのは導入場面だけでなく,考察後の新たな問題につながる場面などでも必要になると考えられます。
今回の学習指導要領の改訂の改善の具体的事項の中でも,「生活科の学習を踏まえ,身近な自然について児童が自ら問題を見いだし,見通しをもった観察・実験などを通して問題解決の能力を育てる……」とあります。
しかし,以上のことを踏まえて,事象を見て子どもたち自らで学習問題を創り上げ,学習を進めることが理想であることを知っていても,実践するとなると頭を悩ませている先生方も多いのではないでしょうか。かく言う自分もその一人です。事象を見せても,当然ですが,その捉えは微視的・断片的であることが圧倒的に多いでしょう。能力や経験も異なっているために,自己の経験と結びつけて考えたり,思ったりすることが少しずつずれてきてしまいます(だからこそ組織化できるのであり,組織化する意味があります)。
そこで今月号では,事象に対する子ども一人ひとりの疑問を,教師の側が意図する目的へとどのように話合いを進めていけばよいのかを考えていきます。ここで気をつけておきたいことは,疑問にも次元や順序性があるはずだという点です。つまり,易から難へ,また,子どもの意識がつながるように,教師は配慮すべきと言えそうです。組織化の方法の具体例としては,以下のような内容が考えられます。
(例)
・子どもがもった疑問を引き出しながら,対話を通して問題へ発展させていく工夫。
・学習の順序性を考えた組織化の工夫。(指導計画の工夫)
・能力や経験の差による疑問の違いを,順序よく組織化していく工夫。
・拡散した疑問から焦点化した疑問へと段階的に引き上げて問題につなげていく工夫。
・子どもが疑問を意識化できるようなノート指導の工夫。
・考察から新たに生まれた疑問の引き出し方と問題の共有の工夫。
・問題から次の問題へつなげる教師の手立ての工夫。
など
このような手立てをもとに,子ども一人ひとりの疑問を上手に生かしながら,より質の高い学習問題へと組織化できる指導のあり方を,読者のみなさんと考えていければ幸いです。
(担当/前川良平)
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