- 8月の自然のたより 写真提供:増田和明
- 特集キーワード 森田和良
- インタビュー 鏑木良夫氏に聞く/わかってこそ,楽しい授業になる
- 深い理解と表現を大切にした授業づくり
─認知心理学からみた活用型授業のあり方─ 植阪友理
- つまずきを生かした活用課題の設定から学力保証へ 森田和良
- 子どもが生きている形の知識を身につける活用型授業
─3学年「明かりをつけよう」の学習を通して─ 平澤林太郎
- 活用課題による理解深化をめざして 川畑徹大
- 身近な事物・現象と学びとのつながりに気づく児童の育成
─導入・活用に電気錠を用いた「電流の働き」の実践─ 下西秀樹
新しい学習指導要領が実施されてから,「習得・活用・探究」「言語活動の重視」「学力保証」などのキーワードが出てきて,授業スタイルの見直しが図られようとしている。これは,従来の学習指導では十分とは言えない部分があるという実態の認識と,その改善策の開発・実行が必要であるという指摘であろう。
教育改革や指導法の効果を検討する場合,これまでの多くの議論が「どのように子どもに学ばせるのか」という「入力」の部分に焦点を当てたものばかりだった。そこに,「子ども中心」の発想が重なり,子どもの主体性を重視し過ぎるあまり「教師が指導することを躊躇する」場面もあり,授業を受けても「わからない子ども」が数多くいるという学力低下の実態が明らかになった。このことの反省も,新学習指導要領への改訂には加味されていると捉える。
「入力のあり方」も大事だが,今,注目されているのは,学習したことがどの程度身についているのか,どのような場面で活用できるのかという,いわば「出力」の姿である。授業を通して子どもに「何が定着できたのか」が問われている。
すばらしい授業だったと参観者から賞賛される授業があっても,その授業後に「定着できたものは何か」を個別に明らかにする理解度チェックなどは,ほとんどされてこなかった。これからの理科授業では,入力の仕方に工夫があるだけでなく,その授業によってどのような内容が,どの程度,定着できたのかについても,問われるようになったのではないだろうか。
なぜならば,学習指導要領の内容は,どの子どもにとっても理解してほしい内容であると設定されているからだ。つまり,「最低基準」なのだ。すると,この「最低」が保証されたかどうかを把握するには,「入力の仕方」ではなく,「出力の結果」から判断せざるを得ない。学習した内容の出力場面の1つが,「活用」場面である。
その活用を組み込んだ授業,つまり,「活用型理科授業」が,これからはよりいっそう必要になるのではないだろうか。児童が誤解しやすい内容,つまずきやすい場面などを意図的に設定して,児童の理解状況に揺さぶりをかける。このように,児童が自らの理解状況を見直す場が,深い理解に至るためには必要なのではないだろうか。ここには,教師の授業力や指導力などが求められるだろう。
それでは,活用を組み込んだ授業を,どのように構成したらよいのだろうか。
本号では,その具体的な「授業モデル」と,学習前と学習後で,どのように理解が深まったのか「児童の実際の変容」,さらに,活用を組み込んだ授業が成立するための「条件」なども紹介いただき,「活用型理科授業」の具体を明らかにしていきたい。
(担当/森田 和良)
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