- 10月の自然のたより 写真提供:増田和明
- 特集キーワード 寺本貴啓
- インタビュー 坂東元氏に聞く/伝えたいのは「命のかがやき」
旭山動物園の取組みと工夫
- 思考力・判断力・表現力を育むための言語活動
─理科の学力をどのように捉え,授業に生かせばよいか─ 猿田祐嗣
- 思考力・判断力・表現力を高める「学びの概要をまとめる活動」 木下博義
- のびのび書かせる3学年の予想としっかり書かせる6学年の考察 伊藤知子
- 子どもの考えを明らかにし,深める言語活動
─6学年「電気の利用」の実践を通して─ 山中謙司
- 考察する能力を育むための言語活動のあり方について
─5学年「ふりこ」を例に─ 福地孝倫
近頃,言語活動の重要性が理解されてきています。しかし,言語活動を重視した理科の研究授業をすると,あらかじめ作られた□の中に言葉を当てはめて終わってしまう授業や,ノート整理に時間をかけ自然事象に触れる時間が少ない授業のように,理科の内容ではなく,言語活動自体が目的となっているものが,しばしば見受けられます。しかしながら,理科における言語活動の充実は,単に表現技能を身につけるだけではなく,自然の「事実(事象)」と,その原因を探る「事実の解釈」の部分をつなげて表現させることが目的です。したがって,事実にもとづいて解釈したことを表現させる時間を確保し,指導をしなければ,言語活動の充実を行ったことになりません。一方,科学的思考力は,「事実を解釈する方法(見方・考え方)」であり,教師は事実の見方(視点)や解釈のしかた(考え方)を指導することが必要です。ここでは,科学的思考力と言語活動の関係を,以下のようにまとめました。
言語活動を行うことで,情報共有ができ,他者の考えと自分の考えを比較し,修正することができます。つまり,このことにより,(1)自分自身が科学的に思考しているか(事実からどのように観て,考えたのかについて)再確認することができる,(2)表現する過程でより科学的な解釈のしかたや科学用語も獲得することができ,その結果,科学的思考力を高めることができるといえます。以上より,科学的思考力を高めることを目的とした言語活動のポイントは,(1)事実を解釈する視点と方法を指導すること,(2)科学的な用語・表現方法の指導をすること,(3)事実を観察したり解釈したりする時間を十分確保すること,(4)自分自身で修正するための情報共有や修正の時間を確保すること,であるといえます。
そこで今月号では,科学的思考力を高めることを目的とした言語活動について,具体的な授業に当てはめながら,改めて言語活動を考えていきます。これから理科における言語活動のポイントが,きっと見えてくると思います。
(担当/寺本 貴啓)
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