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生物科学
Volume 58,No.1 2006

Sep

目次

特集:遺伝子組換え植物と生態的リスク評価

●巻頭言:借り物の翼(菊地千尋) ……1
●松田裕之:遺伝子組換え植物の論争……2
●矢原徹一:遺伝子組換え植物の生態的リスク評価と合意形成……6
 「遺伝子組換えダイズが食品として安全かどうか」という命題は,真偽が判定可能な科学的命題だが,「遺伝子組換えダイズを畑で栽培して良いかどうか」という命題は,真偽が判定できない価値的命題である.遺伝子組換え植物の開放系試験・利用について考える場合には,この両者を区別する必要がある.価値的命題に関しては,科学者の価値観と,一般市民の価値観の間に優劣はなく,科学者は,生産者・消費者と誠実な対話を通じて合意形成につとめる必要がある.このような観点にもとづき,遺伝子組換え植物の開放系試験・利用を実現する道筋と,その過程での科学者の役割について考察した.
キーワード:遺伝子組換え作物,リスク評価,科学的命題,価値的命題,順応管理
●田部井豊:日本における遺伝子組換え生物等の取扱いルール
……12
 遺伝子組換え生物等は,開発段階から自然環境下における利用の過程で,生物多様性に対する影響をカルタヘナ法により評価され,遺伝子組換え農作物を食品や飼料として利用する場合には,食品衛生法および飼料安全法に基づき,その安全性が確認されている.国の法律以外に,農林水産省が第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針を策定し,また地方自治体が独自に条例や方針等を策定して,遺伝子組換え農作物の規制を行っている.
キーワード:遺伝子組換え生物,安全性評価,カルタヘナ法,遺伝子組換え食品
●嶋田正和・大村大輔・高橋亮:遺伝子組換え作物から近縁野生植物への遺伝子浸透―許認可体制と交雑性をめぐる問題―……21
 遺伝子組換え作物の利用が進むにつれ,近縁野生植物との交雑性・遺伝子浸透の問題が懸念される.これには確率的分岐現象である遺伝的浮動が関係する.この記事では「分子進化の中立説」で有名な木村資生の拡散近似モデルを拡張した.2次元格子空間のメタ個体群を想定し,個々の局所個体群内での遺伝子頻度は拡散近似のFokker-Planck方程式を数値計算し,局所個体群間では花粉流動によって遺伝子が分散する過程を計算した.ツルマメや在来ナタネなどの実態調査が進むと,より具体的な解析が進むと期待される.
キーワード: GM作物,交雑性,遺伝子浸透,中立遺伝子,拡散モデル
●田部井豊:遺伝子組換え農作物の社会的受容の取り組みについて……30
 1994年に初めて遺伝子組換え農作物が商品化され,2005年には栽培面積は9,000万haまで増加した.日本にも除草剤耐性ダイズや害虫抵抗性トウモロコシなどが,年間1,000万t以上輸入されていると推定される.しかし,一般消費者が遺伝子組換え農作物の安全性などに懸念を持っているなどの理由から,政府などにより遺伝子組換え農作物の社会的受容を進めるための活動がなされてきたものの,遺伝子組換え農作物の社会的受容は進んでないとされている.社会的受容が進まない理由を考察し,これまでの社会的受容の促進のための活動を紹介したい.
キーワード:遺伝子組換え農作物,安全性,社会的受容,サイエンス・コミュニケーション
●松田裕之,浦野紘平,ロスベアグ・アクセル,小池文人,雨宮隆,牧野光琢,森野真理,久保隆,下出信次,中井里史,加藤峰夫,茂岡忠義:生態リスクマネジメントの基本手順と事例比較……41

 生態リスク管理においては,科学的評価と社会的合意形成を独立して行うことが重要である.われわれが推奨する生態リスク管理手続きとは,以下の諸手順からなるものである.(1)社会的要請・科学的問題提起,(2)管理範囲の絞込みと利害関係者の招待,(4)協議会・科学委員会などの設置,(5)避けるべき事態の明確化,(6)定量的評価指標の列挙,(7)影響因子の分析と予測モデルの構築,(8)放置した場合のリスク評価,(9)管理の必要性と目的の合意,(10)数値目標の仮設定,(11)モニタリング項目の決定,J制御可能な項目と管理手法の選定,(12)目標達成の実現性の評価,(13)リスク管理計画と目標の合意,M管理の実施とモニタリング,(14)管理とモニタリングの継続,(15)目的・目標の達成度の評価.ただし,Lの計画と目的の合意に至らない場合には(16)の段階からやり直し,合意した場合でも(17)の評価において計画を随時見直すことがある.これらの手順に照らして,ニホンジカ保護管理計画,許容漁獲量決定規則,国際捕鯨委員会の事例を検討した.
キーワード:合意形成,順応的管理,シカ管理,許容漁獲量制度

●浜崎活幸:ノコギリガザミ類の種苗生産と放流効果……48
 栽培漁業とは,人間の手で育てた稚仔(種苗)を海へ放流し,天然資源とともに管理していこうとする漁業形態である.本論ではノコギリガザミ類を例として,応用生物学的な立場から栽培漁業を紹介した.すなわち,トゲノコギリガザミとアミメノコギリガザミの生活史に関する情報を織り交ぜながら稚仔を育てる工程(種苗生産)について述べた.さらに,人工的に育てられ,天然の海へ放流されたトゲノコギリガザミの稚ガニが生き残るのか,また放流した個体のうち何尾が漁獲されるのかを調査した最近の研究結果を紹介し,最後に栽培漁業に関する学際的研究の必要性を指摘した.
キーワード:栽培漁業,種苗生産,種苗放流,標識,ノコギリガザミ

●書評― 『飛ぶ昆虫,飛ばない昆虫の謎』『日本の真社会性ハチ 全種・全亜種生態図鑑』『生命科学者,現代を語る』『生態学からみた里やまの自然と保護』『生態系へのまなざし』『サケ・マスの生態と進化』『解剖男』『魚の形を考える』『新版 母は枯葉剤を浴びた ダイオキシンの傷あと』『DNA鑑定―その能力と限界』
●三中信宏:“みなか”の書評ワールド

English_conents

Special feature : Ecological risk assessment of GM plants-

Kikuchi Chihiro:An Icarian reader(1)
 Matsuda Hiroyuki:Controversy on genetically modified plants(2)
 Yahara Tetsukazu:Ecological risk assessment of GM plants and consensus building(4)
 Tabei Yutaka:Domestic laws for genetically modified organisms in Japan(12)
 Shimada Masakazu, Ohmura Daisuke & Takahashi Ryo:Introgression from genetically modified plants into wild relatives : problems in permission systems and hybridization(21)
 Tabei Yutaka : Promotion of pubulic acceptance for genetically modified crops(30)
 Matsuda Hiroyuki, Urano Kohei, Axel G. Rossberg, Koike Fumito, Amemiya Takashi , Makino
Mitsutaku, Morino Mari , Kubo Takashi , Shimode Shinji, Nakai Satoshi, Kato Mineo &
Shigeoka Tadayoshi:A comparative study on ecological risk management procedure(41)
Hamasaki Katsuyuki : Hatchery technology and stocking effectiveness in mud crabs(48)
Book reviews(55)

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