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生物科学
Volume 66,No.3 2015

Jun.

目次

特集:昆虫食

巻頭言:ナメクジウオに魅せられて(窪川かおる)……129

湯本貴和:昆虫食はなぜゲテモノ扱いされるのか……130

渡辺弘之:非木材林産物資源としての食用昆虫……133
 森林からの産物(林産物)は大きく木材林産物と非木材林産物に分けられる.先進国の林業では木材林産物の生産が主目的であったが,発展途上国,とくに熱帯地域においては森林伐採・木材搬出に換え,森林を維持しながら,そこから多様な非木材林産物を取り出し,地域住民の生活をも維持する森林管理が模索されている.食用昆虫もそのひとつであり,タイ・ラオスの農山村では貴重な蛋白源にもなっているし,それを味わう食文化がある.しかし,昆虫類は食用としてだけでなく,標本,ペット,装飾・工芸品,飼い鳥の餌,工業用原料など,他にも多様な用途・利用がある.その用途・利用を知り,養殖を含めた適切な持続的生産,森林全体としての資源利用・管理を考えていかなければならない.
キーワード:非木材林産物,森林に関する伝統的知識,食用昆虫,昆虫類の多様な利用

溝口元:日本の昆虫学者による昆虫食への言及:歴史的素描……141
 近代日本におけるアカデミズムの歩みの中で,昆虫学者や昆虫に関心を抱いた人たちが昆虫食をどのようにとらえ,向き合い,記述してきたかについて概観する.その前史として,江戸期までの本草学,西欧近代動物学の導入・受容と呼応して誕生した明治期の昆虫学,そこから実践的な課題解決を目指す領域として登場した応用昆虫学,食糧確保の方策や「救荒食」を扱った食物学や栄養学等,アカデミズムが昆虫食にどのように言及してきたかをたどる.
キーワード:昆虫食,昆虫学者,動物学者,生命科学史,日本科学史

水野壮:持続可能な社会における昆虫食の役割とその普及活動……151
 2013年5月にHuisらが国連食糧農業機関(FAO)より発行した報告書「Edible Insects-Future Prospects for Food and Feed Security-(食用昆虫‐食料および飼料の安全保障に向けた未来の展望)」(以下FAO報告書)は,日本においてもテレビや新聞など各種メディアに取り上げられ,昆虫が食料として有望であることが広く人々に周知されることとなった.本稿では,昆虫がどれだけ有望であるのか,今後どういった形で昆虫食が日本や海外に普及していく可能性があるのかを,FAO報告書を中心とした文献やこれまでの著者らの実践活動を紹介しながら論じたい.
キーワード:昆虫食,国連食糧農業機関,プチジビエ

シャーロット リバーティ ルッツ ペイン:昆虫食国際会議に出席して……164

シャーロット リバーティ ルッツ ペイン:食用昆虫のドメスティケーション……166
 長い進化の歴史の中で,ヒトは昆虫を収穫し続けてきた.しかし,人間の収穫活動は,他の霊長類のような機会依存的な採取の仕方と大きく異なる.ドメスティケーションを最も広い意味で使えば,人間は過去数千年間にわたって昆虫をドメスティケートしてきたといえるが,ドメスティケーションという概念は学問分野によって解釈が異なる.本稿は,昆虫のドメスティケーションを生物学的かつ歴史的見地で 検討し,地球上での人間と食用資源としての昆虫の関わりを概観する.完全なドメスティケーションと完全なワイルドとの間のギャップを網羅するために,四つの段階的なカテゴリーを使うことにする.各カテゴリーについて,筆者がコンゴ民主共和国やジンバブエ,あるいは日本で行ったインタビューをもとにしたケーススタディーを例として述べるとともに,各カテゴリーにおける人間と昆虫との生態学的関連を議論する.最後に,食用昆虫のドメスティケーションが導きだす研究上の問いを整理し,今後優先すべき研究課題を提案して,この分野のさらなる発展に供したい.
キーワード:昆虫食,食用昆虫,ドメスティケーション,ミニライブストック

野中健一:昆虫食の民族誌……177
 昆虫を食べることは,自然環境と人間との関わりあいの中で生じ,歴史的に構築されてきた文化である.この小文では昆虫食が生活の中でどのように成り立っているか,また,住民の自然に関する知識・技術や価値観を,文化研究の学問分野において解明する視点と課題を述べる.
キーワード:文化,人類学,地理学,民族昆虫学

書評—『40年後の「偶然と必然」―モノーが描いた生命・進化・人類の未来』『ミクロの森』『日本の水族館』


English_conents

Kaoru Kubokawa:Foundation of zoology in amphioxus(129) Special feature:Insects as human foods
Yumoto Takakazu:Introduction(130)
Watanabe Hiroyuki:Edible insects as one of non-wood forest products(133)
Mizoguchi Hazime:Japanese entomologists and insect eating:a historical sketch(141)
Mizuno Hiroshi:The role and our current promoting activity of entomophagy in the sustainable society(151)
Charlotte L. R. Payne:A brief overview of the first international conference on entomophagy(164)
Charlotte L. R. Payne:The ‘Domestication’ of Edible Insects(166)
Nonaka Kenichi:Ethnographic study of insect eating(177)
Book review(190)


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