特集:サンゴの生物学 上
●巻頭言:人間らしさ(浅見崇比呂)……193
●大久保奈弥:概論 サンゴとさんご礁……194
『海はあらゆる生命体の母体であり、巨大な子宮であった。(中略)海はただ生命をはぐくんだばかりではない。それはまた、いくつもの民族を、いくつもの文明をも育んだ。(中略)海はまさしく文明の母体でもあった(沓掛 2009)。
●深見裕伸:分類と系統 有藻性イシサンゴ類における分類体系改変の現状2015……201
分子系統と形態形質の両方の解析が進んだことにより、この10年の間にイシサンゴ類の分類体系の大幅な改変が行われている。しかし、多くの研究者はその急激な改変に追いついていないのが現状である。また、これらの改変は、研究者が対象生物としている有藻性イシサンゴ類の科や属に関するものであることから、その影響は大きいと考えられる。そこで本稿では、有藻性イシサンゴの分類と系統について、問題点を指摘しつつ、現時点での最新の変更状況を紹介する。
キーワード:分子系統、形態、同定、造礁サンゴ
●識名信也・張清風:配偶子形成 サンゴはその身体のどこでどのように精子や卵をつくるのか……216
本稿では、造礁サンゴのナガレハナサンゴEuphyllia ancoraをモデルとして、サンゴの配偶子形成について概説した。また、配偶子形成に影響を与える内的・外的環境要因について、近年の報告を交えながら要約した。さらに、筆者らの報告を中心に、サンゴの配偶子の起源について記載した。
キーワード:精子形成、卵形成、生殖幹細胞
●目﨑拓真:放卵放精・幼生放出 フィールド研究から見た日本におけるサンゴの産卵……228
サンゴの有性生殖には放卵放精型と幼生放出型があり、放卵放精型の配偶子放出を一般的に「サンゴの産卵」と呼び、日本国内では4月下旬から10月の期間で日没から数時間以内に多くの産卵が見られる。日本国内で観察例が多いミドリイシ属サンゴは、亜熱帯のサンゴ礁域では満月前後数日間に、高緯度域では下弦から新月にかけて産卵が集中する。一方、ミドリイシ属の種レベルでは上記以外の月齢で産卵したり、同種でも海域によって異なった月齢で産卵したりと、月齢と産卵の関係は不明な点が多い。
キーワード:サンゴ群集、高緯度、有性生殖、産卵、月齢
●書評―『帰化植物の自然史【侵略と攪乱の生態学】』『魚類行動生態学入門』『Freshwater Crayfish : Global Overview』『遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界━地球上で最も繁栄する生き物の起源から進化の5億年』
●浅川満彦:“アサ”の書評ワールド
●『生物科学』投稿の手引き
Asami Takahiro : Which is more humanly unique? (193)
Special feature : Coral biology part T
Okubo Nami : Introduction : corals and coral reefs (194)
Fukami Hironobu : Taxonomy and phylogeny : recent taxonomic revision of the zooxanthellate scleractinian corals (201)
Shikina Shinya and Chang Ching-Fong:Gametogenesis of reef-building corals (216)
Mezaki Takuma : Coral spawning, from the viewpoint of field research in Japan (228)
Book review (242)
Asa’s world of book review (248)
Instructions to authors (252)
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