北方特産魚、オショロコマ(イワナ魚類)の
養殖飼料におけるネッカリッチの添加効果

赤平フィシュセンター
 水産学博士 寺尾 俊郎
平成5年10月

1.試験目的

2.試験方法

3.試験結果

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1.試験目的

 木酢液木炭粉末剤のネッカリッチ淡水魚養殖用飼料添加剤としての使用効果については、北海道産赤平サーモンのニジマスや宮崎県産一力ネッカウナギのウナギ等の特産品で優れた効果を示していることが知られている。

 そこで、さらに北海道の内陸の在来種で道東の然別湖の天然記念物に指定されており、しかも魚肉質も美味であり、将来北海道国産魚としてヤマメ、アユと並んで使用されることが、期待されている。

 そのため、魚肉質がすぐれた特産魚オショロコマを養殖育成するためネッカリッチ3%を飼料に添加した効果について試験を行ったので報告する。


2.試験方法

 (1) 試験期間:1993年5月11日から6月28日までの48日間

 (2) 供試魚 :北海道深川市山水園養殖場産オショロコマ1年魚で魚体重55g〜80gのもので対照区と試験区の二群。

 (3) 飼育水槽:FRP 長方形水槽1000リットル容量のもので水深70cmとした。

 (4) 用水量、水温:湧水流水量1分間30リットルとした。水温は8±2℃である。

 (5) 試験餌料:乾燥配合はオリエンタル酵母工業社製ペレット育成用4(径3.2mm)で、総合ビタミン剤は武田薬品社のマス用のフィッシュエイドCで、油脂のフィードオイルオメガとイカ肝油は日本化学飼料社のものである。

魚肉赤色及び体表面の赤色斑点の着色剤のカロフ‐イルピンクは日本ロッシュ社のものであり、また、ネッカリッチは宮崎みどり製薬社のもので、各飼料区群の添加配合比率は第1表の通りである。

 (6) 給餌方法:給餌率はニジマスの給餌率表によったが、各試験区の総体重の1.4〜1.6%であった。給餌回数は一日2回とした。


3.試験結果

オショロコマ1年魚養成用飼料に木酢液木炭粉末剤ネッカリッチを3%添加した

(1) 成長について

 試験期間48日間の総増重量は対照区群では3,682g(100%)に対して試験区群では4,431g(120.34%)であり、その差は749gで20.34%が見られた。
 また、日間平均成長率は対照区群は0.64(100%)に対し、試験区群では0.76(118.75%)で18.75%、試験区群が優れた結果を示した。

(2) 生残率

 対照区群、試験区群ともいずれも良好な結果を示し、差異は見られなかった。

(3) 餌料効率

 試験期間中の餌料効率は対照区群では52.6%(100%)に対して、試験区群では63.3%(120.34%)で、その差異は20.34%で試験区群が優れて良好であった。

(4) 魚体の健康度

 摂餌行動、遊泳行動共に明らかに対照区群より試験区群が優れて、活発であった。

 生理的健康度を肥満度、血液性状のヘマトクリット値と血漿蛋白量で第3表に示した。その結果は肥満度、ヘマトクリット値、血漿蛋白量共に対照区群より試験区群が明確に良好な値を示した。

(5) 魚体の外観と体表赤色小斑点の状況

 魚体の側線部から腹部にかけての銀白色の出現状況及び体表の鱗の組織の肥厚状況共に対照区群より試験区群が著しく優れていた。

 また、オショロコマ特有の体側の側線部より腹部にかけて径2$の赤色の小斑点の出現状況は対照区群より試験区群の赤色がやや鮮明に出現した。

 また、斃死後も赤色の小斑点の鮮明度が消失し難くなった。

(6) 魚肉赤色色素の着色状況

 魚肉の赤色着色状況は飼料中に添加したカロフィールピンクのアスタキサンチン色素とフィードオイルの沈着により行われたが、その赤色はむしろ橙色であったが、対照区群よりも試験区群が優れていた。

(7) 魚肉生産飼料単価

 オショロコマ1年魚を育成して1$の魚肉を生産する経費の生産費は各飼料費に飼料係数を乗じて算出したが、対照区群は511円97銭(100%)に対して、試験区群は444円24銭(86.77%)となり試験区群が67円73銭、13.33%の生産費を軽減された。
 この結果からネッカリッチ3%添加した経費は1$の魚肉生産費に占める費用は25円前後であり、そのことにより67円73銭が増収となり、ネッカリッチの費用の約2.6倍の効果があった。

(8) 魚肉の食味覚

 魚肉の中の脂肪の沈着度、魚肉の締まり具合、肉の硬さ、淡水魚の臭み及び味覚等いずれも対照区群より試験区群が優れていた。