「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2004年9月号
 

食農教育 No.36 2004年9月号より
[特集]食育で校区が元気づく―高知からの発信―

教材への切り口 ナタネ

ナタネはどんな植物か

(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 野菜茶業研究所 石田正彦

〔菜の花とナタネってちがうの?〕

●ハクサイ、キャベツも菜の花

在来ナタネの花 西洋ナタネの花
在来ナタネの花   西洋ナタネの花  
ハクサイの花 キャベツの花 カラシナの花
ハクサイの花 キャベツの花 カラシナの花

 菜の花は春になると公園や河原でよく見かけるが、植物学的にはナノハナという植物はなく、4枚の花弁が十字形に配列した黄色い花をつけるアブラナ科アブラナ属のアブラナや西洋アブラナの花の俗称である。菜類(アブラナ)の花という意味であり、ナタネの花を指すことが一般的であった。しかし、現在ではアブラナ属の黄色い花の通称となっており、このためアブラナに属するハクサイやカブ、コマツナ、ノザワナなどの野菜の花や、カラシナ、キャベツ類も菜の花と呼ばれることもある。

●ナタネは菜類の種子

 ナタネは古くから俳句や唱歌で親しまれているが、こちらも植物学的にはナタネという植物は存在せず、アブラナや西洋アブラナの中で搾油用に子実を利用する作物の名称である。元来、ナタネ(菜種)は菜類(アブラナ)の種子という意味で、菜の花と対で使われた。

〔ナタネを育てて種をとる〕

●ナタネの栽培暦

ナタネの栽培暦

●畑の準備と種まき

〈畑の条件〉

水はけがよく、土が肥えている畑がよい。ナタネやアブラナ科の野菜を、1〜2年栽培していない畑を選ぶ。連作すると病気が出やすい。

〈施肥〉

1m2当たり堆肥1.5kg、苦土石灰0.1kgをまいてよく耕す。さらに種まき前に、1m2当たり化成肥料60〜80gまき、土とよく混ぜておく。

〈種選び〉

種まきの適期を守り、地域に合った品種を選ぶ。東北以北ではキザキノナタネ、関東以西ではナナシキブ、オオミナタネが適している。

種まきは雨のふる前がよく、種まき後の水やりは不要。種をまいたら薄く土をかける。

種まき 種まきは雨のふる前がよく、種まき後の水やりは不要。種をまいたら薄く土をかける。

〈種の問合わせ先〉

カネコ種苗(株) 種苗の製造元なので販売店をご案内します。

●間引き

〈1回目の間引き〉

種まき後、2〜3日で発芽。本葉が2〜3枚の頃に、混み合っているところを間引く。

1回目の間引き

〈2回目の間引き〉

なばなのおひたし

なばなのおひたしナタネ用の品種でも、なばなとして食べられる。花芽が伸びてきたら、若い葉や花茎、花蕾を収穫する。

点まきの場合は、さらに本葉4〜5枚の頃に、成長が悪かったり、病害虫におかされたりしている苗を間引き、最終的に1本立ちにする。

2回目の間引き

発芽後に、カブラハバチ、春以降に、アブラムシ・コナガが大発生することがあるので、そのときは農薬で防除する。

●追肥

花芽が伸びる頃、1m2当たり大さじ3〜5杯の化成肥料を追肥する。

追肥
花芽が伸びる頃、1m2当たり大さじ3〜5杯の化成肥料を追肥する。

ナタネ用の品種でも、なばなとして食べられる。花芽が伸びてきたら、若い葉や花茎、花蕾を収穫する。

収穫・調製

(1)収穫

収穫期は、主茎についている穂の中間部のサヤを割り、半分以上の種子が黒く色づいた日から約10日で、枝やサヤが枯れ上がってきた頃が目安。

収穫
収穫期は、主茎についている穂の中間部のサヤを割り、半分以上の種子が黒く色づいた日から約10日で、枝やサヤが枯れ上がってきた頃が目安。

   

(2)乾燥

梅雨の晴れ間をねらって、早めに収穫作業をしたら乾燥する

a.地干し コンクリートの上で、5〜6日干す。

地干し

b.立てかけ干し ガードレールに立てかけて、ビニールでおおって干す。

立てかけ干し
   

(3)脱粒

サヤがはじけるようになったら、シートをしいて、ナタネを積み上げ、靴のまま踏んだり、棒でたたいたりして、種を出す。

脱粒
   

(4)選別

種が出たら、ふるいにかけて、茎や葉など、よけいなものを取り除く。扇風機の風で、ゴミを飛ばしてもよい。調製した種子は、天日でよく乾燥させておく。

選別

自動車の重みで圧搾する
事故がないよう十分注意!

〔油を搾って使ってみる〕

●自動車の重みで圧搾する

 ナタネの種を収穫したら、ナタネ油を搾ってみよう。本格的に搾るには、専用の搾油機が必要だが、効率は悪いが左図の方法でも油を搾り出すことができる。

〈材料の準備〉

(1)ナタネの種を準備し、あらかじめゴミなどを取り除いておく。

(2)フライパンに種を入れ、種の中身が薄い黄色から濃いオレンジ色に変わるまで、トロ火で焦がさないように混ぜながら、1時間ほど煎る。

(3)焙煎した種をすり鉢に入れ、黒い種が黄色くつぶれるまでする。フードプロセッサーに入れて、荒く挽いてもよい。

(4)すった種を木綿のふきんにくるみ、蒸し器で30〜40分蒸す。サラサラだった粉がベトベトになる。

<搾った油の調整>
搾った油の調整
油を搾った後の油粕は、野菜や草花の肥料として利用できる。

●搾った油を使う

食用油として

[食用油として]

 搾った油が少量ならフライパンにたらして、お好み焼き、ホットケーキなどを焼いてみる。多く搾れたら、手搾り油と、市販のなたね100%のサラダ油とで、天ぷらを揚げ、食べくらべてみよう。

灯明用油として

[灯明用油として]

 小皿に搾ったナタネ油を入れ、タコ糸3本をきつくより合わせた灯心をつけて、その先に火をつけ明かりにする。暗いところで使って、どのくらいの明るさか確かめてみる。江戸時代、ナタネ油は、ほとんどこの用途で使われた。

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