「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2004年11月号
 

食農教育 No.37 2004年11月号より
[特集]農家に学ぶ「いのちの授業」

夏の栂池・食農教育講座

栂池高原の朝の散歩。
栂池高原の朝の散歩。北アルプスをバックに、朝の光を浴びながらバンザイ!(栂池センター支配人 土屋清美撮影、以下*も)

あなたは何を学んだ?

農文協・つがいけ食農学習センター(長野県・小谷村)

 3年目を迎えた「信州・つがいけ食農学習センター」での「食農教育講座」。この夏も全国の教師たちが集い、食と農の「体験」と「座学」に取り組んだ。今年はさらに、参加者が自分たちの実践を「交流」し、深め、励まし合えたのが大きな成果。体験・座学・交流の3本柱で、体も頭も働かせながら、心も温め合った今年の講座、写真と感想からそのようすをお伝えしよう。

 

●実践交流

 「皆さんと交流ができ、勇気づけられました」(小学校教員)、「先生方のさまざまな実践を伺うことができたのが一番の収穫でした」(小学校教員)。

 教員研修というと、一方的に講話を聞くだけかと思いきや、そうではない。全国から個性あふれる先生方が集合するまたとない機会。キャンプファイアを囲んで、火を見つめながらそれぞれの実践と思いをぶつけ合ったり、立教大学奈須正裕先生にアドバイスをもらったり……。仲間を増やし、自分の実践を見直す契機となった。

参加者の実践を真剣に聞き入る

参加者の実践を真剣に聞き入る

栂池自然園で休憩

栂池自然園で休憩しながら会話が弾む

●ソバ打ち体験

 「そば打ちの簡易な方法、ソバを生活へ生かす方法、生活のなかに生きるソバを体感することができました」(小学校教員)、「うどんのほうが好きだったけど、ソバづくりや話を聞いて、ソバってとってもすばらしいものだと知り、少し深めたいと思いました」(保育園栄養士)。

粉を科学する「大久保流」

粉を科学する「大久保流」、地域自然と伝統に裏打ちされた「昔流」。2つのまったくちがうソバ打ちを経験して、参加者たちはソバの魅力にとりつかれた(*)

打つだけでない

打つだけでない。ソバから子どもたちに何を伝えるのか? 農家のお母さんたちと食農教育のテキストづくりに取り組む池田玲子氏によるうんちく講座も大好評だ(ソバ畑にて)(*)

ソバ入りおやき
地元小谷村のお母さんグループ(味な会)から、「ジャガイモおやき」や「茶の子」と呼ばれるソバ入りおやきを教わる(*)

●おやきづくり

 「たんなるクッキングスクールではなく、時代背景を語っていただけてよかったです」(小学校教員)、「その地に暮らし生きている人から、その地に根ざした食をご紹介してもらい、実習できたことが印象深いことでした。最近とみに実物(本物)をクラスに持ち込むことの重要さを痛感しているのですが、私も本物に触れ、また、それにたずさわる方々の生きざまに触れられたことが一番の収穫でした」(小学校教員)。

●それぞれの想いを胸に

永田栄一氏
標高1800m地点までロープウェイで登り、栂池自然園を歩く。永田栄一氏が高山植物の名前を解説

 

 「情報はいろいろな方法で集めることができますが、実際に体験できたことは貴重でした」(小学校教員)。

 「生活科や総合の学習に対して自分の考えていたことに自信がもてるようになりました」(小学校教員)。

 「食と農を追求していくことこそ、人間らしく生きていくための原点だと考えます。厳しい教育現場のなかで、あきらめることなく、これから出会っていく子どもたちに、食と農の文化を折に触れて語っていきたい」(小学校教員)。

 「参加者は圧倒的に小学校の教師が多く、徐々に『食農教育』が進んでいるようすがわかってうれしく思います。反面、中高の参加者が少なく、普通高校で『食農教育』を進めるのが難しい状況なんだと思わされました。中等高等教育の中でさらに『食農』が広まるように何かできたらと思いました」(中高教員)。

永田栄一氏 永田栄一氏
栂池センターの畑で収穫体験。「自分が食べられる分だけ収穫してください!」(*) 親子での参加者も。土を耕してくれるミミズはどこだろう?(*)
一斗缶炭焼きの実演
一斗缶炭焼きの実演。「煙の色が変わるからね、これがポイントだよ」と講師の服部正利氏
永田栄一氏 永田栄一氏
塩の道を歩く。約2時間の道のりで、植物観察と歴史散策 食事に使われた野菜はセンターの畑で穫れたものばかり(*)

 

 おもなメニュー

 第1回(8月6日〜8日)

 立教大学・奈須正裕氏の講話、伊那小学校の伊藤道彦氏のイネの実践報告、ソバ打ち、一斗缶炭焼き、燻製、野草のてんぷら、野菜の収穫、野外パーティーなど。

 第2回(8月23日〜25日)

 上越教育大学・小林毅夫氏の講話、元農業高校教諭・永田栄一氏の教育実践、狛江第二小学校・田揚江里氏のゴマや豆腐の実践報告、塩の道を歩く、栂池自然園を歩く、おやき・五平餅づくり、ワラ加工、ボロ(布)織りなど。

 ※つがいけセンターでは、修学旅行や移動教室での体験プログラムも受け入れています
TEL:0261―83―2304

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