「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2005年7月号
 

食農教育 No.42 2005年7月号より

田んぼの草が生え、浮き草もふえてくる

簡単! ミニ田んぼビオトープ

トロ箱を使って生きもの集う稲つくり

元日本農業教育学会会長 向山 玉雄

▼トロ箱が教材の価値を変える

苗を育てる
ポットに種モミをまく
(1)4月中旬、ポットに種モミを4〜5粒まく。土は、園芸店から培養土を買ってくる
水管理する
(2)芽が出たらプランターに入れて水管理する。
トロ箱に移植(田植え)する
(3)苗が5葉に育った5月中〜下旬にトロ箱に移植(田植え)する。

 5年ほど前、千葉県佐原で、15年間、無農薬・無化学肥料で不耕起栽培に取り組んでいる田んぼに行った。このとき、田んぼの周囲の水路に泳ぐおびただしい数のメダカや、手ですくいとれるほどのタニシにびっくり。稲の根が、慣行栽培のものに比べて太く新鮮なことに驚かされた。そして稲と生きものを同時に学べる教材として、トロ箱ミニ田んぼのあることを知った。

 トロ箱ミニ田んぼを観察しながら、本物の田んぼや稲(米)に想いを馳せれば、単なる栽培体験から環境問題へと思考がつながることを知り、それからこの教材に取り憑かれてしまった。容器をバケツからトロ箱(鮮魚店などで使われる発泡スチロールの箱)にかえるだけで、教材の価値はまるで違ったものになる。

▼生きものを育むトロ箱

 発泡スチロールは断熱効果が高く、真夏の高温期にも温度上昇をおさえることができ、冬は水温が下がりにくい。稲の周りに田んぼの環境に近い場を確保できるので、生きものが住みやすくなる。

トロ箱ミニ田んぼの準備 ヒント バケツ稲をトロ箱に移すだけでも
生きものが集まってくる。
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(1)生きものがいる田んぼの稲株、土、稲わら(ミニ田んぼビオトープキット。19頁参照)をもらってきた。 (2)約45×30×20cmのトロ箱(発泡スチロールの箱)を用意する。
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(3)前年の稲株を植え込む。 (4)わらをばらまく。
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(5)水を入れる。 (6)古株をはさんで2株の苗を移植(田植え)する。

▼生きものが集まる

 ミニ田んぼに入れる稲株、土、わら(19頁参照)に潜んでいた生きものがそのまま出てくる。農薬や化学肥料を使った田んぼのものからは、生きものは発生しない。また、トロ箱ミニ田んぼを置く場所(地域)の環境により、生きものの発生の仕方は違う。

 最初はミジンコ、浮き草、コナギ(田の草)が発生し、イトミミズ、タニシの子どもなども出てくる。さらに、蜂などの昆虫が、水飲みにやってくる。

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▼メダカとサヤミドロ

 絶滅危惧種に指定されているクロメダカを、トロ箱ミニ田んぼの生きものにする意義は大きい。稲の成長だけでなくメダカの成長や繁殖を観察するのも楽しい。4、5匹のメダカは藻やミジンコなどを餌に自然繁殖する。餌はやらない。餌をやると飼育になるからだ。また、メダカは地域を越えて移動させてはいけない。

 トロ箱ミニ田んぼでは、メダカを入れないと、ボウフラが発生することがあるので、入手しやすいヒメダカでもよいので、メダカを放したい。

 「サヤミドロ」は広辞苑にも出ている。ミニ田んぼには必須の生きもの。陽気とともに緑が濃くなり、炭酸同化作用をして細胞分裂でふえてゆく。陽射しが強いときは、気泡をいっぱいつくり、酸素を水に供給し浄化するのを肉眼で観察できる。

▼トロ箱ミニ田んぼの効用

 トロ箱ミニ田んぼの稲から本物の田んぼに、そして、その環境へと自然に目が向く。バケツ稲で環境を考えようとしても、取ってつけたように不自然になる。田んぼ・稲・生きものの3つが観察対象になるので、観察するのが楽しくなる。トロ箱ミニ田んぼは分校で、年1回、本物の田んぼ(本校)に行き、農家と交流すれば、楽しさが倍加する。毎日、ご飯を食べながら、田んぼの様子を思い浮かべるようになりたい。

1 2
(1)トロ箱に移植(田植え)直後のミニ田んぼ。バケツ稲と比較しても面白い。 (2)地域のメダカを譲ってもらう。
3 メダカ
(3)田植えがすむと、ミジンコ、イトミミズなどが発生。田んぼの草が生え、浮き草もふえてくる。右は、サヤミドロの間を泳ぐメダカ。
4 5
(4)校舎前に並べて生きものや稲を観察する。 (5)6月、サヤミドロが繁茂するようになる。すると、サヤミドロがブクブクと酸素を放出する。
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(6)本校で本物の田んぼを見ながら、稲の勉強。 (7)冬のトロ箱ミニ田んぼは水を入れたまま(冬季たん水)にする。メダカもそのまま越冬。

ミニ田んぼビオトープキット

 今年度の申込みは締め切ったが、来年度も実施する予定。

【1個分の内容】去年の古株、わら、田んぼの土、有機質の肥料(微粒米ぬか)、不耕起栽培用の成苗(17頁参照)

【価格】1セット(ミニ田んぼ10個分)4500円(税込み)送料別

▼申込みは、左記の「田んぼ博士の応援隊」のホームページで。
http://www.tanbohakase.com/

▼問合せ先 日本不耕起栽培普及会&田んぼ博士の応援隊 事務局

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