食農教育 No.43 2005年9月号より
実験・観察
目・鼻・手で
「生きた土」を感じよう編集部
いまの子どもに、「土は生きているんだよ」と言葉で伝えても、ピンとくる子はまずいない。そこで、こんな実験をしてみてはいかがだろう?
近くの山に出かけて、表層の腐葉土をバケツ一杯もってくる。米ヌカ、オガクズをやはりバケツ一杯ずつ用意しておいて、それらを手でこすり合わせるようにして混ぜ合わせたあと、水分が約60%になるように水をかける。できたものを、通気性のよい樹脂袋(または紙袋)に入れて日陰においておく。すると――。
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「あちちっ! 先生、温かいっていうよりも、熱いよ!」「納豆のニオイがする!」。
東京の青梅市立河辺小学校では、今年、「森林大好き!」というテーマで6年生の総合的な学習を行なっている。9月には、一人一本ずつ育てているクヌギ、ミズナラ、コナラの苗木を足尾銅山に植樹する予定だ。そこで、森林がつくる土とはどういうものかを実感するために、冒頭のような実験をした。
7月12日の3〜4時限目に仕込んだところ、さっそく翌朝には変化が現われた。25℃だった温度は46℃まで上がり、中から甘酸っぱいニオイが広がった。「仕込みの段階でも、発酵という言葉はいっさい使わなかったのに、子どもたちは納豆のニオイだと言い当てていましたよ」と北村充全先生。
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味噌やどぶろくをつくる人は、身の回りに微生物が存在することを肌で感じている。逆に経験のない人にとっては、知っていても実感できない世界の一つだ。腐葉土を使ったこの実験、もともと食べるものではないので、細かなさじ加減は必要ない。誰でも簡単に、目と鼻と手の感覚で、微生物の存在をつかみとることができるだろう。
〈手 順〉
(1)手でこすり合わせるようにして混ぜる (2)微生物による好気性発酵にもっともよい、水分60%になるよう、水道水を混ぜる (3)片手で握っておにぎりができ、軽く押すとバラッと崩れるくらいの水分(60%)をめざす (4)樹脂袋に入れて封をする (5)翌日には、表面が白いカビで覆われ、納豆のようなニオイが……
実験では、杉山で集めた腐葉土のほか、砂場や校庭、学校農園の土を使ってその違いを調べた 数日間、温度を記録。それほど違いは現われなかったが、微生物が貧困と思われる校庭の土では、スタートがやや遅れる。また、腐葉土、畑の土は50℃前後のやや高温で推移した。
温度のほかに、もとの土と見比べたり、簡易透水器を使って水の流れる速度を比べたり(7月号40頁参照)、発酵肥料として使い、野菜の生育のちがいを調べてみてもおもしろそうだ
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