「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2005年9月号
 

食農教育 No.43 2005年9月号より

紙コップにカイコのうんちを集めて、自分のアサガオに肥料として置いてやる。桑の葉の栄養がぎっしりつまっているはず

実感! 土のパワー

校内にあるゴミ・クズを
上手に使いこなすには?

なんでもマルチで土はふかふか、生命ぐるぐる

▼汲田喜代子

抜いた草を畑の畝にかぶせるだけ

「抜いた草は応援団!」。草ひきをした草は、そのままポップコーンの株元へかぶせてあげる
「抜いた草は応援団!」。草ひきをした草は、そのままポップコーンの株元へかぶせてあげる

 「抜いた草は応援団!」。1年生の子どもたちが、畑や花壇で草ひきをするときの合い言葉です。子どもたちは、小さな草でも大きな草でも、抜いたときには必ず、草マルチの上や育てている植物のそばにその草を置いています。

 草マルチ(緑肥マルチ)は、乾燥防止、雑草の堆肥化による土壌改良、雑草抑止などの目的でしていますが、この作業でなにより大切にしているのは、子どもたちが育てている植物への愛情。それに加えて、理由あって抜き取られたり、刈り取られたりする植物の命を意識化するために、それらの植物の命を、自分が育てている植物の命の源として託すことによって、たんなる栽培活動ではなく、生命の学習へとつなげたいという思いがあります。

家庭からも雑草を集める!

 3年前、高知市立横浜小学校へ赴任したときに1年生に割り当てられた中庭の花壇の土は、硬くゴツゴツでした。「たくさん堆肥を入れて、土壌改良しなくては!」。

 はじめはバーク堆肥などの市販の堆肥を混ぜ込んでどうにか中庭菜園をつくりましたが、その後も、「刈り取った草を中庭にください」と言っては、ふだんならゴミとして出される刈り草や剪定した木の若枝をもらい、ポップコーンやトマトの畝へどんどんかぶせていきました。

 草マルチの効果を聞きつけた他の学年も草マルチをし始めたので、草を確保するために、「お家からも草を持ってきて!」と学年通信でも呼びかけました。山盛りの雑草をビニール袋に入れて学校に持っていく1年生。保護者には、「いったいなに?」と思われたでしょう。生活科の活動に保護者の関心が集まったのは、意外な効果でした。

落ち葉、カイコのうんち、アサガオの花柄も回り回って……

 秋には桜やイチョウの落ち葉拾いをしました。もちろん、落ち葉だって応援団です。集めた落ち葉を青シートに移し、「落ち葉のふとん!」「落ち葉の雨!」とひとしきり遊んだあとで、少し大きくなり始めたダイコンやカブの畝へ落ち葉マルチをしました。

 継続的な草マルチや落ち葉マルチのおかげで、土が驚くほどふかふかにやわらかくなったのを、この春、小型の耕耘機で耕すときに実感しました。

 本年度、子どもたちが一学期に飼育していたカイコのうんちも、アサガオの応援団になりました。咲き終わったアサガオの花柄が次に枝豆の応援団になりました。枝豆が収穫できたら、その株や食べ終わったあとのサヤも、今度はだれかの応援団になる予定です。(高知・高知市立横浜小学校)

ゴミ回収される落ち葉、剪定枝をチッパーシュレッダーで粉砕処理

▼鮫島 真一

屋根付きの堆肥舎で乾燥させた落ち葉をチッパーシュレッダーで粉砕
屋根付きの堆肥舎で乾燥させた落ち葉をチッパーシュレッダーで粉砕

 現在、鹿児島市の小中学校の大半は、校内の落ち葉をビニール袋に入れて、ゴミに出している。その理由としては、センダン、カイヅカイブキ、クスノキなど学校に植えてある樹木の種類が腐葉土に適さないこと、腐植するのに手間と時間がかかることなどが挙げられる。しかし、秋にもなると毎日出る落ち葉の量は相当なもので、私の学校では一日にビニール何袋にもなる。

 そこで、質は落ちるが、やはり学校で出たものは学校で再利用することにし、その過程を環境教育に位置づけた。購入したのは果樹園で使われるチッパーシュレッダー(※)である。これは、小枝や葉を細かく砕き、体積を6分の1以下にしてくれる優れもの。これで落ち葉を細かくし、分解の速度を速めようというねらいである。

大量の落ち葉が20日で腐葉土に

体積は6分の1以下に。剪定枝ならなお効果が高い
体積は6分の1以下に。剪定枝ならなお効果が高い

 以下が作業手順と処理結果である。

(1)掃除時間に集めた校内の落ち葉を屋根付きの置き場で乾燥させる。

(2)チッパーシュレッダーにかけ、葉を細かく砕く(20リットル袋40袋が、6〜7袋に)。

(3)(2)に米ヌカ、ワラ(もしくは、落ち葉から採取した土着菌、22頁参照)、50〜100倍に薄めた糖蜜水を混ぜる。おおよその分量は、落ち葉10に対し、米ヌカ3、ワラ1(土着菌なら0.5)。糖蜜水は水分60%(手で握って固まり、開いて親指で軽く押せば、パラッと崩れる)になる程度の分量。

(4)5日ごとに3回切り返す。

(5)20日後に腐葉土ができあがるので、緑化に活用する。

 ふつうに落ち葉を発酵資材と混ぜ合わせた場合に比べ、うんと速く腐葉土になる。注意点としては、

・葉は乾いた物を使うこと(湿っているとシュレッダーが詰まる)。

・発酵が始まったら、雨や雪にあてないこと(発酵が途中で止まる)。

・機械の取り扱いには十分注意すること(児童にはけっして機械操作させない、落ち葉を挿入口まで運んだり、できたチッパーを発酵資材と混ぜ合わせたりする作業をさせる)。

剪定枝も校内で再利用したい

 以上、落ち葉の処理のみを書いたが、奉仕作業や職員作業などで出る剪定枝については、果樹園用の機械なのでさらに処理能力が高い。しかし、葉のようにすぐに分解しないので、いまのところチップは隣接する森に撒いている。チッパーの小道や鉄棒や登り棒の下のクッションにするなど、再利用の方法を検討中である。よいアイデアがあれば教えていただきたい。

 自分たちのゴミは自分たちで処理するという実践的な環境教育として、これからもチッパーシュレッダーにはがんばってもらわねばならない!

(※)新ダイワ製CSE50―W 処理能力300〜400kg/h(定価30万7000円)を購入。家庭用のガーデンシュレッダー(4万円程度)に比べると格段に強力ですが、剪定枝処理にはパワー不足を感じます。もう一つ上のランクがおすすめか。(鹿児島市立鍠江台小学校)

学校のゴミ・クズ特徴を活かした簡単堆肥づくり

▼藤原俊六郎

 職員室や校庭からは、さまざまなゴミ・クズが出ます。当然、このなかには植物の栄養になるものもあります。それぞれのゴミの特徴をうまく活かして、学校園の土を豊かにしたいものです。

 乾燥型生ごみ処理装置を使って乾燥物を土と混ぜて肥料化することがもっとも衛生的でよいのですが、ここでは、お金も手間もかからない簡単な方法を紹介しましょう。(神奈川県農業技術センター)

●学校からでるゴミの特徴
表 学校からでるゴミの特徴


■プランターを利用して■

○使えるゴミ 茶カス、コーヒーカス、ペットのふん、枯れた花、弁当の残り

プランターを利用して

○方法
(1)プランターの中に土を1/3程度入れる
(2)その上に、茶カス、ペットのふん、などを入れる
(3)薄く土をかける
(4)これを繰り返し、いっぱいになったら、土を3cmほどかぶせる
(5)1ヵ月放置


○注意点
・ペットのふんは肥料効果が高いが、悪臭が出ることがある。そのため、ふんの上を茶カスやコーヒーカスで覆い、さらに土をかぶせるとよい
・枯れた花は数cmに切って入れる。土はかぶせなくてもよい

○使い方
・肥料成分が少なく、野菜は大きく育たないが、花ならよく育つ
・生育が悪いときは、化成肥料をひとつかみ混ぜる


■コンポスターを利用して■

○使えるゴミ
茶カス、コーヒーカス、ペットのふん、枯れた花、弁当の残り、シュレッダークズ、落ち葉、雑草、花壇の花のクズ

コンポスターを利用して

○方法
(1)穴を掘り、コンポスターを埋める。容器は10〜20cm埋めるが、中心部をさらに、20〜30cm掘り下げると、たくさん処理でき、効率的。
(2)ゴミと土を1〜2cm程度の層で、サンドイッチ状にすると分解がうまくすすむ
(3)いっぱいになったら1ヵ月ほど放置し、スコップで深く掘り起こしてかき混ぜる
(4)さらに1ヵ月置いておく

○注意点
・茎など長いものは10cm以下に切断する。
・容器は密閉構造になっているため、水分過剰で悪臭や虫が発生しやすい。対策として、乾燥した土をふりかける。
・シュレッダークズ(紙クズ)は水分を吸収し、炭素源の補給にもなるので、アンモニアの発生を抑え、悪臭を防ぐ働きがある。臭いゴミの上にシュレッダークズをかけ、その上から乾燥した土をふるとさらによい
・土の代わりに、枯葉や乾燥した草を入れても効果あり。水分調節に役立つとともに、枯葉の表面の微生物が分解を促進する。ゴミを入れたあと、微生物のエサとなる米ヌカを少しふりかけ、その上に枯葉を入れるとなおよい

○使い方
・学校園の堆肥として使える。そのまま植木鉢の用土としてもよい


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