「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2006年5月号
 
小浜市地図
飯田祐次先生

食農教育 No.48 2006年5月号より

■教材研究に、小論文指導に

『総合的な学習・食育CD-ROM』
こんなふうに使ってます

 教材研究が大切なことはわかっているが、大変な時間がかかる。総合的な学習の時間だけでなく、各教科の準備、給食指導、学級経営と、やるべきことは山積みだ。インターネットは便利だが、情報の信頼度がいまひとつ。そんななかで、効率的に教材研究ができるツールとして評判なのが「総合的な学習・食育CD−ROM」(以下、総合CDと略)。とくにこのCD−ROMのウエッビングマップが使えるという。実際にこのCDを活用している小学校と高校の先生に取材した。

イネの教材研究はウェビングマップから
自作のウェビングマップに応援団を書き込む

 総合CDのウエッビングを参考に、手づくりのウエッビングマップをつくっているのは島根県大田市立湯里小学校の飯田祐次先生。飯田先生は昨年度の総合的な学習の時間で、複式学級の5、6年生を担任、バケツイネを育てて研究するプランを立てた。教材研究ではまずイネのウエッビングマップを見て、教材性の全体像をつかむ。このマップを教材ノートの最初の頁に貼った。次のこのウェビングマップの自分が見ておきたい項目「バケツ稲」をクリックし、記事一覧から読みたい記事を選んで、読む。大部分の記事はhtmlファイルだけでなく、元の本や雑誌の記事と同じ体裁のPDFファイルも出ているので両方見比べる。

 次に自分でイネ(米)のウエッビングマップをつくる。総合CDのウエッビングマップから興味や関心のある項目をクリックしたり、本を調べたり、子どもとの活動を想像したりしながら項目を増やしていく。

 さらに、「項目」をにらんで「地域の先生」など、応援してくれる人たちの名前をそのすぐそばに書きこんでいく。「しめなわ」づくりなら○○さん、「お寿司づくり」なら○○さんなどと名前が入る。「お菓子」(「まき」=サルトリイバラの葉で餡を入れた米粉のもちをくるむ)なら○○さんなどと書く。あの人に応援してもらえば、こんなこともできると、どんどんイメージがふくらむ。

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お寿司づくり。応援団のおかげで活動が広がる

子どもたちはウェビングマップで自分の調べたいことを見つける

 ウエッビングマップは子どもたちもつくる。子どもたちの調べ学習は「みんなで研究」と「Only1研究」の二本立て。「みんなで研究」はクラスみんなで取り組む共通テーマで、イネの品種(赤米、黒米、コシヒカリ、ひとめぼれ、はえぬき、ササニシキ、日本晴)による生長の違いを栽培しながら調べた。「Only1研究」は、一人ひとりがテーマを決めて取り組むのだが、各自のテーマを決める際に、飯田先生は子どもたちに「どんなことやってみたい?」と問いかけ、「イネ」のウェビングマップをつくりながら、イメージをふくらませていった。最初は「ごはん」と書き、そこから「カレーライス」などと書く程度であっても、イネの勉強をすすめていき、お互いのテーマ案を知るなかで、栽培にかかわるものなど、項目がどんどん増えていく。飯田先生は子どもたちに、「比較をしながら観察できるものをテーマとするといいね」などとアドバイスする。した作業を通して自分のテーマを見つけていくことができる。

 こうして「雑草をぬかなかったら育ち方はどうちがうのか」「稲を水耕栽培することはできるのか」などのテーマが立ってくる。栽培を通して答えを出すと同時に「なぜ」そうなったのかを考える。学習が終わったときにもういちどウェビングマップを書くと、自分がそこで得たものを子ども自身が確認できる(総合CDに収録されている『いのちを感じるあそび事典』などの記事にはテーマ立案や「なぜ」を考えるヒントがたくさんある)。

 飯田先生の担任した湯里小学校5・6年生は第17回(2005年度)のバケツ稲づくりコンテスト(団体の部)で見事、文部科学大臣賞を受賞した。

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飯田先生自作の「米」のウエッビングマップ。パソコンで白い画面を出し、中央に小さなマルを描いて「米」という文字を入れる→左右中央を直線で仕切る→左上に「農業・環境」、右上には「くらし」という文字を入れる→それぞれの領域に属する項目を書き、関連するものを線で結ぶ。随時、項目を増やしていく。

小論文の指導でウェビングマップを活用

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川上一秀先生

 このウエッビングマップを小論文指導に役立てている先生もいる。群馬県立大泉高等学校の川島一秀先生が。川島先生は夏休みに、普通科、農業関連学科の大学進学希望者を対象に小論文執筆の指導をしている。小論文指導のポイントのひとつは、何となく書き出すのではなく、与えられたキーワードに合わせて、自分の書きたいテーマを整理し、論理的に文章を組み立てていく力を身につけさせることだ。

 川島先生はそのための手法として、キーワードにそってウェビングマップをつくり、頭の中を整理していく方法が有効だと考えている。まずキーワードにかかわる事項の全体像をつかみ、そこからどの部分をテーマとしてしっかりと取り上げるのかを選んでいくのである。

 まず、既成のウェビングマップを利用してつくり方を説明する。総合CDの「イネ」「サツマイモ」(これらがキーワードにあたる)のウェビングマップをパソコンで加工する。項目や線を段階的に消したものをつくり、中央にあるキーワードとそのまわりの主要な項目だけを残す。たとえば「サツマイモ」では、「育てる」「お年寄りにお話を聞く」の2項目だ。最後に中央のキーワードだけにする。つぎに順序を逆にして、項目の少ないほうから最初の加工前のウェビングマップまでを段階的に並べる。これで、少しずつ項目を増やしていき完成に至るまでの過程がわかる。4段階で示すのであれば、A4判の用紙に4分割して並べたものを生徒に配布する。総合CDのウェビングマップは、キーワードがなにじみやすいだけでなく、配置された項目名も理解しやすい言葉となっている。特に「サツマイモ」のウエッビングマップは小学校での実践がもとになって作成されたものだけにわかりやすい。これで無理なく、キーワードからウェビングマップをつくる方法を学ぶことができる。

 ウェビングマップのつくり方をわかったら、小論文のテーマさがしをする。ここでは「食料」をキーワードにしたウェビングマップを考えていく。

 「食料」から項目を増やしていくと、「トレーサビリティ」「輸入農産物」「遺伝子組み換え農作物」「環境保全型農業」「食品ロス」「農業の多面的機能」などの項目がでてくる。なるべく時代にビビットにかくわるような項目を見つけたい。食料全体のなかでの位置づけが見えていれば、なぜ、そのテーマを取り上げるのかということも自分ではっきりする。

 つぎに生徒たちが進学を希望する「医療・福祉」「農学・環境」「国際・歴史」などの分野でウェビングマップをつくり、そこから小論文のテーマを探していく。こうして800〜1000字の小論文を宿題として執筆してくる。生徒たちも、あらかじめテーマを検討してから執筆にかかるので、思いのほかスムーズに書けるという。

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川島先生がサツマイモのウエッビングマップを加工してつくったウェビングマップ作成の手順図

一挙にウエッビングを充実
「総合的な学習・食育CD−ROM」最新版完成

 このほどバージョンアップした「総合的な学習・食育CD−ROM2006」では2004年版に10だったウエッビングマップを一挙に25に増やし、すべての関連記事を精査するとともに、教科との関連も含めて、教材性にかかわるコメントを付した。

 また昨年の食育基本法の制定・施行を受けて2006年度から本格的に食育が展開されることから、食育にかかわる記事案内を新設した。

○教材研究・授業案づくりの素材
 ウエッビングマップ

 作物7(イネ、ダイズ、小麦、ソバ、サツマイモ、ジャガイモ、トウモロコシ)、野菜5(ダイコン、カボチャ、イチゴ、キュウリ、ブロッコリー)、食品3(砂糖、塩、牛乳)、工芸7(ワラ、竹、紙、ワタ、カイコ、ナタネ、草木染め)、その他3(ハーブ、柿、ミミズ)と一挙に充実。やらせてみたい活動、関連項目、教科とのつながりが人目でわかる。

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○食育をすすめる

 たとえば田んぼやバケツでイネの栽培したあと、とれたワラから納豆をつくる。「納豆づくり」から「ワラから始める手づくり納豆」を開くと、ワラから「つと」をこしらえて、煮たダイズを仕込む手順と、そこにこめられた先人の思いがよくわかる。「納豆づくり」にはワラ1本でもできる簡単な納豆づくりの方法や、よいダイズがとれなかったときの加工の知恵の記事も。「授業の実際・納豆の授業」には授業展開例が、「こだわり食品・ダイズ」にはダイズのさまざまな加工食品のレシピがある。

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