「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2006年11月号
 

食農教育 No.51 2006年11月号より

そこが知りたい 卵のQ&A

埼玉県農林総合研究センター 山上善久

Q. ニワトリは一生の間に、何個の卵を生むことができるのでしょうか?

A. 動物には春を繁殖季節とするものや秋を繁殖季節とするものがいますが、ニワトリは季節に関係なく一年中卵を生むことができ、周年繁殖動物といいます。そうはいってもメンドリが何年もの間、卵を生み続けるわけではなく、産卵を開始した最初の一年間は別として、二年目からは、秋から冬にかけて一ヵ月くらいをかけて羽根がぬけかわり、その間産卵が止まります。一個の卵がつくられるまでには二三〜二六時間を必要とし、一年間に一羽のメンドリから生まれた卵の個数としては、最高三六五個(産卵率一〇〇%)の記録があります。

 ニワトリの寿命は一〇〜二〇年です。そのうち継続的に卵を生む期間は七年間くらいでしょう。一年のうち卵を生んでいる期間は、換羽時期を除外した三三〇日(約一一ヵ月)、現在飼われている採卵鶏の産卵率を参考にして、一年目は二八〇個(産卵率八五%)の産卵個数とします。二年目以降の産卵率は、前年よりも一〇%ずつ減少していくものとして計算すると、ニワトリが一生の間に生む卵の数は一五〇〇個(二八〇+二五二+二二七+二〇四+一八四+一六六+一四九=一四六二)くらいです。なお、養鶏場で飼われている採卵鶏の場合には、三〇〇個から五〇〇個を生産した時点で、と殺されて肉になります。

※養鶏場で生まれる卵は、生まない日もあるので年間三〇〇個くらいと推定されます。二年目からは、一年に一回、羽根がぬけかわりますが、この時期には卵を生まなくなります。そこで、毎年三五日間は卵を生まないことにして、七年間に生むと思われる卵の個数を計算してみました。

Q. 新しい卵と古い卵を見分けるにはどうすればよいのでしょうか?


新鮮度の高いもの(左)から低いもの(右)

A. 一一%の食塩水につけた卵の状態によって、底に沈んだ場合には新しいもの、水面に浮き上がった場合には古いものとされます。また、卵の丸いほうにある気室の深さが浅い場合には新しく、深い場合には古いとされます。いずれも卵の水分が蒸発した程度によって、古い・新しいを判断しようとするものですが、卵の新鮮度には保存温度の影響が大きいため、どちらもあまり正確な方法とはいえません。実際、産卵日や包装日の日付表示も卵の品質を的確に表わしていません。

 したがって、卵の新鮮度は内容物の状態で判断されます。生み立ての卵を平たい皿に割り落とすと、卵黄は丸くしっかりとしていて、それを包み込むように濃厚卵白が存在し、その外側を水様卵白が取り囲んでいます。新鮮な卵では水様卵白は少ないので、全体の広がりも小さいのです。また、卵黄が平たくて弱い、卵白の高さが低く濃厚卵白と水様卵白の区別がはっきりしないものほど、新鮮度が低いといえます。

 割らないで卵の内部品質を知るのはむずかしいのですが、卵に光をあて反対側から見たとき、卵黄の影がはっきりせず、全体がくすんでいるものが新しいといえます。新鮮度が低下すると、卵黄がよく見えるようになり、卵白も透明になります。


Q. 有精卵と無精卵があると聞きましたが、それぞれどんな卵で、見分ける方法はあるのでしょうか?

発生がはじまった有精卵(死後、血管が輪になる)
有精卵の胚盤(左:卵黄中央)と無精卵の胚盤(右:卵黄の左下)

A. 有精卵は受精卵ともいい、ヒヨコが孵ることのできる卵です。卵からヒヨコが発生する部位は、卵黄の表面中央にある白っぽい斑点で、胚盤とよばれています。その名のとおり、オンドリとメンドリとが交尾をして、精子が卵管をのぼっていき胚盤に侵入したものが有精卵です。有精卵は生まれる前に、すでに胚が細胞分裂を繰り返しているため、胚盤の直径は約三・五mmで円形、周囲には白くにごった輪ができます。無精卵でも胚盤は白い斑点といえるもので、円形が変形し周囲の輪郭は、はっきりしません。とはいえ、有精卵と無精卵とは誰にでもわかるほどの違いはありません。有精卵を生ませるためには、メンドリ一〇〜一五羽に対してオンドリ一羽を同居させるのがよいといえます。

 有精卵は二七℃以上の環境で発生をはじめます。血管が見えるようになった卵は食用になりません。なお、ふ化するまでに、ニワトリでは、二一日間のふ卵が必要です。


Q. 卵の食べごろと使いごろはいつでしょうか?

ゆで卵にすると、新鮮度の高い卵は殻がむきにくくなる。ゆで卵にするには、15℃の室温で3日間、冷蔵庫で9日間保存するとよい

A. 炊き立ての熱いご飯に、プル ンとした生み立て卵をかけて、醤油やだし汁とかき混ぜて食べるのは最高です。落とし卵(ポーチドエッグ)には、卵白が卵黄を包み込んでいる、生み立ての新鮮卵が最適です。

 新鮮度の高い卵はゆで卵にしたとき、殻がむきにくくなります。これは新鮮な卵に溶け込んでいる二酸化炭素が、加熱によってガス化し、卵白を卵殻膜に強くおしつけて離れなくするからです。また、殻のむけにくいゆで卵では、卵白がぱさぱさとしておいしくありません。生み立てのタマゴに含まれる二酸化炭素が外に出てしまうまで、保存してからゆで卵にして使いましょう。その保存期間の目安は一五℃のもとでは三日間、冷蔵庫では九日間とされます。

 卵を糸状に固まらせるかき玉汁では、汁の濁りを少なく仕上げるのがこつです。この料理の場合、卵黄と卵白が十分まざりあうことが必要なので、少々新鮮度が低下したタマゴを用いるのがよく、二〇℃で七日間くらいの保存が目安となります。

 このように料理の種類によって卵の食べごろ、使いごろは異なります。なお、卵には周囲のにおいが移りやすいので、保存場所にも気をつかうことが大切です。

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