「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2007年7月号
 
「雨がふりそうだけど、ゆっくり歩きましょう」と佐藤先生

食農教育 No.56 2007年7月号より

達人が教える 野あそびの極意!!

文責:編集部 写真:岡本央

 目的地まで早く着きたいとき、道を歩く時間はひどく無駄に感じられ、はしょりたくなります。そんなとき道は「タダの道」、道ばたの草は「タダの雑草」。そこであえて提案、たまには野あそびをしてみませんか!「タダの道」が表情豊かな空間に変わることに、そして「タダの雑草」の一つ一つが「タダものでない」個性を主張し始めることにきっと気づくはず。

 東京都町田市のJR町田駅から神奈川県相模原市のJR古淵駅を結ぶサイクリングロードを、野あそびの達人、佐藤邦昭先生の手ほどきで、小野さんと青木さんに歩いてもらいました。


小野さん


青木さん


佐藤邦昭先生
ベテランの小学校の先生。現在は玉川学園勤務。「子どもたちのいちばんの関心は食べること、次は遊ぶこと」が持論ですが、食べることや遊ぶことにかけては佐藤先生も負けてはいません。道ばたの植物に出あったとき、佐藤先生はなつかしい友だちに再会したような顔になります。

「いざ、出発!」と思いきや、街路樹を見上げた佐藤先生、
「これなんだ?」と街路樹に咲いている花のようなものを指して、小野先生と青木さんに聞きます。


花?

青木「花?」
佐藤ちがいます。この木はハナミズキで、花に見えるこれは苞(ほう)と呼ばれるもので、葉が変形したもの」
小野・青木「ホー!」

佐藤「苞のなかをよく見ると、小さな花が20個くらい集まっています。小さな花にもちゃんとガク、花びら、オシベ、メシベがあって、苞は小さな花全体を包む葉です」
小野・青木「ホー!!」


街路樹の下の植物

佐藤「ハナミズキの下の、土が出ているところには、何種類の植物があるかな?」
青木「(いっしょうけんめい数えて)8種類あった!」

佐藤「そう! ホトケノザ、カタバミ、ツメクサ、オオイヌノフグリ、ハルノノゲシ、セイヨウタンポポ、アレチノギク、スズメノカタビラの8種類。名前がわからなくても、見分けることはできるね。どうして、こんなにせまい所にいろんな植物の種がここに来たのかというと、(1)飛んでくる、(2)人間の靴の下についてくる、(3)鳥の糞のなかに混ざっている、この3つが考えられるね」
小野・青木「ホー!!」

…ということで、改めて出発!

スイバ

佐藤「この草の茎をかじってごらん」
青木「……(酸っぱい!)」
佐藤「スイバは漢字で書くと『酸い葉』。文字どおり酸っぱいからスイバというんだね」
青木「……(先に言ってほしかった)」

「ゴメン、スッパイのは虫よけなんだよ」

カタバミ

佐藤「カタバミの葉も食べると酸っぱい。これはシュウ酸の味。カタバミの花は3時になったら閉じる性質があります」

カタバミの実。熟した実を押すと、種がはじけるように出てくる。

佐藤「カタバミという名前の由来は、カタバミの葉を一つだけとると、片ほうが食べられたような形をしているから。クローバーの葉と比べるとおもしろいよ。クローバーの葉は丸いね」


ムラサキカタバミ

佐藤「葉っぱは大きいが、カタバミと同じ味がします。シュウ酸の味だね。ホウレンソウがなんとなく酸っぱいのもシュウ酸の味です」


ナワシロイチゴ

佐藤「ナワシロイチゴの実は6月から7月に食べることができます。ナワシロイチゴがどこにあったか忘れないように、花と葉っぱを覚えておくといいね。ナワシロイチゴの特徴は、花びらの両端がそっくりかえっていること。それから花びらがオシベ全体を包んでいます。これは、メシベが先に花びらの外に出てきて、そのメシベが受粉したあとにオシベが熟して、その花粉がほかの花のメシベにくっつくようにするためなんだね」
青木「花がケーキみたい! 花びらがオシベを隠してる!」


ホトケノザ

佐藤「ホトケノザはシソ科の薬用になる草で、花は甘いですよ。シソ科の特徴は、茎が四角なことで、ホトケノザの茎も四角ですね」(お祈りをしている人のように見える一つ一つが花で、それぞれの花にオシベとメシベが備わっています)




小野さんのコメント

 林間学校のときに、子どもたちと宿舎近くの植物を調べながら、天ぷらにして食べました。天ぷらにしたのはタンポポやクローバー、ウツボグサ、イタドリ、ゲンノショウコ、オオバコ。野いちごもつまんで食べました。その後、子どもたちは「先生、もう草を踏めないね」「もう何が起こっても生きていけるね」と言うのです。雑草という言葉でひとくくりにできない豊かさを、子どもたちは感じたようです。

続きは7月号をお読みください

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