子どもたちのアイデアで、物干し竿にタイツをつるしてもろみを搾る食農教育 No.57 2007年9月号より
物干し竿とタイツでもろみを搾ったよ!
―みずき醤油プロジェクト―
千葉・野田市立みずき小学校 吉澤菜穂子
千葉県野田市立みずき小学校は、開校五年目になります。開校以来「食教育」に力を注いできました。平成十八年度は、六年生が野田の特産の醤油づくりを体験することで、郷土に対する愛着と理解を深めたいと考えました。そこで、「キッコーマンもの知りしょうゆ館」館長大澤学さんに指導をしていただき、昔ながらの方法で醤油をつくることにしました。
醤油麹づくりに挑戦
まず、六月に二回、醤油づくりの工程の説明を受け、具体物に触れ、つくり方への理解を深めました。七月に入り、いよいよ自分たちで醤油麹づくりに挑戦です。大豆・小麦・麹菌を加え、三日間発酵させました。温度・湿度・空気の管理が重要です。毛布でくるんだり、途中でほぐしたりと様子を見ていきました。このとき、一番の敵は納豆菌です。本来の手触りはさらさらのはずなのに、グループによってはねばねばしてしまい、もう一度つくり直すことになりました。子どもたちは、四日間、納豆を食べないようにし、醤油麹が納豆にならないようにと気を配りました。
六カ月かけてもろみが完成
醤油麹に飽和食塩水を加え、仕込みが完了。次に、いよいよもろみを熟成させていきます。微生物が活発に働き発酵するように、毎日かき混ぜることが大切です。夏休み中も、当番を決め、日曜日以外、毎日かき混ぜることにしました。子どもたちが、一日も休まず当番活動を行なったことは、素晴らしいことでした。
九月下旬から、三日おきに混ぜることにしました。ふたを開けると、香ばしい香りがぷんぷんしています。そのときです。「先生、白いカビが生えているよ」と大騒ぎです。すぐに、キッコーマンにメールを送り尋ねたところ、「産膜酵母」といって害のない酵母で、すくいとってよく混ぜてしまえば大丈夫と知り、一安心しました。一月上旬まで、当番制でかき混ぜることを忘れませんでした。
アイデアばっちりタイツで搾る
「どのようにもろみを搾ろうか」と提案したところ、「先生、靴下では搾れないかなあ」という考えが出されました。そこで、物干し竿にタイツをつるすととてもうまく搾れ、キッコーマンの方も、このアイデアにはびっくりしていました。搾り作業をした家庭科室は、もろみの甘い香りでいっぱいになりました。
こうして「生醤油」のできあがりです。その後、八〇度で三〇分加熱し、火入れをしました。これで醤油の完成です。それぞれの樽で微妙に味、香りが異なることに子どもたちは気づきました。それだけ愛着があるようです。自作ラベルのボトルに完成した醤油を移し入れ、各家庭へお土産として持って行きました。
手づくり醤油を味わう
搾った後のもろみは、「もろみ漬け」として楽しみました。ダイコン・ニンジン・カブ・ナスなど思い思いの食材を持ち寄り、もろみに漬け込みました。今まで食べたことのない味に、野菜嫌いの子どもたちも、むしゃむしゃとたくさん食べたことが印象的でした。また、五年生がついたおもちで、雑煮をつくり、大喜びで味わいました。
自分たちでつくった醤油の味は、本当に格別なもの。この体験学習により、食物への関心や郷土への関心が高まり、家庭で楽しい話題が増えたことは言うまでもありません。
●「キッコーマンもの知りしょうゆ館」から
六カ月かけたこの記事のような実践のお手伝いは、原則としてできませんが、三〜六年向けの「しょうゆづくり体験(二時間・要予約)」を行なっています。詳細は、下記の連絡先へご相談ください。
キッコーマンもの知りしょうゆ館→webサイトはこちら
電話:0417-23-5136
農文協 > 食農教育 > 2007年9月号 >
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp まで
事務局:社団法人 農山漁村文化協会
〒107-8668 東京都港区赤坂7-6-12007 Rural Culture Association (c)
All Rights Reserved