「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2008年5月号
 
食育にとり組んで7年の奥瑞恵先生。2児の母

食農教育 No.62 2008年5月号より

給食を食べごとに

なんてステキな響き!“おてつだい”

兵庫・芦屋市立浜風小学校栄養教諭 奥 瑞恵

 私が勤務する芦屋市立浜風小学校は、児童数三三八名(各学年二クラス)の都市部の学校です。浜風小学校の「おいしい給食」は、子どもたちや保護者に絶大な支持を得ています(うぬぼれかも? でもこのあいだの全校朝会で、調理師さんや私に、各学年から感謝のプレゼントが贈られたし)。

 で、その給食の裏づけとなるのが、芦屋市の単独献立・単独調理。芦屋市にある八つの小学校はそれぞれ献立が異なり、浜風小学校では、献立を立てるのも物資を注文するのも、私ひとりの仕事です。その私をささえてくれるのが力強い味方、四人の調理師さん。私の思いつきを現実のものにしてくれるプロ軍団です。

 子どもたちには、人がつくったものをただ消費するだけの大人になってほしくない。そう考える私は、子どもたちに給食のお手伝いをしてもらっています。近頃は、家庭でもあまりさせないお手伝いを、学校でしてもらうのです。そのなかで子どもたちは、「私、ただ食べる人」からつくる人へと、ほんの少しかもしれませんが、変わっていきます。

 そして給食の時間は、目の前にポンと置かれたモノをただ食べる時間から、食材のいのちや、食に携わる人の思いや技、こういったものがつまった「食べごと」を感じとる時間に、「食べごと」のなかに自分も入りこむ時間に変わるのです。

 「実際にはなにするん。もっとわかりやすくいうて」という声が聞こえてきそうなので、通勤途中の車のなかで思いついたアイデアを、調理員で副技能長の表木すま子さんに相談するシーンを紹介しましょう。

四月の献立にむけて〈いちごのヘタをとらせよう編〉

いちごのヘタをとる表木すま子さん

 ねぇ、表木さん。去年のいちごジャム、きれいな色でおいしくたけたよね。今年もいちごジャムをたこうと思ってるんやけど、いちごのヘタとりを子どもたちにまかせようかと思うんだけど、どう思う?

表木 いいんじゃないの。

 そうでしょ! 包丁の使い方の練習にもなるしね。学年はやっぱ五年生ぐらいかな。ヘタとりでいちごの甘い香りをかぎ、翌日は鮮やかないちごジャムを目と舌で味わう。めっちゃナイスやん!

表木 また先生ひとり酔いしれてる。でもええわ。前日にヘタをとってもらって、給食室で砂糖をかけて冷蔵庫で保管して、当日は回転釜でサッとたきあげたらええやん。でも家庭科室にぺティーナイフあるんか?

 そんな、あるわけないやん。ふつうの包丁でええやん。いちごもジャム用の小さいサイズにするわ。ひとりがいくつもヘタをとるように。

〈よもぎを集めさせるだけじゃなくてゆでさせよう編〉

表木 今年も、アヒル池(校庭のビオトープの池)のまわりに生えているよもぎで、よもぎ団子するんか?

 三年生がすると思うけど。またよもぎゆでてやってね!

表木 それはかまへんけど。給食のよもぎ団子のぶんもとってもらったらえんちゃうん?

 そうやね、多めにとってもらおうか。でも、草がはいってたり掃除がたいへんかもよ。

表木 子どもによういうとったら、ちゃんとしてきてくれるわ。それに、授業でするよもぎ団子づくりのよもぎも、子どもらが自分たちでゆでたらどうなん? 給食室でやったあげることは別にかまへんけど、ゆでたときによもぎの色が変わるとか、ゆで汁が緑色になっとるとか、自分の眼で見たほうがおもしろいんとちがう。

 そうやね。三年の担任に相談して、どっちでもいいほうを選んでもらうことにするわ。

五月の献立にむけて〈木の芽あえでリベンジだ! 編〉

 ねぇ、表木さん。去年は子どもたちに季節の料理を食べさせたいと、タケノコに山椒の若葉をあえた「木の芽あえ」をきばって出したのに、残ったよね。ひとクラスなんか、「ほんまに食べたん?」というぐらいの量がボールに残っていて、悲しかったよね。タケノコすごく高かったのにって感じで、涙出そうやったわ。教室に行ったら、「この緑はアボカド?」とか「タケノコにドレッシングかけたん?」といわれたわ。いまどきの子どもやね。

表木 木の芽あえが残ったから、つぎの「酢味噌あえ」も残ってくると覚悟してたけど、どのクラスも完食してきてびっくり。酢味噌あえはわけぎを空炒りして、いかは酒蒸し、にんじんはゆで、うす揚げはオーブンでバリバリなるまで焼いて、竹輪は油で揚げて、手間かかったけど、おいしくできた。子どもらもおいしいもんは、よー知っとうな。

 今年も「木の芽あえ」に再挑戦しようと思ってるんだけど。

表木 やったらええやんか。先生は子どもらに木の芽を摘まそう思ってるんやろ? 山椒の木もらってきて、用務員さんに植えてもらったんやろ。

 うん、苗を二本もらって植えてあるんやけど、大きなってへん。枯れてはいないみたいなんやけど、子どもに摘ませるほどないわ。いい、山椒の木はどこかで調達するから。
山椒の芽を摘んで、あの独特なにおいをかがせたいし、自分たちがしたら、興味もって食べるはず。

 次ページは、五月に行なう一年生の豆むきです。これからも、浜風小学校の子どもたちのお手伝いを紹介していきます。

●そらまめの巻

給食室へ納入されたそらまめ、新聞紙、むいたそらまめを入れるボール、さやを入れるビニール袋を用意します。 机をグループにして、机の上に新聞紙をしいて準備完了! ひとり何本ぐらいむけるかな。

「そらまめ!?」「そらまめを半分にわって……、かたいな」

「『そらまめくんのベッド』(福音館書店)の絵本をよんでもらったよ。そらまめくんのベッドは、白いフワフワで、気持ちよさそう〜。先生、これ持って帰ってもいい?」
「どうするの?」
「おかあさんにみせるの」。

「こんなにたくさんできたよ。今から給食室へ出発、調理師さんがまってるよ」

本日のメニュー

本日のメニュー
・フレンチトースト
・牛乳
・手づくり肉団子のスープ
・スタミナサラダ
・そらまめの塩ゆで

●実えんどうの巻

実えんどうは兵庫県産。長雨や低温で、予定の日に入手できない場合も考えられます。その場合は献立を変更して、兵庫県産が実るのをまちます。子どもたちに、農産物は気候に影響をうけるものであることを知らせたいのです。

そらまめと違い、実えんどうはコロコロころぶので、子どもたちは苦労していました。「先生、落ちた豆どうするの?」
1つのさやに「8個はいってた」「10個はいってる」と大喜びの子どもたち。豆を観察して絵を描いたり、むいたさやで、とんぼや飛行機をつくったり。

本日のメニュー

本日のメニュー
・フレンチトースト
・牛乳
・手づくり肉団子のスープ
・スタミナサラダ
・そらまめの塩ゆで

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