「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2009年1月号
 

食農教育 No.66 2009年1月号より

特集 ギュッとおにぎり!

家族でつくろう おにぎりの日

長崎・波佐見町立南小学校 福田泰三

親子でにぎる
「おにぎりの日」
「おにぎり」とは
「おむすび」「御結び」ともいいます。
誰かのために、
誰かが喜ぶために
むすんでいくのです。
誰かとは、あなたにとって
大切な人のことです。

(「おむすびの日」レシピ集より。以下の絵や作文も同様です)

 「子どもたちを台所に立たせる」実践として、「弁当の日」が全国に広がりつつあります。給食のない日に、親は手伝わず、子どもが自分でつくった弁当を持参する日です。「家族でつくろう『おにぎりの日』」は、その「弁当の日」の変形バージョンですが、「子どもを台所に立たせる」「子どもたちにくらしの時間をとり戻させる」というネライはまったく同じ。ただ、おにぎりなので、弁当と比べ、「低学年でも可能」「高学年なら具を工夫できる」「シンプルさのなかに奥深さがある」といった特徴があるといえます。

家でにぎって学校でみせあう

 今回の実践は短期集中型でした。使った時間は、おにぎりづくり二時間×二=計四時間(六年生・総合的な学習)のみです。まず、十月三十一日に、「オリジナルおにぎりづくり」を実施しました。子どもたちはその日の朝、自作おにぎりを二〜三個むすんできます。そして、総合の時間に「おにぎりのストーリーばもちよって、みせあいっこするばい」と発表会をしました。一個一個の裏に潜む家族とのドラマ(一頁口絵参照)に、おおいに刺激を受けあいました。

 二回目は十一月七日に実施。前回は梅やシャケといったノーマルなおにぎりをつくってきた子も、二回目は工夫を凝らします。今回は「旬のものを使って」というテーマを与えたところ、おばあちゃんから聞きとりしたり、スーパーで情報収集したり、コンビニに行って取材したりと、子どもたちも燃えました。「一回目で食べた友達のおにぎりの味が忘れられない」とそのアレンジに挑戦する子もいました。

レシピ集を全家庭に配布

 そんなおり、総合の発表会である「南っ子ふるさと祭り」が今年は日曜日に開催することに決まり、私は、その日を利用して「家族でつくろう『おにぎりの日』」を全校に広げよう、と提案したのです。

 児童数三七五名の本校も、祭り当日は来校者で七〇〇〜八〇〇名にもなります。当日は縦割り班の出し物で各教室も使えず、雨天のときの昼食場所が心配です。おにぎりを持参すれば、その問題も解決するということで、校長や担当者への了解もすんなりととりつけられました。

 六年生も大張りきりです。ただ、ほかの学年は「おにぎりの日」のおもしろさを知らない。強制ではなく、全校児童とその保護者が自発的に取り組まなければ意味がありません。そこで、以下のような仕掛けを施しました。

 まず、レシピ集づくり。おにぎりづくりの発表後には必ずレシピと感想、ストーリーを書かせているので、それを使えばすぐできます。「調理を工夫できる」「低学年でもできる」などの視点でおすすめのおにぎりを選び、印刷しました(昼休みを利用して作業)。

 二週間前の給食時間。六年生が各クラスを訪問し、「当日は家族でおにぎりをつくろう」とレシピ集を配布してアピールしました。一週間前にもレシピ集第二弾を配ります。二回に分ければワクワク感が増して効果もアップ。第二弾には、子どもたちの感想文も掲載し、保護者へもさりげなくアピールしました。

みんなが笑顔になる日

 さて、当日。みごと、どの家庭も親子でのおにぎりづくりを実施してくれました。六年生は、さっそくインタビュー。「お母さんから『ありがとう』といわれうれしかった」「これから遠足とかに行くとき、またつくりたい」「卵を包むのがむずかしかったけど、食べたときおいしかった」……などなど。

 インタビューを終えて、「一言で『おにぎりの日』をたとえるとしたらどうなる?」と子どもたちに問うてみました。「みんなが笑顔になる日」──。この答えに「おにぎりの日」の意義が凝縮されています。

 「お母さんたちは手伝わないで」と学校からのトップダウンで実施するのが「弁当の日」だとしたら、今回の「おにぎりの日」は、子どもたちのボトムアップで成し遂げられた取組み。シンプルでありつつ、創意工夫の楽しさを味わえる「おにぎり」だからこその効果です。



あげおにぎりの文 作・奈々美

おにぎりといえば三角。三角にこだわるんじゃなく、今までにない「はさむ」という方法は?
最初、ハンバーガおにぎりをつくった。
でも、これおにぎりじゃない。
次は素材にこだわった。
お姉ちゃんが
「火を使ったおにぎり」というアイデアをだした。
「ゆでる」「煮る」は無理だ。
「蒸す」はおいしくなるのでは?「焼く」は売ってある。
そこで、「あげる」を試した。
家族全員に大好評。
「でも、あげるのはおにぎりとしていいのかな?」
「ダメかなと思うことをやってみて、はじめて成功することってあるんだよ」
と背中を押してくれる言葉が返ってきた。
このおにぎりは、
家族が支えてくれた、
家族の絆を感じたおにぎり。
だからみんなが「おいしい」と言ってくれて
すごく嬉しかった。
家族に感謝。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 おくむらあやおのごはん道楽!』奥村彪生

〈もち〉〈茶漬け〉〈汁かけ飯〉〈丼飯〉〈炊込み飯・混ぜ飯〉〈赤飯・おこわ〉〈ピラフ・炒飯〉〈特徴ある米を楽しむ料理〉〈すし〉〈おにぎり〉〈型抜き飯〉〈かゆ・雑炊〉の歴史・文化とともにレシピを解説する。 [本を詳しく見る]

 うかたま 8号 愛しの白いごはん 

鳴子の山の“山の米”/ニッポンのかてめし/こんな鍋で炊いてます/農家のお米/精米機くらべ [本を詳しく見る]

 

田舎の本屋さん 

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