「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年9月号
 

食農教育 No.76 2010年9月号より

あそび名人に会いにいこう!

ため池のロブスター

ザリガニを食べて減らす!


鳥取のおねえさんに教わる!

 「はい、では出発しますよ」

 元気に号令をかけるのは桐原真希さん、今日のシェフである。しかし、格好がシェフというより怪しい探検隊のようだ。

 照りつける太陽の下、みんなが向かったのは田んぼの奥にあるため池。ここでまずは食材の確保から始めるらしい。餌はスルメ……ということは今日の料理はザリガニか!!

一人で二時間、二〇〇匹釣った!

 「アメリカザリガニは要注意外来生物に指定されています。稀少な在来種を捕食して生態系に悪影響を与えるんです。これを捕獲してただ駆除するのではなく、その命をきちんといただくのがこのプロジェクトなんです」

 参加者にザリガニ捕りの意義と食べる意味をきちんと説明する桐原さん。じつは彼女の本業はシェフではなく自然観察指導員だった。

 説明を聞いたあと、さっそくザリガニ釣りを開始。するとすぐにあちらこちらで”捕ったどぉぉぉ〜”の雄叫びが上がる。いや、簡単、簡単。はじめての子どもでも次から次へ入れ食い状態。これはおもしろい。

 「去年、竿を四本並べて二時間で二〇〇匹、一人で釣りましたよ」

 さすがザリガニマイスター桐原。ザリガニ釣りを始めてまだ一年三ヵ月程度で捕獲総数が約二〇〇〇匹というから、凄腕だ。

テレビゲームでは味わえない本物の喜び。小さな獲物でも手に入れたことは一生涯の宝物になるだろう
ザリガニ釣りの必需品。左より餌のスルメ、タコ糸、そしてそれらを入れるタマネギネット。上は竹の棒
ため池は生き物の宝庫。遊びに行くときは必ず大人と一緒に
技術も経験もほとんど差がでない。糸の先にスルメをつければ誰だって釣れる

桐原さん。ザリガニと環境を語らせると数時間は続く!?
 

日本酒に三〇分浸けてしっかり茹でる

 今回、一時間で釣り上げたザリガニは約一七〇匹。しかし捕獲直後のザリガニは泥臭くてとても食べられない。一週間はきれいな水で泥出しをする必要がある。そこで料理用に桐原家でつねにストック(ペット?)してあるザリガニを使うことにした。

 ザリガニメニューはじつに多彩だ。ザリガニピザ、ザリガニバーガー、ザリガニカツ、ザリガニマフィン、ザリガニご飯……。ザリガニはフレンチや中華の食材でもあるからメニューはまだまだ増えそうだ。

 では調理開始。まずは生きたザリガニにたっぷりと日本酒を注ぎ三〇分ほど浸け込む。次に鍋に湯を沸かし酒から上げたザリガニをしっかりと茹でる。ザリガニに限らず淡水生物はジストマ(吸虫)などの危険な寄生虫がいるから加熱は大事である。

 真っ赤に茹で上がったザリガニはまるでロブスター。ではいただきます。モグモグ、う〜ん、これはプリプリ感のあまりないエビだ。なかなかうまい。これを食べてザリガニだとはおそらく誰も気付かないだろう。

 今回は調理用のザリガニが少ないのでメニューは「茹でザリ」と「ザリピザ」の二品。もうあっという間に完食! 身近な自然のなかから食べ物を得て命をつなぐ。今ではなかなか体験できない喜びが子どもたちの笑顔となって夏の日にキラキラと輝いていた。ザリガニ君、ありがとう!

(写真・文 田中康弘)

今回大汗をかきながらザリガニ捕獲に挑んだ、とっとり・なんぶ手自然ネットワークのメンバー。老若男女、楽しく無心になれるところがよいなあ
酒をたっぷりと飲まされるザリガニ。これは上海カニを老酒に浸け込むやり方と同じである

漁から帰るとまずは計測。捕獲数と総重量を記録する。これは欠かさない
今日の釣果を確認する子どもたち。いつもなら持ち帰り、泥出しを兼ねて各自で1週間観察をする
育ち盛りの子どもたちはあっという間に食べてしまう。おいおい、おじさんにも少し残しておいてくれ!
量は少ないがザリガニにもミソが入っている。これが意外とおいしいのだ
ザリガニがピザになるなんて誰が想像できるだろうか。しかしこれもうまい!
子どもは遊びの天才。捕って食べて遊んで、これがすべて栄養になる


「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年9月号(No76)

◆子どもあそび、復権!◆旬の魚で、うんまい給食! ほか。 [本を詳しく見る]

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