「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年11月号
 

食農教育 No.77 2010年11月号より


3年生以上も笑顔で下校

価格調整で処分なんてもったいない

白菜わっしょい!

東京・荒川区立汐入小学校

主査栄養士 宮島則子

 この夏、白菜の価格下落で、大量の白菜が廃棄処分された。
 天候がよくて穫れすぎたというわけではなく、大型野菜の需要の落ち込みが原因だとか……。

農協も無念給食で使用しませんか?


校長・副校長・職員でわっしょいリレー

 本校は、荒川区の大規模再開発によって生まれた新しい街の新しい小学校で、児童数七二六名・二一学級のマンモス校です。私は、今年の四月から本校の学校栄養士として勤務しています。赴任当初は、食物アレルギー児の多さに驚き、その対応に苦慮しました。アレルギーばかりではありません。野菜・魚・豆嫌いで給食が食べられない児童も多くいます。このままでは生活習慣病などの健康問題が懸念されます。そこで今年度から、食育の重点課題として、「野菜をしっかり食べよう」に着手しました。

 そんな折、以前からいっしょに活動を行なってきたNPO法人青果物健康推進協会の近藤事務局長から、電話が入りました。「長野県八ヶ岳の高原白菜が、価格調整により潰すことになったが、農協としても無念であるので、これを学校給食で使用してくれないだろうか?」と。送料も無料。「白菜を潰すのはもったいないので、ありがたくちょうだいいたします」と即答し、全農との連携による「白菜わっしょい!」のプロジェクトが発進したのでした。

八一〇個・二一〇〇sの白菜

 給食用の八〇sと児童一人に一個の白菜(計八一〇個)が届けられることになりました。まず、給食は連続三日間の白菜メニューに急遽変更です。

・七月十五日(木)「白菜入りにら玉ご飯」
・七月十六日(金)「豆腐と白菜のスープ」
・七月二十日(火)「白菜の即席漬け」

 夏のこの時期に連続三日間の白菜メニューははじめての経験です。

 さらに、この八ヶ岳の白菜について、毎日発行の「給食メモ」で詳しい経過を書き、「なぜ国産の新鮮でおいしい白菜が潰されることになったのか?」を考えてほしいと訴えました。また、ランチルームの指導では、実物の白菜を抱えて八ヶ岳白菜について子どもたちを前に熱く語りました。

 いよいよ、十六日(金)は白菜を一人一個ずつ持ち帰らせる「白菜わっしょい!」当日です。保護者に事前に通知をし、児童には担任をとおして白菜を持ち帰る準備を行なってきました。当日の朝、八ヶ岳から届いた白菜は、なんと二一〇〇s、六個入りダンボールで一三五ケースにも及びました。大型トラックから校長、副校長、職員でリレー式に荷降ろしをし、玄関横に大量の白菜ダンボールが山積みされました。

高層マンションの住人を笑顔に

 一・二年生は、白菜を持ち帰るのは危険という判断により、保護者が取りに来ました。子どもたちの登下校の安全を見守ってくださる交通ボランティアのみなさんにも差し上げました。隣の幼稚園の保護者にも事前にお知らせし、大勢の幼稚園ママたちもニコニコして白菜を持ち帰りました。

 そして、学期末の持ち帰り品が多いなか、三年生以上の児童が大きな袋に入った白菜を抱えて下校。その顔はどれも笑顔です。

 「学校で白菜を無料配布する」という前代未聞の取組みは、この高層マンション群の地域全体が三〜七日間ほとんどすべての家庭で白菜を食べるという学校・家庭・地域が一体になって取り組んだすばらしい食育活動となりました。一人でも多くのみなさんに八ヶ岳の新鮮白菜をおいしく食べてもらい、生産者のみなさんによろこんでほしいという思いがギッシリ詰まった「白菜わっしょい!」でした。

 今後、国産の新鮮野菜がムダにならないように、農協・生産者と学校給食が連携して、余剰農産物を活用できるようなシステムをつくることが課題だと強く感じました。


低学年の保護者や幼稚園ママも大喜び


農協から2100sの白菜が届いた!


「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年11月号(No77)

◆ムギをまこう!育てやすくて食べて楽しい◆地元の旬を使いきる"食材ありき"の給食献立 ほか。 [本を詳しく見る]

 麦わらの絵本

生活用具から伝統工芸まで、暮らしの中でさまざまに使われていた麦わら。裂いて貼って絵葉書や宝箱、編んで束ねて馬や人形、コースターや指輪に大変身!艶やかな金色に輝く伝統の麦わら細工、麦わら帽子にも挑戦だ。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

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