「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2011年5月号
 


「これ、なんの箱?」(写真はすべて矢島江里撮影)

食農教育 No.80 2011年5月号より

箱膳でいただきます!

長野市・上高田保育園

 不思議そうに箱膳をのぞきこむ園児たち。3月3日、卒園を控えた年長組の園児たちが「箱膳給食」を体験した。

箱膳は、「一人前」のしるしです

 お昼、箱膳を前にきちんと正座する園児たち。池田玲子さんを講師に迎えた「箱膳給食」の始まりだ。

 箱膳とは、一人分の食器一式を収納しておく箱のことで、食事のときにはふたを裏返して御膳として使う。昔の農家の子どもたちは、小学校に入学する歳になると、一人ずつ自分の箱膳をもらえたそうだ。

 この日の献立は一汁三菜。ご飯のお米は、園児が田植えや案山子あげ、稲刈りをした田んぼでとれたもの。味噌汁は、箸が立ってしまうほど具がたっぷり。「味噌汁一杯三里の力(一二q歩ける)」といわれるくらい、具だくさんの味噌汁は力の源。魚は形がそのまま残っためざし。この日は、一人ずつが一匹まるごといのちをいただくという意味をこめて、あえて切り身にしなかったという。

 箱膳での食事には、現代の私たちが忘れてしまった、さまざまな決まりごとがある。

 例えば、お代わりをもらうときには一口残して器をさし出す。これは「家を絶やさない」という、武士の価値観を受け継いだものだとか。また、食べ終わったら白湯を注ぎ、一切れだけ残した沢庵で器の汚れを落とす。落としにくいご飯茶わんの汚れを洗い、自分で始末することを身につけていく。

 そして一番大事なのは、家族そろって食べること。「ご飯だよ」と声がかかったら、仕事の手を休めてすぐに食事の場所に向かう。「飯だと聞いたら火事より急げ」。とにもかくにも家族が顔を合わせて食事をとることが大切なことだった。「家に帰ったらお父さんとお母さんにそのことを伝えてね」。そんな池田さんのメッセージで「箱膳給食」は締めくくられた。

 この日、園児たちは途中で騒ぐこともなく、約一時間半の間正座して池田さんの話を聞き、食事もほとんど残さずに食べた。昔は、小学一年生ともなれば一人前に家の仕事をこなさなければならない歳で、箱膳は一人前の大人のしるし。この日の園児たちは、箱膳の由来にふさわしい、頼もしい姿をみせてくれた。

(編集部)


園児たちに箱膳の作法について話をする池田玲子さん。地元で食農体験を広げるボランティア活動に取り組んでいる


「いただきます!」

箱膳給食の献立

・煮物
根菜がたっぷり
・めざし
食べるときは頭から
・沢庵
吉澤農園から届いた
・ご飯
麦入りご飯。お米は園児たちが稲作体験に取り組んだ吉澤農園(長野市中条)から届いた
・味噌汁
箸が立つくらい(本当はやってはいけません)具だくさんの味噌汁は力の源

このほかに取り回しの料理として青菜のごま和えと煮豆(花豆)がついた

置き方は大丈夫?

 一番大切なご飯は左手前、次に大切な味噌汁は右手前、主菜の魚は右上、副菜の煮物は左上、沢庵はまん中に置くのが正しい置き方

どこがちがうかな?(上の写真と比べてみよう)

箸をもつときは3拍子で


右手でもつ


左手をそえる


右手でもち直す

器はきちんと手でもって

「犬食い」はダメだよ!

食べ終わったら…

白湯を注ぎ、沢庵で器の汚れを落としてお湯を飲み干す。昔はこのあと布巾でふいて収納した


「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2011年5月号(No80)

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