農文協食農教育冨田きよむの学校デジカメ写真術 > 第6回

第6回 教室で子どもの表情を撮る

 ティームティーチングを組んで授業をする機会が増えたと聞く。そんなとき、デジカメ片手に子どもたちのいきいきとした表情を撮ってみたい。親や地域の大人は、学校での子どもの姿をもっと知りたいと願っている。日々子どもたちと向き合う教師だからこそ撮れる、子どもの表情、学校の日常風景をぜひ写し込んでほしい。

※画像をクリックすると拡大表示します。

コツ1 最も重要な注意点、2つ

その1 逆光線を恐れてはいけないのだ!
いかなる写真の本を引っ張り出してきても、写真は逆光線で写せとはかかれていない。観光旅行に出かけて、記念写 真を撮るときにもお年を召された方たちでさえ、
「そこから写すと逆光になるよ」
などとのたまうのである。
ここではっきりと申し上げるが、写真は逆光線もしくは半逆光線で撮影しないとかっこよく写らない。
あらゆる写真は逆光線で撮影するものなのだ。


その2 内蔵ストロボを使ってはいけないのだ!
もちろん青空をバックに人物を撮影したり、夜景を背景に人物を撮影したりするときには内蔵ストロボもある程度有効に使うことできる。内臓ストロボを効果的に使う方法は別に解説する。
しかし、教室内のようすであるとか、児童生徒の作品などを撮影しようとする場合、内蔵ストロボを使うとすべてがぶち壊しとなる。これは確実にそうなる。ストロボは発光禁止に設定すること。

詳しくは、「産直農家のデジタル写真入門」を参照。
悪い見本

↑よく見るストロボぎらぎらの汚い写真

コツ2 子どもの視線で

基本のアングルは、「第3回 お雑煮づくりを撮る」「第4回 町で働く人を撮る」で解説してきたものと同じ。とにかく、子どもの視線までカメラを下げ、冗談などを言いながらリラックスした雰囲気で撮影しよう。

子どもを撮影するときには、とにもかくにも、子どもと同じ視線までデジカメを下げよう。
左の写真はまだ少し遠慮しているくらいだ。子どもが嫌がっているかどうかは、顔を見ればわかるだろう。
ほとんどの子どもは、写真を撮ってもらうのが大好き。
机の上にデジカメを乗せるくらい低い位置から撮影する。
上の写真を真後ろから見たところ。
冗談などを言いながら子どもがリラックスできたり、楽しいなという雰囲気をつくりだそう。もちろん先生たちは子ども相手の専門家なので、心配はないはず。
いきいきとした子どもは大人に勇気と元気を与えますね。

コツ3 なにかに気持ちが向いた瞬間を

先ほどのアングルで撮影した写真の実例を紹介する。
子どもはご存知のとおり、めまぐるしく表情を変える。その変化を追っていると授業どころではなくなってしまうきらいがあるけれども、しっかりと記録したいものだ。
コツは、子どもがなにかに気持ちが向かった瞬間を抑えることと、友達や教師とかかわるときのうれしそうな顔や悔しそうな顔を見逃さないこと。

 

授業とは直接関係ないけれど、子どもの元気なようすを記録しよう。

「ちょっといいですか?」
との先生の声に反応した瞬間。
同学年では、女の子の方がやっぱりお姉さん。自分でもやってみたいのだけれど、女の子に遠慮してじれている男の子の手。
 

わいわいがやがやしているけれど、それぞれが真剣に授業に取り組んでいる。
いいことを思いついた瞬間?
くるくる変わる子どもの表情を逃がさないでどんどんシャッターを切ろう。
言葉が適切かどうかは少々問題あるけれど、女の子がときに見せる、ちょっとおませな表情も逃がさない。

コツ4 作業の手元を撮影する

作業の手元を撮影するときのアングル。
子どもの肩越しに撮影する。
大人であれば、体がある程度大きいので、手元だけを撮影することができるが、子どもの場合、頭とか肩が写りこんでしまうのはいた仕方がない。ズームを使って可能な限り手元を大きく写そう。大人の手元撮影、参考写真はこちら
マニュアル露出が使えるカメラであれば、シャッタースピードを30分の1くらいまで落として、しっかり構えて、絞りをできるだけ絞って撮影したい。
ピントは作品にあわせるのだけれど、そうすると、子どもの手や肩が少しボケ気味になる。コンパクトタイプのデジカメでもマニュアル露出がついているものもあるので、調べよう。

コツ5 教師と子ども、教室のようすを写す

授業開始前の準備のようすや、終了後の後片付けのようすなども大切な記録だ。
子どもと教師がいっしょに作業しているようすはぜひとも記録したい。

この写真は、机を並べ替えているところだけれど、1年生が力いっぱい机を押しているようすを表現したかったので、縦画面 にして男の子の下半身を大きく写した。

何気ない風景だけれど、何気ない風景だからこそ見逃しちゃいけない。授業の本質とは直接関係ないけれど、「教育」の本質は、きっと何気ない風景のなかにこそあるのだと思う。
多くの場合、子どもは大人といっしょに働くことが大好きだ。大人の手助けをしたいと願わない子どもはきっといないと思うのだ。それをしっかり写 真で記録したいものだ。
本日の到達点、成果も記録しよう。
工作の授業であれば比較的表現しやすいテーマである。
一つひとつの作品をしっかり記録するのと同時に、作品を並べる子どもたちのようすも記録しておきたい。

この写真も縦画面であるが、手前に今日つくった作品を大きく配置して奥に子どもを配置した。
画面の上に重心がいっていて不安定だけれど、ある種の安堵感とか、矛盾するが、ある種の緊張感が得られる。
縦画面も練習しよう。
教室全体のようす。
ごくふつうの写真で、ほとんど工夫していない。
注意事項は、ワイドのズームを使うので、画面の水平が取れていないと、酔う写真になってしまう。
ワイドレンズはどうしても、上下左右が樽型にゆがむので水平を取るのが難しい。
人間の目は0.5度水平が狂っても感知できる精密センサーでもある。
同僚のようすもしっかり記録しよう。
とくに子どもといっしょにいるときのようすは自分では絶対に撮影できないので、忙しい授業中ではあるが、積極的に撮影しよう。
理由は、写真を撮る目的がHPの制作であろうが、学級の記録であろうが、授業の記録であろうが、子どもといっしょに奮闘している教師を親も子どもも見たいのだ。また、子どもが教師を見る視線も教師にとっては大きな勉強になるはずだし、第一、子どもが満足しているかどうかは目を見ればわかるからだ。
よく打ち合わせを行ない、じっくりと充分に準備された授業。
そこにはいきいきとした、ある意味で「職業を超えた」教師がいる。
それを伝えていただきたいのだ。
百万、千万の言葉を連ねるよりも、1枚の写真のほうが強い力をもつことも多い。

筆者は民間人であるがゆえに、子どもの親であるがゆえに、子どもとともにある教師の仕事をよく知りたいと願っているのだ。そういう親は非常に多いと確信する。
取材協力:北海道虻田町立洞爺湖温泉小学校 佐茂先生 大槻先生

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