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第11回 雪あそびを撮る

 この冬は各地で大雪の被害が相次いでいるが、いっぽうで雪は子どもを元気にさせる。雪あそびをする元気な子どもたちの姿を撮る絶好のチャンスだ。そのさいの押さえどころを解説する。

※画像をクリックすると拡大表示します。

まず失敗写真と成功写真を見比べる


主役が青空で、子どもたちの顔はどす黒く写ってしまった

子どもの表情がしっかりと写った

左上の写真をご覧いただきたい。
買ったときのまま撮影すると確実にこういうふうに写るのだ。クリックして大きくしてみて、じっくり確認するともっとよくわかる。この写真は空に露出が合っているので、真っ青な空だけはきれいに写っている。
けれども、主役はこの場合空じゃなくて、子どもたち。
さらに悪いことに、青空の色を反射した雪の強い影響で、ホワイトバランスが狂ってしまった。そのせいで、子どもの顔色がどす黒く写ってしまった。
よくある失敗だけれど、これをデジカメの側で補正できるほど科学は進んではいないのだ。
隣(右上)の写真のように、かなり厳しい撮影条件のもとでも、子どもの表情はしっかりと写さなくちゃいけない。
デジカメは機械なので、理屈で動いてる。今回は多少理屈っぽくなるけれど、お許しいただきたい。


コツ1 デジカメの設定を変えよう

(1)ホワイトバランスを「晴天」にセット


雪は青空を反射する。つまり、デジカメのオート機能は実際よりも全体が青いと判断してしまい、それを押さえるようにカメラが設定を自動的に変えてしまう。これを防ぐために、「晴天」だからね、ホワイトバランスを動かさなくていいんだよとデジカメに教えてやるのだ。なお、曇りの日はオートのままでいい。

(2)コントラストを「ロー」にセット


天気のいい雪景色はコントラストが強い。ものすごく強い。暗い部分が普通よりももっと暗く写ってしまうので、それを少しでも防ぐために、デジカメのコントラストを落としてやるのだ。これによって、きついがちがちの陰とか、バリバリになってしまう肌が滑らかに写すことができる。 コントラストを強くするのは、例えば、春霞にかすんだ遠くの景色を写すようなときである。

(3)露出補正を「+0.5」にセット


ほうっておくとデジカメは光の多い青空や白い雪の明るさに露出を合わせてしまい、子どもの顔がどす黒くなってしまう。デジカメが考えるよりも、ほんの少しだけ明るめに写してやれば、子どもの顔がいきる。もちろん、その分空の青さはかすんでしまうが、目的に合わせて相反する利害の最大公約数を得るのが、この露出補正だ。

(4)測光を「平均測光」にセット


スポット測光(中央のごく一部で明るさを測る)にすると確実に失敗写真のオンパレードになる。中央に子どもを配置したときはまあそれなりにいいけれども、それ以外であれば、確実に真っ暗にしか写らない。雪あそびのときには画面全体の光を平均的に図るモードに設定するべきだ。それを子どもの露出に近づけるのが、(3)の露出補正方法だ。
あちこちで講習会をやってるけれど、参加者の中には、デジカメの設定はいじったらいけないものだと思っている人が、びっくりするほどたくさんいる。
パソコンと同じで、多少いじったくらいで壊れるようなことはないので、どんどんいじるといい。
で、メーカーもいじくり回されることを知ってるので、ワンタッチで買ったときの設定に戻せるようになってる機種が多い。
メーカーさんも苦労してるんだろうなあ。

コツ2 空をドバッと入れる

雪が積もっているときは、雪がないときよりも数段明るい。この明るさは大いに利用したい。
写真を撮るときにいつも一番足りないなあと思うのが光である。光はいくらたくさんあってもいい。その意味ではお金に似ているなあ。
で、雪が積もっているときに、この有り余る光を大いに利用したい。
雪がないときには空をたくさん入れるとどうしても主人公の子どもたちが暗くなってしまう。
子どもたちをきれいに写そうと思うと、空が真っ白になる。
雪が積もっていると、雪が光を盛大に反射するので、空と子どもたちの明るさの差が小さくなるのだ。つまり、子どももきれいに空も真っ青に、ついでに、雪も真っ白に写る。
さらに、空に浮かぶ雲のディティールもきれいに写る。
このときにはワイド側のズームが威力を発揮するのだ。


ワイド側のズームを使うと、撮影者の足元近くの雪のようすから、白い雲の浮かぶ青空まで広々とのびのびと写すことができる。
 

子どもにめいっぱい近づいて、めいっぱいのワイドで撮影した。近づくことによって、子どものいきいきとした表情とか、子どものいるシチュエーションそのものを写し撮ることができるのだ。望遠側ズームにはできないことである。
 

やはり、子どもにめいっぱい近づいて撮影。ワイドズームは広い範囲を写すというよりも、遠近感を写し撮ると理解したほうが正しいようだ。より広い範囲を写し撮ることができる「ワイドコンバージョンレンズ」があるともっといい。
 

コツ3 高速シャッターでどんどん切る

さて、ここからはWEB版を熱心にご覧いただいた方だけへの大サービスである。最大のコツでもある。
あそびを写すとき、あるいはスポーツを写すときの最大のコツは、シャッタースピードを早くすることだ。AF(オートフォーカス)の精度がいくら上がろうが、手ブレを防ぐことなどできない。最近の機種では手ブレ防止機能付きのものもでてきたけれども、残念ながら信用に値しないので大きな期待をしてはいけない。
「なんぼかマシかなー」くらいである。
撮影モードは、シャッタースピード優先のAEにする。で、500分の1秒以下にセットする。
これだけであなたの写真は徹底的に変わってしまうのである。
多くの機種で、「S」というモードがそれだ。






写真がシャープに写らない、どうもピントが甘いと感じるのは、じつはピンボケではなくて、ブレていることが多い。
フィルムのときのように、サービスサイズプリントではわからないけれど、パソコンのモニターで大写しにしてみたり、テレビにつないで見たり、A4サイズに自分で手軽にプリントできたりするようになって、このブレがクローズアップされるようになった。

で、メーカーも何とか次々に物を売りつけようとするので、手ブレ防止機能をくっつける。
それ自体は確かにいくらかの効果はある。でもね。ブレるのは手だけじゃなくて、被写体もブレるんだ。動いている被写体をスローシャッターで写すと前回のようにブレて写る。
大きなブレであれば気がつくけれど、小さなブレの場合、ピントが甘く見えるのだ。

高速シャッターを切ると、手ブレも被写体ブレも防ぐことができるのだ。
雪が積もって、光がふんだんにあるときには、大いに高速シャッターを切ろう。

取材協力:北海道虻田町立洞爺湖温泉小学校 伊藤奈美先生

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