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第12回 二十大根の生育を撮る

 写真のもっとも重要な特性は、「客観的に記録できる」ということだろう。客観的というのは、ありのままにということである。
 ところが、実際に目にする多くの写真は物事をきちんとわかりやすく記録されていないことが多い。今回はそこを解説する。

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コツ1 初めて見る人の気持ちになる

下の3つの写真をご覧いただきたい。二十日大根(ラディッシュ)の種まきを説明した写真だ。ここまで分解して解説しないと、種まきという作業は伝えられない。もちろん、写真をたくさん使えばいいというものではない。その「物」とか「作業(事柄)」を初めて見る人の立場にたって写真を撮ろう。そうすると、きちんとした記録写真が撮れる。


なにに(どこに)、どんなものをまいたのかがきちんと伝わらなくてはいけない。この場合、木製プランターに培養土を用意して、種を写しこんだ。さあ種まきですよという感じがでてるでしょ?

次の工程。手のひらに種を少量とる。とにかく全部の工程を記録する。袋を破るところがあってもいい。

いよいよ種を土に落とすというところ。このあとの作業、たとえば、水やりなども同じ要領で撮影しておくこと。

コツ2 正面からマクロ撮影モードで

うまい写真というのは、カッコいい写真じゃなくて、意味の伝わる写真のことである。コツは、正面に回って、しっかり作業を観察すること。で、どうやればちゃんと伝わるのかなあと、いつも考えること。考えているうちにそれが習慣になる。
なお、タネや双葉など、小さな被写体を写すときは、可能な限り近づけるよう、デジカメの設定をチューリップマーク(近接撮影モード、マクロ撮影モードとも)にして撮影するとよい。


正面に回って、どうすれば意味が伝わるかを考える。デジカメの設定はチューリップマーク(近接撮影モード)に。腹が出っ張ってくるとこの姿勢がかなりきつくなるのだ。


正面からマクロ撮影した写真。

コツ3 3〜7日ごとに定点観測

学術的な報告書とかレポートではないにしても、種をまいてから発芽してそれがどのように成長していくのかを、成長のステージごとに記録しよう。
作物の種類にもよるが、3〜7日に1回程度の記録は必要。二十日大根の場合およそ35日から40日で収穫となるので、3日に1回撮ると、12枚から15枚程度の成長過程の写真となるはず。
さらに、撮影する場所と撮影する個体を決めて定点観測するとよい。とくに生育過程を記録するときに、特定の個体を決まったアングルで撮影しないと、比較対照できないことになる。


同じ被写体を同じところから、一定の時間ごとに撮影していく、定点観察が基本。

毎回違うところを撮影したとすると、記録としての価値がないばかりか、何を写したのかわからなくなるから注意。

写す時刻もそろえよう。たとえば、3時間目と4時間目の間とかいうふうに撮影時刻を決める。こうすると、同じような光線状態で撮影することができて見た目が揃う。見た目を揃えることが、写真をうまく見せるコツでもある。

コツ4 ある程度生育したら縦画面で

作物がある程度大きくなってきたら、画面を縦画面に切り替えよう。
横画面で、縦に長いものを写すと余分なものまでたくさん写りこむことになって、何を写しているのかわかりにくくなる。
じゃあ、余分なところを画像処理で切っちゃえばいいじゃん(トリミングする)という向きもある。しかし、これはWEBで使うだけならかまわないけれど、プリントするときにはよろしくないのだ。
理由は、はっきりくっきりきれいに写すためだ。
最近のコンパクトタイプのデジカメは500万画素とか600万画素がふつう。ところが、たとえばトリミングして半分削ったとすると、その画像は250万画素とか300万画素で撮影したのと同じクオリティになってしまう。これではせっかくのデジカメの性能が充分生かされない。やむを得ずトリミングする場合でも、最小限度にとどめるべきだと覚えていただきたい。


縦画面を使うと、奥行きが表現される。もちろん、ピントは定点観察中の株に合わせる。

種まきから35日目。ひょっこり肩を出した赤い二十日大根に、ちょうど光が当たっている。

にょきにょき太って、収穫間近。
収穫作業も、手元をしっかりと撮影する。もちろん、この場合も、人の手ではなく、収穫されようとする二十日大根にピントをあわせる。

イメージ写真も撮っておこう。逆光撮影で、葉っぱが光っていて適度に陰影がついていてカッコいいでしょ? こういうのをトップにドンとのっけると、インパクトのある生育記録となる。
なお、水やりや、追肥、日当たりのよいところに移動するなど、日常の作業も忘れずに記録しよう。子どもたちのいきいきした作業のようすがあると、生きた観察記録となるだろう。まったくの他人が見ても、おもしろいかどうかが優れた記録か否かの違いだ。

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