「宮本常一とあるいた昭和の日本(全25巻)」 全25巻 揃価73,500円 予約フォームへ

風景のなかに刻まれた風土、
歴史をよみ解き、
そこに暮らしてきた人びとの
知恵と意志を発見する

民俗学者の宮本常一が主宰した近畿日本ツーリスト株式会社・日本観光文化研究所が昭和42年から昭和63年まで発刊した、月刊旅雑誌「あるく みる きく」を地域別、テーマ別に再編集。

本双書の特徴

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日本観光文化研究所で若い所員に講義する宮本常一(昭和48年7月)

(1)若き学徒とともに、宮本常一や民俗学者(小野重朗、瀬川清子、都丸十九一他)、作家・社会活動家(更科源蔵、萱野茂 他)の紀行や論考も多数収録。

(2)平易な文章に当時撮影したカラー、モノクロ写真と地図が多数添えられ、居ながらにして昭和紀行の旅ができる。

(3)取材地が近代化の波が遅い山村や島々が多く、美しい日本の原風景や地域自然と共存して暮らした人びとの心象の貴重な記録となっている。

(4)地域を捉える手法や過程がわかるように書かれているので、宮本民俗学の実践指南書となっている。

(5)実際に歩いて捉えた、風景や暮らし中にある地域の風土歴史、文化が記述されており、内発的・個性的な地域再生を考える貴重な資料となっている。

発刊にあたって

田村善次郎(武蔵野美術大学名誉教授)

 「自然はさびしい。しかし人の手が加わるとあたたかくなる。そのあたたかなものを求めてあるいてみよう…」

 昭和40〜60年代、経世済民の民俗学者・宮本常一先生のこの言葉に率いられ、日本観光文化研究所に集った若い民俗学徒や地方同人は、日本の津々浦々をあるき切磋琢磨し、先生の監修の下、月刊雑誌「あるく みる きく」を発刊し続けました。あらためて今、読み返してみると、何かを見出し、何かを作り出していこうとする若々しい気力が溢れ、みなぎっています。この雑誌はたんなる旅の雑誌ではなく、一種警世の書であったと思います。

 「あるく みる きく」の中に流れている一貫した姿勢、視点は、混迷の度をますます深めつつあるかにみえる現在に、これからの進むべき方向をしめす何かを含んでいると思います。また、今年は先生の没後30年目にあたります。私どもがこの双書を企画し発刊する所以であります。

宮本常一の旅学 自分の目で内側からみることが大切

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出会った農民の持っていた草刈鎌に見入る宮本常一(福島県下郷町大内 昭和44年8月)

 旅というものは本来、何のためにするのかということになりますと、自分の目で確かめてみる、そういうことのために、旅があるはずなのです。

 大事なことは、一人一人がしっかりとした目を持ってものを見る、自分の目を通して物を見るということを私は旅をして考えさせられてきました。本物をみるということは「あるく」以外に実は方法のないものなのです。自分自身が体験を持たない限り、その本物はわかりようがないのです。

 そして「みる」ことの中に発見があるのです。物をみるということは、外側からみるだけでなく、まず内側からみることが大事なことになってきます。われわれは目を開いてみておりますけれども、その開いてみておる中に、実はわかっていないことがずいぶんたくさんあるのです。(中略)真剣に物をみていけばいくほど、わからないことが増えてくるのですが、わかったと思い込むのではなくて、わからないことを確かめて、明らかにしていく、それが大切なことです。

 旅とはそういう場だと思います。

(宮本常一著作集31「旅にまなぶ」未来社刊より)

宮本常一(1907〜1981)

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カメラを下げ旅に出かける宮本常一(昭和50年7月)

山口県大島郡周防大島に生まれ、昭和14年に渋沢敬三の主宰するアチック・ミュージアムに入り、戦前、戦後の日本の農山漁村を民衆のまなざしで訪ね歩き、膨大な記録、著書にまとめるとともに、地域の未来を拓くため住民たちと膝を交えて語りあい、その振興策を説いた。1961年、近畿日本ツーリスト株式会社・日本観光文化研究所を主宰し、雑誌「あるく みる きく」を創刊して、多くの学徒を育てた。

監修者 略歴

田村善次郎(たむら ぜんじろう)

1934年、福岡県生まれ。1959年東京農業大学大学院農学研究科農業経済学専攻修士課程修了。

1980年武蔵野美術大学造形学部教授。武蔵野美術大学名誉教授。文化人類学・民俗学。

大学院時代より宮本常一氏の薫陶を受け、国内、海外さまざまな民俗調査に従事。

『宮本常一著作集』(未来社)の編集、宮本常一没後、近畿日本ツーリスト・観光文化研究所副所長に従事。

著書に『ネパール周遊紀行』(武蔵野美術大学出版局)、『棚田の謎』(農文協)ほか。

宮本千晴(みやもと ちはる)

1937年、宮本常一の長男として周防大島に生まれる。東京都立大学社会人類学科大学院卒。

1966年より宮本常一主宰の近畿日本ツーリスト・日本観光文化研究所の事務局長兼月間誌「あるく みる きく」編集長として、所員の育成・指導に従事。

1980年代よりマングローブの専門家としてJICAや(株)「砂漠に緑を」などの調査・植林活動を指導。現在、NPO法人マングローブ植林行動計画運営委員。

監修に『学問と情熱 第15巻 宮本常一』(紀伊国屋書店ビデオ評伝シリーズ)ほか。

巻構成

全25巻セット
奄美・沖縄
九州(1)
九州(2)
中国・四国(1)
中国・四国(2)
中国・四国(3)
近畿(1)
近畿(2)
東海・北陸(1)
東海・北陸(2)
関東・甲信越(1)
関東・甲信越(2)
関東・甲信越(3)
東北(1)
東北(2)
東北(3)
北海道(1)
北海道(2)
焼き物と竹細工
祭と芸能
織物と染物
けもの風土記
漆・柿渋と木工
祈りの旅
青春彷徨