現代農業2001年8月増刊
『孫よ!』 
土と遊べ ふるさとに学べ

【編集後記から】

 1年前、『日本的ガーデニングのすすめ』(2000年8月増刊)の編集を終えたとき、私にはひとつの疑問が残った。牧場の一角にバラ園をつくり始めた長野の小沢禎一郎さん、やはり牧場に木を植えている北海道の三友盛行さんらの記事を読んでいて、少なくとも目の前の経営に直接プラスになることではないとわかっていながら、それらのことを始めたくなる心の動きとはどういうものなのかということである。その方々にひとつ共通しているのは、年齢が60歳前後ということ。会社でいえば定年だから「専業農家の定年帰農」とでもいうようなことかと考えたりしていた。

 「なるほど、そういうことかもしれない」と思ったのは、夏の休暇で九州の実家に帰省した際、たまたま「孫とばあちゃんの店」に出くわしたときのことである。店は旧盆の帰省客に持たせる手土産を買いに来た客で大にぎわいで、そのときは命名の由来など聞くことはできなかったが、「孫とばあちゃん」という組み合わせに『ガーデニング』以来の疑問が少し解けるような気がした。

 60歳前後というのは、本号の吉田昭彦氏の記事にもあるように、「初孫適齢期」である。帰京して、小沢さんや三友さんに電話をかけてみた。小沢さんのバラ園も三友さんの植林も、「孫の誕生」が大きくかかわっていることがわかった。

 その後「翁童論」の鎌田東二氏にお会いする機会があり、「人間の全体像をトータルに考え、とらえるためには、人間的生の初めとしての子ども(童)と生の終わりとしての老人(翁)の両方を視野に入れなければならない」というその主張を知った。

 本号はある意味で「社会的三世代同居のすすめ」である。子どもとお年寄りは本来同じ居場所にいて、人間として生きるべき知恵と根源的な力は親から子ではなく、祖父母から孫へ受け継がれてきた。また祖父母は、孫からなにものにも変えがたいものを得ていた。しかし、核家族の崩壊すら指摘される今、大家族制度の再生を叫んでも意味はない。しからば……というのが本号である。総合学習も教育グリーンツーリズムも、お年寄りの出番だ(甲斐)



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