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農文協増刊現代農業>自然とともに平和をつくる_編集後記

自然とともに平和をつくる

現代農業2002年2月増刊

【編集後記】

『現代農業』2月号主張「自然とともに平和をつくる』
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 私の好きな地元学の言葉に「異なる時代の恵みを受けて今がある」というのがある。

「今は情報化社会と言われるが、工業化社会の恩恵を受けて暮らしていることは自明のことである。しかしながら、江戸時代の恩恵や、はるか弥生時代、縄文時代、石器時代の恩恵も受けて暮らしていることには気がつきにくいものだ。祖先たちが築き上げてきた文化や暮らしの延長線上にあるのが今の私たちの暮らしだ。『異なる時代の恵みを受けて今がある』のであって、時代は切れてつながるものではない」(吉本哲郎さん「風と土の地元学」(2001年5月増刊『地域から変わる日本』)

 私たちの暮らしや文化は、どんな恵みを、100年、1000年、1万年後の人たちに残せるのだろう。地球温暖化などはるか先の話と思っていたら、すでにアフガニスタンをはじめ中央アジアの人びとを苦しめる現実となっている。大陸ごとのエネルギー消費を調べてみたら、アジアは世界の60%の人口で29%、北米大陸は5%で27%。そのちがいは「新大陸」には「異なる時代の恵み」がないからではないか。「異なる時代の恵み」とは、そこに暮らす人が自然に働きかけ、また働きかけられる関係の中で成り立ち、かたちづくられ、そして享受できるもの。つまり自然と一体となった自給の暮らしをめざさなければ、いつまでも石油依存の体質から抜けきれようがない。

 また、自然と一体となった暮らしとは、人間と自然の関係だけではない。人と人の関係の中にも「自然」はある。それは第一に親兄弟の家族、そして集落。そこにあるのは競争ではなく相互扶助。競争がすべて、金がすべての市場原理第一の資本主義なんて、たかだが200年そこそこの歴史しかない。

 石油がすべて、金がすべて、そして力がすべての建国200年と50年のまだ青少年のように若い国に、「異なる時代の恵みを受けて」暮らしから、地域から、自然とともに平和をつくることを伝えるのは無理なことだろうか?

(甲斐)

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