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青年帰農 若者たちの新しい生きかた

現代農業2002年8月増刊

【編集後記】

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 イギリスやフランスなど、ヨーロッパの先進諸国では、近年、大都市の人口がしだいに減少する一方で、長いあいだ減少をつづけていた農山村や小さな町の人口が大きな伸びを見せはじめ、「逆都市化」あるいは「田園革命」とも呼ばれる現象が起きているという。

 しかし、フランスの山村を実際に歩いた哲学者の内山節さんによると、人口増は事実だが、それが山村の共同体や文化の維持継承につながっているかというと、どうやらそうではないらしい。なぜなら、長いあいだつづいた人口減の時期に土地の集約化がすすんで農家数が激減し、農業以外の仕事に就く新住民の数と逆転したために、地域のもつ歴史的力の継承が不可能になっているからだという。

  「フランスでは、村で生まれた人が二割くらいで、八割くらいは村に無関係だった人たちが入ってきているということです。そうなると、村の歴史や伝統技術をふまえた地域づくりはできない。これが逆だったらば教わりながらできるんでしょうけれども、二割の側にいる一次産業の人たちが、村の中では特殊産業に従事している人のようになっているんです」

 日本では、農家は農業だけでは食べられなくなっても兼業の道を選び、地域に暮らしつづけた。内山さんが半定住する群馬県の上野村では、1500人の人口のうち都市出身者は100人。そこでは昨年四月から十二月まで、都市出身者が村の人に「教わりながら」九カ月の「山里文化祭」が開かれた(2001年5月増刊『地域から変わる日本』)。内山さんはフランスで、「それはじつにうらやましいことだ。それができる社会が本当のいい社会なんだ」と、言われたという。

 日本ではいま、稼ぎの手段ではなく、生き方のベースとして農業を選ぶ若者=「青年帰農者」という新しい兼業農家が誕生している。「後継者不足だから」という視点ではなく、その動きの底流にあるものを見きわめ、生かしたい。(甲斐良治)

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