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土建の帰農 公共事業から農業・環境・福祉へ

現代農業2004年2月増刊

【編集後記】

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 「これらの本を読んでいると、ほのぼのした気持ちになってくる。私たちの暮らしも、この国も、まだまだ捨てたものじゃない」――1998年に『定年帰農』『田園就職』『田園住宅』『帰農時代』の「帰農シリーズ」を発行したとき、北海道の酪農家の女性から、こんなお便りをいただいたことがあった。それ以来、本誌の原稿に目を通すとき、毎号「まだまだ捨てたものじゃない」の思いを新たにしていたのだが、今回はまたその思いがひとしおだった。

 冒頭のインタビューで米田雅子氏が語っているように、建設投資3割減、就業者1割減という現実はきびしいものであろう。だが、同じ地域に生きる仲間なのだからと、なんとか1割減でくいとめている建設会社もおそらく多いのだろうと、本誌の原稿全体を読んで感じた。米田氏はまた「これまでが異常に公共事業が大きな時代であって、これからはむしろ普通の産業に戻ると考えたほうがよい」と語っている。

 40ページからの記事では福島県只見町の吉津耕一氏が昭和50年代からの「土建業のひとり歩き」の経緯にふれている。「ひとり歩き」とは、むらの暮らしの横つながりから生まれてくる仕事ではなく、「中央との太いパイプ」によってもち込まれる、自己目的化した仕事のことではなかったか。だが「ひとり歩き」は建設業だけではなく、農業もまた「ひとり歩き」ではなかっただろうか。「消費拡大」などという言葉は、横つながりのむらの仲間には使えない。農業もまた、自己目的化した生産のはけ口を遠くの都市に求めてこなかったか。

 農業の場合は、20ページからの記事で結城登美雄氏が指摘しているように、女性・高齢者による直売所から横つながりのむらうち流通の回復がはじまった。建設業もまた「ひとり歩き」をやめ、むらの暮らしとのつながりのなかに新しい仕事を見出しはじめた。「帰農」とは、そのつながりのなかに未来を見出すことだと思いたい。(甲斐良治)

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