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脱グローバリゼーション 「手づくり自治」で地域再生

現代農業2007年11月増刊

【編集後記】

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 156ページからの記事で小田切徳美先生が第二次コミュニティブームの第三の背景として挙げている「コミュニティづくりは幸福づくり。手づくりで自らの幸せを、未来をつかみ取っていくことであることに、みんなが気づき始めた」に、深く共感する。

 共感の根拠は、私のふるさとにもある。宮崎県高千穂町五ヶ村地区で「ふるさと創生資金」による温泉開発が行なわれたのは1994年。当初の予定では町の中心部にある大規模施設に温泉を引くだけで地元には何の恩恵もない計画だった。だが地区の人びとは「源泉のあるこの地域にも浴場を」と町にくり返し働きかけ、小さな共同浴場の建設を約束させた。だがその浴場には食事を提供する施設も宿泊施設もない。そこで当時平均年齢60歳の9戸の農家が村おこしグループを結成し、資金を出し合い、補助金、借入金も合わせた計1400万円で、簡易食堂を建設した。

 その5年後には、その簡易食堂の利益や新たな出資金、補助金、借入金の合計1800万円で、隣町から築130年の古民家を移築し、常設神楽宿を兼ねた農家民宿を建てた。その家は、道路の拡幅工事で取り壊されようとしていた農村歌舞伎の師匠宅で、大工や造園業との兼業が多いメンバーは、自らジャッキやバールを使ってていねいに解体し、移築した。多くのメンバーが兼業先を定年退職して始めたこの活動は、昨年1月、「地域づくり総務大臣表彰」を受けた。ほとんどが70歳を超えたメンバーは、祝いの席で、「やってきてよかったなあ」「よかったなあ」と重ねる祝杯に顔を赤らめ、肩を叩き合っていた。

 グループの代表は、「始めた当初は、多額の借金を心配していましたが、今になってみると、出資は自分たちの『生きがい保険』だったような気がしています。孫たちにも生きる喜び、いのちの尊さを教え、田舎の人情、伝統神楽など、受け継いでくれる若者が一人でも多く育ってくれることを願っております」と、あいさつし、私は涙が出るほど感動した。ただし、表彰状の大臣名「竹中平蔵」には、いささか複雑な思いがした。

(甲斐良治)

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