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食の自治から暮らしの自治へ 他人事から自分事へ

現代農業2008年2月増刊

【編集後記】

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昨年暮れ、宮崎県高千穂町で開催された「高千穂のこびる大集合」の翌日、結城登美雄さん、森千鶴子さんらと同町尾谷集落の例祭を、その始まりの「神迎え」の式から見学することができた。

高千穂神社の後藤俊彦宮司を先頭に、十数人の氏子と小高い山を登ると戸数47戸の集落を見守るように氏神様の赤石神社があり、境内には結岸相撲の土俵もあった。式のあとの短いあいさつで、宮司は、日本人にとっては自然もまた神であること、人間もまた自然の一部であることを述べ、そしてこう結んだ。

「よく都市と地方、農村の格差と言われますけれども、たしかに経済的に見れば、大きな格差があるかもしれません。しかし私たちにある、めぐまれた自然や、あるいは地域の人たちで互いに支え合い、助け合う、そういう地域力とでも言うべきものを考えれば、違う面では、私たちはめぐまれたものを、まだまだたくさんもっているわけで、そういうものを大切にしながら生きていくということも大切なのではないかという気がします。皆様方の先人も、赤石神社を誇りとして、心の支えとして、すばらしい地域を昔から力を合わせてつくってこられました。その先人の知恵を大切に、子孫のために残しておかれますよう、さらに地域の繁栄を祈念いたしまして、例祭・神迎えの式を終わらせていただきます。おめでとうございました」

 この言葉をかみしめながら山を降り、神楽が奉納される公民館へ行くと、庭に記念碑があり、こう刻まれていた。

「慈しみ育てあげたる 自助の村 今咲きいでし花をたたえん」

 公民館の建設用材は、明治末期に植林された共有林から無料提供されたもので、その原資は「当時の青少年をもって組織せられてあった尾谷自助会が、夜間あるいは休日を利用し縄ない、茅おろし、田開、薪伐り、薪の運搬等により協力一致、零細なる労銀を貯蓄し」たものであると昭和24年に公民館から自助会に贈られた感謝状にあった。集落には青少年が集い学んだ「夜学堂」という屋号の家もあった。村には自助も共助もあった

(甲斐良治)

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