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農文協増刊現代農業>ギョーザ事件から何が見えたか_編集後記

ギョーザ事件から何が見えたか 食・労働・家族のいま

現代農業2008年5月増刊

【編集後記】

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 ギョーザ事件の直前に、熊本県菊池市のNPO法人きらり水源村で開催された「ふるさと食の樂校」ではさまざまな学び、気づき、出会いがあった。水源村加工部の手づくり味噌が1kg500円と聞き、「手づくりなのに」と思って「安くないですか?」と聞いたら、「県産大豆だから」と水源村加工部副部長の三木陽子さん。

 「普通、県産、国産ならば高い値段をつけるのではないですか」と聞くと、「自分でつくっているものならともかく、県産というだけでは、だれがどんなつくり方をしているかわからないからこの値段しかつけられません」との答えが返ってきた。その夜、鹿児島県南さつま市で海水から塩をつくっている松山進さん・智恵さんと会話していた三木さんが、梅干に使いたいからと、いきなり夫妻のつくる「笠沙のしおっ」を送ってほしいと言う。普通の塩の10倍はする値段なので、今度は「高くないですか?」と聞いたら「いいんです」との答え。なぜかと聞いたら「梅干の値段を上げるんです」。梅干のウメは自分でつくっているし、この夫妻がつくっている塩を使ったからと説明すれば、梅干のお客はわかってくれるというのである。

 創業300年の福岡県・庄分酢・山田良太さんの「仕込とは、とどのつまり菌の継続です。われわれはそのおこぼれをいただいて生きている」という言葉や、創業180年、熊本県・松合食品・橋本順子さんの「孫子の寝顔は見なくとも、麹の寝顔は見に行きます」という言葉を聞くことができたのもこの「食の樂校」だった。どちらの蔵も株式会社のかたちはとっているが、「うちは家業です」とのことだった。

 その後野村進氏の老舗・家業についての著書『千年、働いてきました』を知った。老舗・家業も日本の村も、近代国民国家、国民経済以前からの存在である。食や労働など、さまざまに行きづまる「近代」を超えるには、家業や村に学び直すことが必要ではないかと思っていたら、ドイツのハンス・イムラー氏からも「新しい家族経営体」に期待しているという声が届いた

(甲斐良治)

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